はじめての給与計算ソフト導入 押さえておくべきポイントは?
社会保険ワンポイントコラム
はじめに
今日はソリマチ給料王の認定インストラクター「SOI(Sorimachi Official Instructor)」である私が、はじめて自社で給与計算を行うお客様に対し日頃行っているサポートの流れに沿って、給与計算ソフト導入の際の押さえておくべきポイントについてご説明します。
給与計算ってどうやってやるの?
給与計算のやり方にもいろいろあります。やり方は大きく以下の3つです。
② Excelで行う。
③ 給与計算ソフトを導入する。
① 手書きで行う
これが最も安価でお金をかけない方法です。それこそ100円ショップで売っているような複写式の給与明細書に手書きで記入する方法です。パソコンの知識も必要ありません。従業員が時給のアルバイト数名程度しかいないようなケースではこのやり方も有効です。給与から天引きするのは所得税と、あっても雇用保険料(週20時間以上の勤務の場合)ぐらいですので、給与計算も比較的シンプルです。
ただし、社会保険に入り始めると途端に給与計算が複雑化します。個人事業でアルバイト従業員が1名~4名程度の小規模事業者向きです。
② Excelで行う
Excelで給与計算を行っているケースもよく見かけます。ある程度パソコンを触れる方であれば、これも安価で始められる方法の一つです。ただし、これにはいくつか注意点があります。まず、Excelの計算式の仕組みを最低限理解している必要があります。また、雇用保険や社会保険の保険料率は毎年変更がありますので、変更の際には計算式に反映させる必要があります。給与計算の仕組みをある程度理解できていて、パソコンに不慣れでない人向きと言えるでしょう。
あと、年末調整や源泉徴収票の発行には対応していませんので、そこだけを税理士に依頼されているケースも見かけます。専門家のサポートを受けられる環境下にあるのであれば、Excelも有効な手段のひとつです。
③ 給与計算ソフトを導入する
パソコンに不慣れな方にとっては、これが一番ハードルが高いかもしれません。費用もかかります。パソコン本体に加え、ソリマチ給料王のパッケージソフトで税込44,000円です。金額以上のメリットを見出せるかどうかがポイントとなります。給与計算ソフトを導入する最大のメリットは以下の3つです。
② 時間、労力の大幅削減。
③ 年末調整や源泉徴収票の発行にデータをそのまま使える。
① 単純な計算ミスを減らせる
給与計算ミスというのは大抵ヒューマンエラーから起こります。その点では機械にやらせた方が確実、という考えです。社会保険の天引き額を長らく間違えていた、というケースもよく耳にしますが、大きな給与計算ミスをおかすと簡単に万単位の金額に膨らみ、ソフト代どころでは済まない額に及ぶことが多々あります。その点では安心料も含めてのソフト代と言えます。ただし、給与計算ソフトにも大きな落とし穴があります。
単純計算は得意ですが、そもそも最初の設定が間違っていた場合には間違った設定のまま計算されてしまいます。たとえ給与計算ソフトを導入した場合であっても、決して過信せず、最後はアナログ的に紙で出力してチェックしてミスに気付ける視点を持つことは大変重要です。
② 時間、労力の大幅削減
これが最大のメリットと言えるかもしれません。ちゃんと作りこまれた給与計算ソフトは、給与計算にかける時間的労力や心理的負担を大幅に削減します。残業代や交通費の計算、食事代の天引きなど、複雑な計算にもほぼほぼ対応できます。最初の設定だけはハードルがありますが、サポートデスクや、専門家のサポートを受けながらそこさえ乗り越えられれば、あとはパソコンが多少不慣れな方であっても、基本は毎月決まった操作になりますので、十分に利便性を感じられると思います。
③ 年末調整や源泉徴収票の発行にデータをそのまま使える
給与計算の延長線上に“年末調整”という作業があります。毎年1月から12月までの給与の総額を取りまとめて、所得税額の最終確定をする作業です。1年間の給与総額、所得税額をまとめたものが「源泉徴収票」です。退職した従業員にも、源泉徴収票を交付しなければなりません。この作業は、手書きやExcelで給与計算を行っている場合には、非常に手間がかかります。年末調整の仕組みを理解していないとなかなか困難です。その点では、給与計算ソフトを導入することで、簡単に源泉徴収票を発行することができます。税理士に頼らず自社で年末調整までやりたい場合には、給与計算ソフトの導入は必須と言えます。
給与計算ソフトの導入を判断する際のポイント
以上の点を踏まえ、はじめて給与計算ソフトを導入する際の判断のポイントは以下のとおりです。
- 導入するなら12月から1月にかけての年変わりの節目がチャンス。翌年の年末調整にデータがそのまま使える。
- ある程度人数規模が増える見込みがあるなら、最初から導入してしまった方が楽。従業員数1~2名からでも決して早すぎることはない。後から移行するのはなかなか大変。
- サポートデスクの体制が整っているメーカーを選ぶべし。(ソリマチさんのサポート体制は大変グッドです!)
執筆後記
もともとこの記事は“はじめての給与計算の押さえどころ”について書く予定でした。ところが、給与計算業務にうまく向き合う為にはまずは道具選びから!と思い書き始めたところ、それだけで結構なボリュームになってしまいました。
一口に給与計算の押さえどころと言っても給与計算は非常に複雑で、所得税の甲欄・乙欄の判定、扶養の判定、社会保険料の設定と天引きのタイミング、年齢の節目による社会保険の変更(介護保険あり40歳、介護保険なし65歳、厚生年金なし70歳、健康保険なし75歳)などなど、知らなければならない知識がたくさんあります。到底一度に覚えられる量ではありません。しかし、知識はやりながら後からついてくるものでもあります。
これはパソコンについても同様です。給与計算を覚えるついでにパソコンの知識まで身に着けることができてしまうかも?しれません。誰しもはじめてのものには一定のハードルがありますが、それも最初だけです。その為のサポート役として、メーカーのサポートデスクや、私たち専門家がいます。どうか気負わず、新しいものにもチャレンジし、有意義な学びの機会にしていただけたらと思います。
ABOUT執筆者紹介
中山卓
社会保険労務士 キャリアコンサルタント 社会福祉士 保育士
社会保険労務士法人オフィスALPACA 代表社員
株式会社エンパワーメント・ジャパン 代表取締役
一般社団法人さくらキャンプ 代表理事
静岡県三島市出身。静岡県東部の会計事務所にて、主に福祉関係の顧問先を数多く担当。2013年より障害福祉事業に特化した社会保険労務士事務所として独立開業し、北は北海道、西は九州まで、オンラインと対面によるサポート体制により、全国の顧問先約200社超。2017年より放課後等デイサービス『さくらキャンプ』を立ち上げ、発達に課題を抱える児童の通所支援事業にも携わる。また、社会保険労務士による日本初の法律系ロックバンドWORKERS!のリーダーとしても活動中。「ロックで伝える社会保険」をテーマに社会保険、労働法をわかりやすく伝えるための活動を行っている。
社労士バンドWORKERS!と弁護士倉重公太朗氏と法政大学キャリアデザイン学部松浦ゼミの学生たちとのコラボ企画により「キャリア自律の歌 制作プロジェクト」が目下進行中。現在、法政大学大学院キャリアデザイン学研究科在学中。
社会保険労務士法人オフィスALPACA
株式会社エンパワーメント・ジャパン
一般社団法人さくらキャンプ
社労士バンドWORKERS! オフィシャルWEBサイト
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