15 April

企業がソーシャルメディア運用で直面する5つのリスクとその管理方法

掲載日:2024年04月15日   
IT・ガジェット情報

今回は企業におけるソーシャルメディア運用のリスクについて考えていきたいと思います。

ソーシャルメディアは今や企業にとって、ビジネスにおいて欠かせないコミュニケーションツールとなっています。しかし、その一方でソーシャルメディアの運用には様々なリスクが潜んでいることも事実です。トラブルに巻き込まれた企業の事例は枚挙にいとまがありません。

企業がソーシャルメディアを活用する上で、リスクを適切に管理することは非常に重要です。リスクを軽視し、適切な対策を講じなければ、企業の信用や財務に深刻なダメージを与えかねません。

本記事では、企業がソーシャルメディア運用で直面するリスクについて解説するとともに、それらのリスクにどう対処すべきかを考えていきます。

企業におけるソーシャルメディア運用のリスクとは

企業がソーシャルメディアを運用する上で、どのようなリスクがあるのでしょうか。主なリスクを5つ挙げてみましょう。

1、コンプライアンスの問題と炎上

まず考えられるのが、コンプライアンス違反による炎上リスクです。企業や芸能人のソーシャルメディアにおける炎上ニュースは毎日のように目にしますが、決して他人事ではありません。

自社の社員がソーシャルメディア上で不適切な発言をしたり、機密情報を漏らしたりすることで、企業のイメージを大きく損ねる可能性があります。また、個人のアカウントであっても、会社と関連付けられてしまうケースは少なくありません。

炎上は瞬く間に拡散し、収拾がつかなくなることもあります。炎上の影響は企業の信用失墜だけでなく、株価の下落などの財務的な損失にもつながりかねません。

2、セキュリティ問題

次に、セキュリティの問題です。

ソーシャルメディアのアカウントが乗っ取られたり、ソーシャルメディアを通じてマルウェアに感染したりするリスクは常につきまといます。セキュリティ対策が不十分だと、企業の機密情報が流出したり、顧客の個人情報が漏洩したりする危険性があります。

乗っ取られたアカウントが詐欺などに利用され、犯罪に巻き込まれてしまうケースは多々見られます。
情報漏洩が起これば、企業の信用は大きく損なわれ、法的責任を問われる可能性もあります。

3、法的問題

ソーシャルメディアの利用には、様々な法的リスクが伴います。

例えば、著作権や商標権の侵害、名誉毀損、プライバシーの侵害などです。これらの行為は、訴訟のリスクを招く可能性があります。よくテレビ取材を受けたお店が、自分のソーシャルメディアで放送された番組の一部を切り抜いて投稿しているのを見かけますが、本来なら放送番組の2次利用について許諾を得る必要があります。実際は許諾を得ていないケースがほとんどだと思います。

ソーシャルメディアのプロフィール写真にアニメのキャラクターや、芸能人などを無許可で使用している人も多いですが、それらも権利の侵害となる可能性は十分にあります。そうなれば損害賠償請求を求められるような事態に発展してしまうかもしれません。

また、ステルスマーケティングのような、景品表示法に抵触するような行為も厳に慎まなければなりません。

4、風評被害

ソーシャルメディア上での風評被害も、見過ごせない問題です。

悪質な噂や根拠のないネガティブな情報が拡散されれば、企業のブランドイメージは大きく毀損されます。風評被害は、一度発生すると簡単には収束しません。

つい先日も、X(旧Twitter)において「◯◯銀行が3月14日に取り付け騒ぎが起こることに備えて行員に通知した」とのデマが投稿され、140万件以上も拡散されたという出来事がありました。銀行側は即、「そのような事実はございません」と否定しましたが、一歩間違えれば、豊川信用金庫事件(間違った噂により豊川信用金庫に対する取り付け騒ぎが実際に発生した)のようにもなりかねません。

