06 December

10月からマイナンバーカードが健康保険証代わりに?メリット・デメリットを解説

掲載日:2021年12月06日   
税務ニュース

10月20日から、マイナンバーカードを健康保険証として使えるしくみが始まりました。現在、全国の医療機関や薬局で対応システムの導入が少しずつ進められているようです。今回は、このしくみが普及したときのメリット・デメリットを解説します。

「マイナンバーカードが健康保険証になる」メリット

マイナンバーカードが健康保険証代わりになると、従来の健康保険証の提示が不要になります。つまり「持ち歩くカードが1枚減る」わけですが、それだけではありません。次のようなメリットがあります。

●高額療養費の自己負担をしなくて済む

もっとも大きいメリットは「高額療養費の自己負担をしなくて済む」という点です。高額療養費とは、病気やケガで医療費が高額になったとき、一定額以下に自己負担が抑えられる制度をいいます。高額な部分は国が負担してくれるのです。

「じゃあ今のままでも問題ないんじゃない?」と思うかもしれません。が、実は、そう簡単ではないのです。最終的に国が負担してくれるものの、一度は個人がすべて自己負担しなくてはなりません。

自分のお財布から高い医療費を払った後、市区町村や健康保険組合に高額療養費の支給申請を行います。その後、払い戻されるのです。預貯金や収入に余裕のあるなら問題ありませんが、お金のない人には、重い負担です。しかし、マイナンバーカードを健康保険証として使うと、この重荷がなくなります。

受診時にオンラインで行うと、限度額適用認定証が自動適用されます。つまり、高額療養費制度が最初から使えるので、窓口での負担額も本来の自己負担分で済みます。高額の出費をしなくていいのです。

このしくみは、すでに一部の医療機関で始まっています。令和5年3月からはすべての医療機関で適用される予定です。

 

●マイナポータルで過去の記録を確認できる

マイナンバーカードが健康保険証と一体化すると、マイナポータルで特定検診情報や薬剤情報、医療費といった情報を閲覧できます。結果、病院や薬局が変わっても、過去の病状の確認や薬の情報収集に手間をかけずに済みます。さらに、患者の同意があれば、医師や薬剤師は、過去の薬や病気の情報を簡単に確認できるようになります。そうなれば、適切な治療方針を定められるようになるでしょう。薬を過剰に投与することもなくなるかもしれません。

 

●医療費控除での集計が不要に

医療費控除のために確定申告をする際、自分で1年間の領収書をかき集めて集計し、明細書に記入しなくてはなりません。マイナンバーカードを健康保険証代わりに使うと、この手間を省けます。

e-Taxで確定申告を行う際、マイナポータルから医療費の情報を取り込めるので、手計算がいらなくなるのです。スピーディに申告作業を進められます。

 

●転職や引っ越し時の再発行は不要

転職をすれば、勤務先に合わせて健康保険証の発行し直しが必要になります。また、住所が変われば、再発行をしてもらわなくてはなりません。マイナンバーカードを健康保険証として利用すれば、こういった手続きをしなくてすみます。転職先の会社の協会けんぽなどといった保険者に健康保険の申し込みをすれば、引き続きマイナンバーカードを健康保険証として利用できます。

なお、マイナンバーカードには定期的に有効期限の更新が必要ですが、あらためて健康保険証としての利用を登録する必要はありません。

マイナンバーカードを保険証代わりにするデメリット

ただし、メリットだけではありません。デメリットもあります。

●どの医療機関でも使えるわけではない

マイナンバーカードを健康保険証利用は、どこでもできるわけではありません。マイナンバーカードを保険証として使うときは、カードリーダーにかざして資格確認を行います。ということは、カードリーダーを導入していない医療機関や薬局では、これまでと同じ健康保険証を使わざるを得ないのです。

10月時点で必要なシステムを導入したのは全国の医療機関・薬局のうち、わずか8.9%だと言われています。いくら便利だといっても、現時点では利便性が高いとは言えません。

 

●保険者の異動などの手続きは必要

転職や引っ越しにおけるカードの再発行は、確かに不要です。ただし、先ほど少し触れた通り、就職や退職、扶養認定等の変更があった場合は、協会けんぽなどの保険者へ手続する必要があります。また、国民健康保険の加入・脱退の手続きも求められます。

 

●個人情報の保護が不安

「令和4年末までに、国民全員がマイナンバーカードを取得するようにする」としている政府ですが、その目標達成には程遠いのが現実です。今年8月末時点でのマイナンバーカードの交付率は4割にも達していません。平成30年度の世論調査によれば、「必要性を感じない」「身分証は他にある」の次に高い理由として「個人情報の漏洩が心配だから」が挙げられています。

そう簡単に情報は漏れないのかもしれません。しかし、一つのカードに氏名や顔写真、住所だけでなく医療情報や決済情報まで紐づいているという状況には、やはり不安を感じます。「もし紛失したら?」「もし盗まれたら?」___健康保険証としての利用を高めたいなら、いざというときの対策をもっと講じる必要があるのかもしれません。

健康保険証として使うときは手続が必要

マイナンバーカードを健康保険証代わりにすると決めても、すぐに使えるわけではありません。事前の手続きが必要になります。

●市区町村の役所での手続き

市役所や区役所といった自治体の窓口で、利用開始の手続きができます。マイナンバーカードと4ケタの暗証番号が必要です。

 

●オンラインで手続き

オンラインで利用開始の手続きをするときは、次の3つのどれかで手続できます。

  1. マイナポータル
  2. セブン銀行ATM
  3. オンライン資格確認を導入している医療機関か薬局の窓口にある顔認証付きカードリーダー

 

対応している医療機関や薬局の数はまだ少ないので、1か2が現実的かと見られます。このときも、マイナンバーカードと4ケタの暗証番号が必要です。

まとめ

マイナンバーカードの健康保険証利用は、あまり知られていません。仮に知っていても、大半の人は「これまで通り、保険証を使えばいいや」と思うでしょう。しかしその一方、マイナポイントのキャンペーンや確定申告のe-Tax利用に伴い、マイナンバーカードの取得は少しずつ進んでいます。

今後のマイナンバーカードの普及や負担の大きい高額療養費がなくなるメリットを踏まえると、健康保険証としての利用を考えてみてもいいのかもしれません。

ABOUT執筆者紹介

税理士 鈴木まゆ子

税理士・税務ライター|中央大学法学部法律学科卒。ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。ZUU online、マネーの達人、朝日新聞『相続会議』、KaikeiZine、納税通信などで税務・会計の記事を多数執筆。著書に『海外資産の税金のキホン』(税務経理協会、共著)。

 

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