11 November

準備は早ければ早いほどよい!今の時期から令和4年分「確定申告」の準備をしよう!

掲載日:2022年11月11日   
税務ニュース

今年も残すところあとわずか。“今年分の確定申告はまだ先のこと”と考えていると、忙しい年末年始を過ごしているとあっという間に時が過ぎ、結局は間際に準備に取り掛かるという慌ただしい事態を招いてしまいます。差し迫った状況では適正な申告もおぼつかなくなるため、早い時期から改正項目をチェックし、計算に必要な知識・データ・書類を整えるようにしましょう。

準備は早ければ早いほどよい!

個人事業主や一定の条件に当てはまる方に義務がある所得税の確定申告。そして義務はなくても所得税の還付が受けられるため申告したほうがよい還付申告。特にお勤めの方は、勤務先が「年末調整」を行ってくれるので原則的には確定申告不要ですが、副業所得があるなど確定申告をしなければならないケースもあります。

確定申告の期間は周知のとおりで2月16日から3月15日です。納税が必要な場合も原則3月15日までに納めます。一見すると作業時間にゆとりがあるように感じるかもしれませんが、実際には申告に必要な書類を事前に取得・管理しておく必要があるため、準備はできる限り早い時期から始めるほうがいいでしょう。

必要書類は申告内容によってさまざまですが、源泉徴収票や保険料控除証明書など決まった時期に関係各所から提示されるものや、登記事項証明書など自分で取り寄せなければならない公的書類、そして医療費の領収証や寄付金受領証などのようにその都度発行されるものなどがあります。これらの書類を事前に整理しておけば、ストレスなくスムーズに適正な確定申告を進めることができます。

それからe-Taxを初めて利用する方は、マイナンバーカードの取得または利用者識別番号・パスワードの取得が必要です。マイナンバーカードをお持ちでない方は申請から取得までに相当の日数がかかりますし、利用者識別番号・パスワードの発行には税務署窓口での対面による本人確認が必要です。安全のためいずれも早めに準備しておきましょう。

過去に書面提出した申告書等の閲覧がe-Tax上でできるように!

年に1度の手続である申告書等の作成には、過去の提出済み控え書類を参考にする方が多いでしょう。しかしながら紛失してしまった、あるいはどこに保管しているのか覚えておらず、途方に暮れるというケースもよく耳にします。

もともとパソコンにより電子申告した場合はe-Tax上で過去の申告内容を無料で閲覧できますが、書面提出によるもののほかスマホやタブレットによる提出の場合は、これまでは「申告書等閲覧サービス」を使ってコピーを入手するしかありませんでした。このサービスは“有料”で、書面による開示請求手続をしなければならず、入手までの日数も数週間かかってしまいます。

このようなアナログ手続による事務負担の軽減や納税者の利便性を考慮して、e-Taxによる「申告書等閲覧サービス」がスタートしています。利用者は申請の際にマイナンバーカードによる電子署名の入力が必要ですが、センターからの通知後には過去に提出した直近2年分の『確定申告書』・『青色申告決算書』・『収支内訳書』の閲覧およびPDFデータの取得が“無料”で利用できます。提出済み控え書類が手元にない方は、積極的にこのサービスを活用して要領よく申告書の作成を進めましょう。

申告書A様式が申告書B様式に一本化!加えて第五表も廃止!

主にお勤めの方が還付申告などで利用していた「申告書A」が、令和4年分の確定申告から廃止されました。「申告書B」様式へと吸収・統合され、用紙の名称もA・Bの区分けなく「申告書」となります。また、「第五表(修正申告書)」も廃止されます。

その代わりに第一表に「修正申告」の記入欄が追加されました。これまで申告書Aを使って毎年申告をしていた方は、様式がかなり変わるのでミスの予防に向けて早めに内容を確認し、作成要領を心得ておいたほうがいいでしょう。

出所:筆者監修『いちからわかる!確定申告トクする書き方ガイド』(インプレスブックス)

収支内訳書の様式が一部変更に!

