【創業ガイド Vol.14】「起業初期から知るべき節税 会社の将来に繋がる節税とは?」
起業応援・創業ガイド
法人設立をしたら、税金の負担を少なくする節税についてもおさえておきましょう。
今回は、節税の基本的な考え方や具体的な節税の方法、節税を検討するタイミングについて、わかりやすく解説します。
節税の基本的な考え方は?
決算で多額の納税になりそうだからといって、闇雲に経費を使うのは、節税ではありません。単なる無駄遣いとなってしまいます。では、なぜ、会社は節税を行うのか。その理由は、会社が生んだ利益を今後につながるように、有効に活用するためです。
節税は、会社の将来を見通し、「投資の視点」を持って行いましょう。
節税の具体例
次は、節税の具体例をご紹介します。
事業への先行投資
新規事業などへの先行的な投資を行い、初期費用などと利益を相殺することで、利益を少なくする方法があります。また、設備投資を行い、税金面で特別償却や税額控除などの優遇措置を受けることができます。(一定の要件を満たす必要はあります。)
特別償却とは特定の機械設備を購入した際に、通常の減価償却に加えて、取得価額に一定額を上乗せして償却できる制度です。税額控除とは、納付する税額から一定額を控除することができる制度です。
特別償却と税額控除はどちらかの選択となるので、有利な方をシミュレーションしましょう。
人への投資:従業員への福利厚生や賞与
従業員へ賞与を支給※をしたり、住宅手当や社宅などの福利厚生を充実させることも人への投資となる節税対策です。賞与や手当を会社の費用にしながら、会社の利益を従業員へ還元し、利益をおさえて、納税を減らすことができます。
従業員のモチベーションをUPさせ、定着率の向上へつなげるなど、人への投資は、とても有効な節税対策と言えるのではないでしょうか。
※支給時期や支給方法など、税務上の一定の要件を満たす必要はあります。
倒産防止共済の活用
倒産しない会社をつくるための投資となる節税として、倒産防止共済があります。倒産防止共済(経営セーフティ共済)は、取引先事業者が倒産した際に、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度です。
倒産防止共済の大きな特徴は、リスクが低い安心な「国の制度」であることと、「掛金が全額損金」になることです。このメリットが大きいので、中小企業の節税では非常によく行われています。
掛金月額は5,000円~20万円まで自由に決定でき、800万円まで経費にしながら、積み立てることができます。増額・減額も可能です。最高で年間20万円×12ヵ月=最大240万円の掛金を経費にすることができます。加えて、倒産防止共済ではこれから1年分の掛金を前納することができます。この前納は、決算での節税対策に使われています。
ただし、解約時には課税されますので、業績の悪い年度に解約し赤字と相殺することや、退職金などと相殺するなどの出口戦略もゆくゆくは考えていく必要があります。
短期前払費用の特例の活用
よく行う節税方法として、短期前払費用の特例があります。前払した費用は、基本的には払った事業年度の経費にすることはできませんが、例外として、短期前払費用の特例があります。短期前払費用の特例は、前払費用のうち1年以内に役務提供を受けるものについては、支払った事業年度で一括で費用にすることができるというものです。
例えば、本社の家賃を毎月払いから年払いでの前払いに変更することで前払した1年分の家賃を払った事業年度の経費にすることができます。
ただし、この特例は毎期継続的に行うことが要件となっていますので、翌期も1年分の前払いを継続する必要があります。また、社宅家賃は、費用(支払賃料)と収益(社宅負担分)を対応させる必要があるため、この特例の適用はできませんので、ご注意ください。
法人の節税を検討するタイミング 9カ月決算のススメ
節税を適切に行うには、期首から9ヶ月が経過した時点で最終の利益予測を行いましょう。「9カ月決算」がオススメです。例えば、3月決算法人であれば、1月の上旬に「9カ月決算」を行います。12月までの実績値と1月~3月までの予測の売上と費用で、最終の利益とそれに対する納税額をシミュレーションを行い、節税対策を検討します。
決算より3カ月前に、この予測を行えば、残り3カ月間ありますから、じっくり節税を行うことができきますし、決算日から2カ月後の納税資金の準備も計画的に進めることができます。
節税は、決算を迎えてから行っても遅いので、早めに対策しましょう。
まとめ
節税について、基本的な考え方や節税方法や節税を検討するタイミングをご紹介しました。
ただ闇雲に経費をつかうことで利益を減らし、納付を少なくするのではなく、会社の将来に繋がる、未来をもっとよくするという視点で節税対策をしていきましょう。
ABOUT執筆者紹介
税理士 吉村知子
ビジネス拡大のため、開業してから法人化を目指す個人事業主や法人のための税理士として、ともにビジネスの飛躍を目指す経営のサポートを行う。また、法人や個人事業主の顧問契約だけでなく、個人事業主向けの講座を開講。確定申告をゴールとしながら、経営者として必要となるお金の知識を学ぶオンラインプログラムが大好評。
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