ビジネスで使える画像も生成AI「Midjourney」で作成する時代に
IT・ガジェット情報
ChatGPTのようなテキスト生成AIと同時に、画像生成AIも盛り上がっています。画像生成AIはテキスト生成AIと同様に、プロンプトを入力することでコンピュータが画像を作ってくれる技術です。以前は、技術的には凄いものの、画像そのものは鑑賞に堪えないレベルでした。それが、昨年の夏ごろから次々と、新しい画像生成AIサービスが登場し、ハイクオリティな画像を生成できることで話題を集めました。
今年に入ってからは爆発的にユーザーが増え、同種のサービスも乱立しています。2023年3月、画像生成AIを使い、トランプ前大統領が逮捕されたというフェイクニュースをTwitterに投稿した人物が現れ、物議をかもしました。なぜ問題になったのかと言うと、その画像がリアルすぎて、信じる人が続出したからです。
画像生成AIは、このようなフェイク画像や著作権と言った課題があり、いろいろな意見がぶつかり合っています。しかし、このような革新的な技術を使わなくなる、という選択肢はありません。このままどんどん進化していくことでしょう。
現状でもすでにビジネスシーンで使える画像を生成できるようになっています。例えば、Adobeは「Firefly」という画像生成AIをリリースし、クリエイティブに活用できるようにしています。個人所有のPCにインストールして画像を無制限に生成できる「Stable Diffusion」も公開されています。
ビジネスパーソンであれば、実際に何ができるのかは体感しておくべきです。実際にビジネスで使う画像の生成はプロに任せることになるかもしれませんが、生成AIで何ができるのか、何ができないのか、を知っておく必要があります。もし、知識がないままだと、生成AIの真価を理解せず、ライバルに引き離されてしまうかもしれません。逆に、浅い理解のイメージだけで頓珍漢な発言をして、自分の評価を下げてしまうこともあるでしょう。理解していれば、内製化して時短とコストダウンを実現できるかもしれません。
今回は、トランプ前大統領のフェイク画像を作った「Midjourney」というサービスの使い方と、どんな画像が作成できるのかを紹介します。画像生成AIの実力を垣間見てください。
画像生成AI「Midjourney」のアカウントを作成して画像を生成する
「Midjourney」のホームページにアクセスし、「Join the Beta」をクリックします。「Discord」というコミュニティアプリに接続したら、ログインします。アカウントを持っていない場合は、作成しましょう。ログインしたら、「/subscrib」コマンドで契約します。
有料プランは月額10ドルのベーシックプラン、月額30ドルのスタンダードプラン、月額60ドルのプロプランがあります。スタンダードプラン以上なら画像を無制限に生成できるので、筆者もスタンダードプランを契約しています。
「ダイレクトメッセージ」の「Midjourney Bot」を開いたら、「/i」と入力します。メニューから「/image」コマンドを入力し、プロンプトを入力すると、生成が開始されます。
例えば、イベントの告知バナーに使うビジネスパーソンの画像を作ってみましょう。プロンプトに「Japanese , male , suit」などと書いてもいいのですが、ここはChatGPTに作ってもらいましょう。ChatGPTにテーマと「画像生成AIのプロンプトを英語で作ってください」というプロンプトを日本語で入力すれば、「Please generate an image of a young, handsome Japanese businessman in an office setting. He should be smiling, and the image should focus on the upper body. The lighting should have a cinematic quality to it.」と出力してくれます。
これをそのまま「Midjourney」に入力すると、即4枚の画像が表示されます。その中からいい感じの画像があれば、下の「U」ボタンを押します。今回は2枚目がいい感じなので「U2」をクリックします。あっけなく、いい感じの画像が生成されました。
今どきは、使いやすいデザインツールがたくさんあります。例えば、無料でも使える「Canva」というサービスなら、生成した画像を使い、数分でバナーを作成できます。この手軽さ、スピーディさがビジネスにどんな効果をもたらすのか、想像できるでしょう。ちなみに、生成AIによって、商用利用かどうかは異なるのですが、「Midjourney」は商用利用できます。
入力するプロンプト次第でどんな画像も生成できる
「Midjourney」では人物を生成するのが流行っていますが、実は様々な画像を生成できます。ペットのイメージ画像が欲しいなら、「shibainu on bed」と入力するだけで、サクッとリアルな画像を生成してくれます。誰がどこで撮った写真か、他で使われていないかを確認する必要も、料金が発生することもありません。
ロゴの生成もできます。例えば、英語で「レベリングという成長をコンセプトにした企業のロゴを生成して」と入力すれば、何枚でもロゴを生成してくれます。イメージが違ったら、プロンプトを修正して再トライします。生成AIは一発で完成形を作ろうとせず、トライ&エラーが必要になることも多い、ということは覚えておきましょう。
ちなみに、「LEVELING」という文字が変になっている画像があります。画像生成AIは、実は文字を認識できません。例えば、雑誌の表紙を生成するとデザインはいい感じなのですが、文字は無茶苦茶になります。筆者としては、今回のテストで曲がりなりにも似たようなイメージが生成されたのは逆に驚きです。生成AIで指示したテキストを画像内に入れ込むことができるようになる日は近いのかもしれません。
生成AIで企業ロゴの完成品を作れるようになるのはまだ先だとしても、大量にたたき台を作成し、イメージに合ったものを選ぶだけなら現状でも実現できます。明確なたたき台があるなら、その先の製作期間は大幅に短縮できますし、予算も抑えらえるかもしれません。
もちろん、想像の世界を画像にすることもできます。「町の中をライオンに追いかけられている女性の画像」も生成できます。映画の1シーンかにも見えますが、筆者が短時間で生成したものです。
既存の画像を分析してプロンプトを作ってもらうこともできる
欲しいイメージぴったりの画像を持っているものの、自分の家族の写真なので出すわけにはいかない、と言うこともあります。そんな時、「Midjourney」なら「/describe」コマンドで画像を分析し、似た画像を生成するためのプロンプトを考えてくれるのです。
試しに、3人の家族が海を見ている写真をアップロードしてみました。少し待つと、4パターンのプロンプトが表示されたので、それぞれ生成してみたところ、いい感じのアニメ調の画像がありました。
繰り返しますが、望み通りのオリジナルの画像が、数分で手に入るのです。生成AIを使いこなすのには慣れが必要ですが、もしAIスキルを持つ社員が一人でもいれば、クリエイティブの内製化が可能になるかもしれません。しかも、デザイナーやイラストレーターではなく、誰でも画像を作成できるようになるのです。
画像生成AIでは、イベント集客のバナーやホームページのヘルプに表示される人物イラスト、SNSに投稿する際のイメージ画像など、様々な画像が作れます。雑誌の表紙やホームページのデザインを生成している人もいます。
今後、像生成AIがビジネスシーンでも存在感を増していくことは間違いありません。中国では、ゲームのデザインを請け負う企業で、画像生成AIを導入することで原画担当の3割が解雇されたというニュースがありました。日本ではまだ大きな動きは起きないかもしれませんが、だからこそ今のうちに画像生成AIに触り、どんなものなのかを体感しておく必要があるのです。
ABOUT執筆者紹介
柳谷智宣
ITライター/NPO法人デジタルリテラシー向上機構 代表理事
ホームページ
1998年からIT・ビジネスライターとして執筆活動を行っており、コンシューマからエンタープライズまで幅広い領域を手がけている。2018年からは特定非営利活動法人デジタルリテラシー向上機構(DLIS)を立ち上げ、ネット詐欺や誹謗中傷の被害を減らすべく活動している。
[democracy id=”422″]