TwitterからXへのリブランディングにより、何が変わったのか?
IT・ガジェット情報
2022年、テクノロジー界の巨人であり、スペースX、テスラのCEOとして知られるイーロン・マスク氏がTwitterを買収しました。この買収は、多くの人々にとって驚きであり、SNS業界においても大きな話題となりました。彼は買収後の2023年7月24日、Twitterの名称を「X」に変更。これによりさらに多くの変化が生じています。
この名称変更は単なる表面的なものではありません。それはTwitterというブランドが持っていたアイデンティティ、文化を捨て去ることで、そこにいるユーザーにも大きな影響をもたらしました。新しい名前「X」は、イーロン・マスク氏が目指す未来に対する新しいビジョンを象徴しています。このビジョンには、マネタイズ戦略の変更、ユーザーエクスペリエンスの向上、そしてプラットフォーム全体の機能拡張が含まれています。
この買収とリブランディングによって、Twitterはただのソーシャルメディアから、より大きな野望を持つ「X」という新たな存在へと生まれ変わろうとしています。この変化が、今後数年でどのように展開していくのか、多くの人々が注目しています。
リブランディングへのユーザーの反応
TwitterからXへのリブランディングは、多くのユーザーにとって衝撃的な出来事でした。特に、長年にわたってTwitterを使用してきた人々は、慣れ親しんだ「Twitter」という名称と、その象徴である青い鳥のロゴが失われることに強い反発を示しました。このような変更は、ユーザーにとってはただの名前やロゴ以上のものであり、それは一種のアイデンティティでもありました。
さらに、Twitterの公式アカウントが「@twitter」から「@x」に変更された際、イーロン・マスク氏は既存の「@x」アカウントを所有していたユーザーに対して報酬金などは一切支払わず、実質的にそのアカウントを強奪する形を取りました。このような強引な手法は、多くの批判を浴び、一部のユーザーからは信頼を失ったという声も上がっています。
このような反応は、新しいビジョンに対する不安や疑念を象徴しており、Xとして新たなスタートを切るプラットフォームにとっては大きな課題となっています。
リブランディングにより何が変わったのか?
TwitterからXへのリブランディングは、単なる名前やロゴの変更にとどまらない多くの変化をもたらしました。まず、基本的な用語が変更されました。Twitterでの投稿を表す「ツイート」は「ポスト(Post)」に、リツイートは「リポスト(Repost)」という新しい表現に変わりました。これは、プラットフォームの新たなアイデンティティを形作る一環と言えるでしょう。
さらに、マネタイズの戦略も大きく変わりました。イーロン・マスク氏がTwitterを買収した際には、広告、サブスクリプション、そして「everything app.(スーパーアプリ)」になるという3つの戦略を明らかにしました。
新たな取り組みとして、「X Premium(旧Twitter Blue)」という有料プラン(日本国内では月額980円、App Store課金の場合は1,380円)も導入されました。このプランでは、特定の機能やコンテンツがプレミアムユーザーだけに解放される形となっています。さらに、広告収益の分配にも変更があり、一部のユーザーが自分のポストから得られる広告収益を受け取ることができるようになりました。
買収後の最初の数か月間は、広告とサブスクリプションに重点が置かれていましたが、現在はスーパーアプリとしての機能拡張が本格的に始動しています。
このように、Xとして生まれ変わったプラットフォームは、ユーザー体験からビジネスモデルに至るまで、多角的に進化を遂げています。
ビジネスでXを活用するのであれば、「X Premium」に加入しよう
「X Premium」に加入することで以下のような機能を解放することができます。
「ポストを編集」、「広告数の半減」、「会話や検索結果でのポストの上位表示」、「長いポスト」、「テキストの書式」、「ポストのハイライト」、「ブックマークフォルダ」、「カスタムアプリアイコン」、「カスタムナビゲーション」、「話題の記事」、「リーダー」、「ポストの取り消し」、「長い動画のアップロード」、「テーマ」、「NFTのプロフィール画像」、「ショートメールによる2要素認証」、「チェックマークの非表示化」、「コミュニティを作成」、「Media Studioへのアクセス」、「X Proへのアクセス」
※詳細は公式サイトをご確認ください
この記事を読んでいただいている多くの皆様は、Xのビジネス活用にご興味があるのではないでしょうか。筆者も「X Premium」に加入し、Xを運用しています。ビジネスで活用するのであれば、「X Premium」に加入することをおすすめします。長文投稿が可能になったり、編集が可能になる利便性はもちろんのこと、投稿のインプレッション(表示回数)にも大きな影響が生じます。月額980円の価値は充分感じられるでしょう。
イーロンが目指すもの:Xを「スーパーアプリ」に変貌させること
イーロン・マスク氏のTwitterからXへのリブランディングは、単なる名前変更やロゴのリニューアルを超えた野心的なプロジェクトです。彼が目指しているのは、Xを「スーパーアプリ」に変貌させることです。スーパーアプリとは、一つのアプリ内で多様なサービスや機能を提供するプラットフォームのことを指します。
このビジョンは、中国のWeChatやAlipayなど、既に成功を収めているスーパーアプリに触発されたものでしょう。これらのアプリは、ソーシャルメディア機能のみならず、メッセージ送信、決済、送金、ショッピング、フードデリバリー、タクシー配車など、多くの機能を一つのアプリでカバーしています。現在、日本にも米国にも、そのようなスーパーアプリは普及していません。(LINE PayPayは機能的に近いものはありますが、スーパーアプリとしてのポジションはWeChatに及びません)
イーロン・マスク氏は、Xを同様に多機能なプラットフォームに育て上げることで、ユーザーが他のアプリに移動する必要をなくし、より多くの時間をX内で過ごしてもらいたいと考えています。このようにして、Xはただのソーシャルメディアプラットフォームから、人々の日常生活に密接に関わるスーパーアプリへと進化を遂げる可能性があります。
中国等、スーパーアプリが普及している国と、日本や米国のような国では、政治的、経済的、社会的な違いがデジタルプラットフォームにとって非常に異なる環境を生み出しているというと指摘されるケースもあり、Xのスーパーアプリへの進化、普及は難しいと考える人も少なくありません。
まとめ
イーロン・マスク氏のTwitterからXへのリブランディングには確かに批判的な声が多いですが、その背後には彼の手腕があります。多くの人々がその手法に疑問を持ちつつも、彼がこれまでに成し遂げてきたことは誰もが認めるところです。
筆者としては、このような混沌とした状況と先行き不明なXの展開を楽しみながら観察していきたいと考えています。特に、Xが日本で最も影響力のあるソーシャルメディアプラットフォームであることを考慮すると、その動きは日本のデジタルコミュニケーションにも大きな影響を与えるでしょう。
このリブランディングが成功すれば、それはイーロン・マスク氏のまた一つの偉業となるでしょう。失敗すれば、それもまた彼の冒険の一部となる。いずれにせよ、この舞台裏のドラマとその結末は、多くの人々にとって興味深いものとなることでしょう。
ABOUT執筆者紹介
Webメディア評論家 落合正和
Webメディア評論家/Webマーケティングコンサルタント
株式会社office ZERO-STYLE 代表取締役
一般財団法人 モバイルスマートタウン推進財団 副理事長兼専務理事
SNSを中心としたWebメディアを専門とし、インターネットトラブルやサイバーセキュリティ、IT業界情勢などの解説でメディア出演多数。ブログやSNSの活用法や集客術、Webマーケティング、リスク管理等の講演のほか、民間シンクタンク(日本観光推進総合研究所 所長)にて調査・研究なども行う。
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