健康経営とは?取り組みの必要性・メリット・注意点・取り組み方を解説
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従業員が自分の体調を考えずにがむしゃらに働く時代は終わりを迎えつつあります。経済産業省や厚生労働省は、従業員の健康管理を経営的な視点で考えて戦略的に実践する「健康経営」を推進しています。今回は、健康経営とは何か、必要性やメリット、注意点、取り組み方について詳しく解説します。
健康経営とは
健康経営とは、従業員の健康管理を経営に結びつけて、戦略的に実践することです。単に、従業員の健康状態を良好に保つだけでは、企業は大きなメリットを得ることができません。経営にどのように結びつけるのかを理解して、正しく実践する必要があります。
従業員の健康管理、健康増進に向けて投資し、生産性の向上やモチベーションアップ、離職率の低下、社会的信頼性の向上など、さまざまなメリットを得てWin-Winな関係を目指すことがポイントです。
健康経営が注目されている背景
健康経営が注目されている背景は、次の3つです。
- 少子高齢化により1人あたりの生産性の向上が急務とされている
- 長時間労働の常態化が従業員の健康を阻害することがわかっている
- コロナ禍におけるテレワークの増加の影響で従業員の健康管理の必要性が高まっている
健康経営を実施している企業がわかる仕組みがある
政府は、健康経営の推進の一環として、「健康経営に取り組む企業の見える化」を行っています。「健康経営銘柄」と「健康経営優良法人」を認定するようになったことで、健康経営に取り込んでいるかどうかを一目でわかるようになりました。
健康経営銘柄……従業員の健康管理を経営の視点で捉えて戦略的に取り組む企業
健康経営優良法人……特に優良な健康経営を実施している企業
健康経営に取り組む企業は、社会的信頼性が高いうえに優秀な人材から注目を集めやすいため、結果的に売上アップや経営の安定性の向上、人材不足の解消などの効果を得られる可能性があります。
健康経営を行わないことのリスク
企業は、労働基準法で定められる「安全配慮義務」を行使する必要があります。安全配慮義務とは、従業員が心身の安全を確保しつつ働けるように、配慮・環境整備をすることを企業に義務付けるものです。
「精神状態が悪い従業員に適切な配慮を行わなかったことで精神疾患を発症した」、「体調が悪い従業員を無理やり働かせた」といった場合は、安全配慮義務違反に問われる恐れがあります。
健康経営を推進する場合、これらのトラブルを起こさないことが大前提です。一方、健康経営を実施しない場合は、安全配慮が行き届かずに従業員の心身に重大な問題を引き起こすリスクが高いと言えるでしょう。
健康経営ができていない企業の特徴
健康経営ができていない企業には、次のような傾向がみられます。
・人材不足
→従業員のモチベーションが低くて生産性が低い、離職率が高い
・労働時間が長い、休日出勤の常態化している
→生産性が低い、モチベーションが低い、離職率が高い
・体調不良による遅刻や欠勤が多い
→他の従業員への負担が増加して負の連鎖が起きる
これらのサインが見られた際は、従業員の健康管理について見直すことが大切です。
健康経営に取り組むメリット
続いて、健康経営に取り組むことの企業側のメリットについて詳しく解説します。
人材のポテンシャルを引き出せる
自身の能力を発揮するには、心身の状態が良好でなければなりません。優秀な人材を雇用しても、長時間労働が常態化していることでポテンシャルを発揮できなくなれば人件費に無駄が出てしまいます。
ミスの減少
企業が売上を増やすには、成功を増やすとともにミスを減らす必要があります。成功が増えても、ミスも増えてしまえば利益率がなかなか上がりません。従業員の健康状態が良好であれば、ミスが減ることが期待できます。
離職率の低下
健康経営の取り組み方の1つに「労働環境・労働条件の改善」があります。働く環境が良くなり給与も上がれば、従業員のモチベーションが上がるでしょう。その結果、離職率が低下して採用や教育にかかるコストを削減できる可能性があります。
生産性の向上
従業員の心身の健康状態が良くなると、実力を発揮できるようになります。また、成長性も高まることで、将来的により優秀な人材へと成長しやすくなるでしょう。その結果、生産性が高い状況が長く続くことが期待できます。