事業所得を申告する方が利用していた『収支内訳書』について様式が一部変更になりました。これは、令和4年分から雑所得について、前々年分の業務(副業)に係る「収入金額」が1,000万円を超えた場合、確定申告時に確定申告書とともに収支内訳書も提出しなければならなくなったことに対応するためです。

具体的には新たに「事業所得(営業等)」・「雑所得(業務)」の欄が新設され、どちらかに〇をつけて提出します。雑所得で提出する方は「雑所得(業務)」に〇をつけます。雑所得で前々年分の「収入金額」が1,000万円超のケースは少ないかもしれませんが、該当する方は事業所得者と同様に収入と経費の区分・集計が必要となりますので十分な準備が求められます。

住宅ローン減税の控除率が1%から0.7%に!

令和4年適用初年度分から「住宅ローン減税」(住宅借入金等特別控除)の制度について、税額控除率が従来の1%から0.7%に変更となりました。控除限度額を「年末ローン残高×0.7%」として計算しますので注意してください。控除対象額は、認定長期優良住宅、ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)、省エネ基準適合、その他の4段階に分かれていますので、自身がどの対象なのか事前に確認をしておきましょう。

出所:国土交通省ホームページ

確定申告の方法を決めておこう!

近年はパソコン・スマホで申告をする方が増加しています。まだ利用したことがない方は、対応するプログラムにより比較的簡単かつ正確に申告書の作成・提出ができますのでおススメです。

所得税等の確定申告書をe-Taxで提出した人員

(単位:千人)

( )内は確定申告人員全体に対する割合(構成比)

出所:国税庁報道発表資料

1. e-Taxの「マイナンバーカード方式」と「ID・パスワード方式」とは?

マイナンバーカード方式 ID・パスワード方式
マイナンバーカード対応のスマホかICカードリーダライタを使う。スマホはiPhone7以降やAndroidの多くの機種が対応。「マイナポータルアプリ」を使ってマイナンバーカードを読み取る。 税務署で「ID・パスワード方式の届出完了通知」を取得する。取得のためには顔写真付きの本人確認書類を持って税務署に行く必要がある点に注意(最短で即日取得可能)。

パソコン・スマホ申告は、画面の指示に従って選択・入力していきます。控除や税額等の金額も自動計算されるので計算の誤りがありません。申告書を作成したら印刷して提出してもいいですし、e-Taxで電子申告すればオンライン上で手続が完了します。なおスマホ申告による場合は、申告できる所得の種類に制限がありますので注意してください。

 

2. 手書き(アナログ)で申告書を作成するときは

手書きで作成する場合は申告書用紙の事前入手が必要です。入手方法は、税務署から入手するか、国税庁のホームページからダウンロードするのが基本です。いずれの場合も1月頃から入手できるようになります。早めに入手するようにしておきましょう。

税務署窓口で入手
(出向くのが面倒)
郵送で入手
(手間がかかる)
ホームページで入手
(おススメ!)
最寄りの税務署で受け取り。申告の目的などを説明すると、必要な申告書や添付書類、手引きなどももらえる。初めての確定申告で聞きたいことなどがあるなら、この方法がおすすめ。 取り寄せたい申告書の種類や申告内容を記載したメモ、返信送料分の切手を貼り、自分の住所と名前を書いた返信用封筒を最寄りの税務署に送付。 国税庁サイト「確定申告特集」ページで、確定申告書のほか、付表・計算書・明細書や手引きなどがダウンロードできる。複写式ではないので、提出前に控え用のコピーをとっておく。

 

3. マイナンバーをお忘れなく

マイナンバーカードは、e-Taxの「マイナンバー方式」で申告するときに必要です。一方で、e-Taxの「ID・パスワード方式」や手書きの申告の場合はカードが不要ですが、マイナンバーの記入(窓口提出のときは合わせてマイナンバーカードのコピーまたは通知カード及び本人確認書類のコピーの添付)が必要になりますので、申告の時にマイナンバーがわからないといったことがないように準備しておきましょう。

ABOUT執筆者紹介

税理士 西原憲一

西原会計事務所

大阪市生まれ。大阪市立大学 商学部 卒業。監査法人系税務コンサルティング会社に勤務。

2000年3月 西原会計事務所を開設。2002年3月 FP総合事務所 ユナイテッド・エフピー・ファームを設立。2007年6月 株式会社UFPFに組織変更し、代表取締役に就任。近著に『マンガと図解でよくわかる インボイス 消費税の基本と手続きの仕方がわかる本』がある。

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