風評被害への対応は遅れてしまったり、間違った対応になってしまうと、かえって事態を悪化させてしまうこともあります。

5、財務への影響

以上のようなリスクは、いずれも企業の財務に大きな影響を与えます。

炎上や情報漏洩による信用の失墜は、売上の減少につながります。訴訟になれば、多額の賠償金を支払わなければならないかもしれません。株価の下落も避けられません。

ソーシャルメディアのリスクは、企業の存続にも関わる重大な問題なのです。

ソーシャルメディアのリスクを管理するために必要な要素

それでは、ソーシャルメディアのリスクにどう対処すべきでしょうか。リスク管理に必要な要素を4つ挙げてみましょう。

1、ソーシャルメディアポリシーを作成する

まず重要なのが、ソーシャルメディアポリシーの作成です。

ソーシャルメディアポリシーとは、ソーシャルメディアの利用に関する企業の方針や規則のことです。社員がソーシャルメディアを利用する際の行動規範を定めるものです。

ポリシーには、守るべきルールや禁止事項、トラブル発生時の対応方法などを明記します。社員全員に周知徹底し、遵守させることが肝要です。

もし、ソーシャルメディアポリシーが策定していないとなれば、いざ事件が起きてしまった際に、管理体制への責任を厳しく追求されることでしょう。

2、社員研修の実施

次に、社員のソーシャルメディアリテラシーを高めるための研修が欠かせません。

社員のソーシャルメディアリテラシーの向上を図るには、運転免許の更新をイメージしてもらうのが一番です。過去の悲惨な事件・事故の事例を繰り返し学び、何が危険なのか、また、事故が起きると会社や自分がどれだけ大きな損害を被るのか?をイメージさせることが大切です。

社員研修は一度やって終わりではダメです。定期的に開催して、何度も刷り込まないと意味がありません。

3、運用アカウントの管理体制を構築する

企業のソーシャルメディアアカウントの管理体制を整備することも重要です。

ソーシャルメディア運用担当者以外の管理体制が重要なのです。1人に任せきりにせず、複数の目でチェックする体制を作ることが大切です。

また、ソーシャルメディア運用担当者は「パソコンに詳しいから」という理由で任命されるケースが意外にも多いのですが、これは特にデジタル人材の少ない古い業界に多い誤りです。ソーシャルメディア運用で必要なのはパソコンやスマートフォンなどのデバイスに対する知識ではなく、コミュニケーション能力なのです。

4、ネガティブ投稿への迅速な対応方法を考える

炎上や風評被害など、ネガティブな投稿への対応方法を事前に定めておくことも肝心です。

世の中には自分の正義を頑なに信じ、異論があれば反射的に応戦してしまう人も想像以上に多く存在します。ソーシャルメディア担当がそのような人であった実例も多々見かけてきました。しかし、企業アカウントが議論や反論を行うのは基本的に得策ではありません。「企業の公式アカウントなのだから…」と言ってもその手の人にはまったく響かない、理解を得られないというケースがほとんどです。担当者を選定する際には、適正をしっかり見分けましょう。

また、炎上時に最悪なのが、「消して逃げる」という対応です。これはガソリンを撒くようなもので、多くの場合事態をさらに悪化させるだけです。冷静かつ誠実に対応することが肝要ですが、そのためには平時からシミュレーションを重ねておく必要があります。

まとめ

企業にとってソーシャルメディアは諸刃の剣と言えます。適切に活用すれば大きなメリットを得られる一方で、リスク管理を怠れば取り返しのつかない事態を招きかねません。

ソーシャルメディアのリスクを軽視せず、適切な対策を講じることが何より重要です。ソーシャルメディアポリシーの策定、社員教育の徹底、運用体制の整備、トラブル対応の準備など、総合的なリスクマネジメントが求められます。

自動車の運転と同様に貰い事故もあります。100%の安全運用なんて不可能なのです。ソーシャルメディアのアカウントを持っていなくたって炎上対象になる可能性は十分あります。だからこそ、リスクと正しく向き合い、上手に付き合っていくことが、現代の企業には欠かせない課題なのです。

以上、ソーシャルメディア運用のリスク管理について考えてみました。皆さんの企業ではソーシャルメディアのリスクにどのように対処されていますか。ぜひ参考にしていただければ幸いです。

ABOUT執筆者紹介

Webメディア評論家 落合正和

Webメディア評論家/Webマーケティングコンサルタント

株式会社office ZERO-STYLE 代表取締役
一般財団法人 モバイルスマートタウン推進財団 副理事長兼専務理事

SNSを中心としたWebメディアを専門とし、インターネットトラブルやサイバーセキュリティ、IT業界情勢などの解説でメディア出演多数。ブログやSNSの活用法や集客術、Webマーケティング、リスク管理等の講演のほか、民間シンクタンク(日本観光推進総合研究所 所長)にて調査・研究なども行う。

<著 書>
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