社会的信頼性の向上
健康経営に取り組む企業は社会的信頼性が向上します。日本は長時間労働が常態化しているうえに、「ブラック企業」という言葉も定着しているため、労働環境に対してネガティブなイメージを持つ方が少なくありません。
そのような日本という国で健康経営に取り組むことで、希有な存在として注目されるでしょう。企業イメージが向上することで売上アップや官公庁の案件獲得などにつながりやすくなる可能性があります。
健康経営の取り組み方
健康経営を始めようと考えているものの、何から始めればよいかわからず一歩を踏み出せずにいる経営者は少なくありません。そこで、健康経営の取り組み方について複数の項目に分けて紹介します。
法令遵守・コンプライアンスの整備
法令を守らない企業、コンプライアンス違反をする企業は、従業員に大きな負担をかけることが多いため、法令遵守およびコンプライアンスの整備は必須です。また、最悪の場合は摘発されることもあるため、真っ先に見直すべき事項と言えるでしょう。
組織体制の整備
健康経営を掲げても、各部門のリーダーがメンバーを牽引しなければ、全ての従業員の健康管理はできません。各部門のリーダーと経営層が面談し、健康経営の必要性やメリットなどについて十分に説明する必要があります。また、健康経営の専門部門を設置し、常に状況を把握する体制の構築が必要です。
制度・施策を計画して実行する
従業員の健康維持・増進を促すための制度や施策を計画し、適切に実行します。まずは、法令で義務付けられている健康診断を全ての従業員が行っているか確認が必要です。そのほか、企業のオリジナルの取り組みとして、次のような制度・施策を計画し実行しましょう。
- 独自の有給休暇
- 長期休暇制度
- 社員食堂において栄養バランスに優れた食事の提供
- 外部講師によるメンタル関連のセミナー開催
- スポーツ大会の実施
- 健康関連施設の利用割引クーポンの配布
ただし、企業によって適した制度・施策は異なります。例えば、スポーツ大会を開催するにしても、従業員の体力や運動習慣の有無を考慮して種目を選ぶ必要があります。どのような制度・施策が効果的か、経営層や各部門のリーダーなどと話し合って検討しましょう。
健康経営の効果を定期的に評価する
これまで、「長時間労働が利益を生み出す」と考えていた経営者が健康経営に乗り出した場合、本当に効果が出ているのかどうか疑念を抱くことがあります。健康経営によって企業側に恩恵がもたらされているのかどうかを確認するために、従業員の生産性やモチベーションなどを定期的に評価しましょう。
それほど効果が出ていない場合は、次のような原因が考えられます。
- 現場の従業員に浸透していない
- 制度、施策が企業や部署に合っていない
- 働き方の変化にまだ対応しきれていない
現場の従業員に浸透していない場合は、各部門のリーダーに確認を取りましょう。どうすれば浸透するのかを一緒に考えることが大切です。また、そもそも制度や施策が企業や部門の事情に適しておらず、利用が難しいケースもあります。
例えば、長期休暇制度を導入しても、常に現場がフル回転している状況では申請しづらいでしょう。この場合は、制度を見直すよりは、人員に余裕を持たせるために採用することを検討してみてください。
働き方の変化に対応しきれていない場合は、あと半年ほどは様子を見ましょう。一向に効果が出ないのであれば、制度・施策の見直しが必要です。
まとめ
健康経営は、従業員の健康管理をするだけではなく、経営に繋げることで企業側もメリットを得られる手法です。間違った形で行うと、企業側がメリットを得られないばかりか従業員の負担が大きくなるため、綿密な計画を立てて実施しましょう。また、健康経営が企業に与えた影響について定期的に評価して、より良い健康経営を目指すことが大切です。
ABOUT執筆者紹介
加藤良大
フリーライター
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歴11年フリーライター。執筆実績は23,000本以上。
多くの大企業、中小企業のWeb集客、
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