会社が気をつけるべきハラスメント
社会保険ワンポイントコラム
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最近、TVや週刊誌でパワーハラスメント(以下、パワハラ)に当たると思われる事案について、実際に録音された音声が繰り返し流されています。パワハラはパワハラをしている方にその意識や悪気がなかったとしても、受けた側の心(時には身体も)の傷は大きく、就業環境の悪化に耐え切れず、退職に追い込まれることさえあります。そこで、今回はパワハラに限らず、会社担当者が気を付けるべきハラスメントについてまとめてみました。
ハラスメント1 セクシャルハラスメント(以下、セクハラ)
労働者の意に反する「性的な言動」により、「労働条件についての不利益や就業環境が害されること」と厚生労働省で定義されており、一般的に男性から女性に対する言動を指しますが、女性から男性に対する言動や同性に対するものも該当する場合があります。このセクハラは男女雇用機会均等法(以下、均等法とする)により、事業者は相談窓口を整備するなど防止措置をとることが義務付けられています。よって相談窓口に相談があった際に調査もせずに「あの人はまじめな人だからセクハラなんてするはずがない(あなたの思い込み)」などという偏った姿勢を会社が取ることは許されないばかりか、紛争に発展する危険があります。
ハラスメント2 パワーハラスメント(以下、パワハラ)
パワハラは同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為と厚生労働省で定義されています。ポイントはどこまでが「業務の適正な範囲であるか」という点です。仕事熱心なあまり指導の度合いが過ぎ、「大声で怒鳴る」「他の従業員や客先の面前で罵倒する」「過去に失敗したことを繰り返し攻める」等はパワハラと判断される可能性が高いです。上司は部下に対して業務上「必要な指導」はしなければなりませんので、部下にミスがあった場合でも一呼吸おいて冷静に穏やかな口調でピンポイントでの指導が望ましいでしょう。
ハラスメント3 マタニティ―ハラスメント等(以下、マタハラ)
今年の法改正で、職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントの防止措置が事業主に義務付けられました。たとえば、育児の場合は待機児童の問題で休業期間が労働者本人の意思に反して伸びてしまう場合があります。また、介護の場合は対象家族を従業員が面倒みる際に要介護者が1人とは限りません。介護休業を取得した従業員が別の家族を介護するために休業を申し出ることもあります。育児・介護休業を取得する方に、心無い発言をしないよう、会社側は必要なルール作りと従業員教育が重要です。
ハラスメント4 テクノロジーハラスメント(以下、テクハラ)
厚生労働省の定義はありませんが、パワハラの派生系とされています。「テクニカル・ハラスメント」とも呼ばれ、パソコンをはじめとするIT関連の機器操作に不慣れな人や知識が不足している人に対する嫌がらせの言動や不利益な取り扱いのことを指します。中高年の方は入社したころは職場にパソコンがなかった時代ですので、小学校からパソコン教育を受けてきた世代とは違いがあって当然。職場内での助け合いやスキルアップ研修等が必要な場合もあることでしょう。
ハラスメント5 スモークハラスメント(以下、スモハラ)
喫煙者が非喫煙者に対して喫煙を強制したり、受動喫煙をさせたりして迷惑をかけることをいいます。受動喫煙対策はすべての企業で努力義務となっており、喫煙場所の隔離や喫煙時間を制限させる等の対策をしましょう。
ハラスメント6 ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)
男らしさ・女らしさといった社会通念的な性差別のことで「(男または女は)こうあるべきだ」という思い込みによって差別をする言動のこととされています。性別に関する不快な言動は均等法上、セクハラとは区別されています。具体的には、「女子従業員だけに来客のお茶汲みや雑用をやらせる」「男子従業員だけに残業をさせる」といったことが該当するとされています
まとめ
上記の他にも学歴差別など職場でのハラスメントは多々あります。ハラスメントの種類や内容を知ることも大切ですが、「ハラスメントを職場から撲滅する」「ハラスメントを発生させないようにする」ために会社担当者の方は必要なルール作りや相談窓口の設置、内部・外部による研修、等を実施していただきたいと思います。対策の失敗や放置は、離職者の増加やモチベーションの低下(ひいては売上もマイナス)につながることもお忘れなく。平成29年7月1日から全国ハラスメント撲滅キャラバンが開始されており、全国の労働局で説明会が行われていますので、会社の担当者の方は参加しておきましょう。