07 January

履歴書から「男・女」の選択肢が消えた!企業としてLGBTにどう取り組むか?

掲載日:2022年01月07日   
社会保険ワンポイントコラム

2021年4月に、厚生労働省が、履歴書の「性別欄の男女の選択肢」を廃止した様式例を公開しました。心と体の性が一致しないトランスジェンダー等の人々の要望に応え、性的少数者に配慮した取り組みです。今後多くの企業で活用することが期待されます。

LGBT等社会的少数者に対する差別をなくし、多様性を認める社会に変えていこうという動きが進んでいます。企業としてどう取り組むべきでしょうか。

新様式の履歴書とは?

厚生労働省はこれまで、公正な採用選考を確保する観点から、一般財団法人日本規格協会の様式例に基づき、男女選択欄のある履歴書を使用するように推奨していました。しかし、2020年7月に、トランスジェンダー等を支援する団体から性別欄の削除を求める要望があり、これを踏まえて新たな様式を検討していました。

今回公開された様式例では、性別欄は空欄になっており、注意書きとして「記載は任意です。未記載とすることも可能です」と書かれ、性別欄は任意での記入となりました。なお、「通勤時間」「扶養家族数(配偶者を除く)」「配偶者」「配偶者の扶養義務」の各項目についても設けないことになっています。様式例に基づく履歴書の使用については、法的な拘束力はなく、利用するかどうかは各企業の判断に委ねられますが、今後、多くの企業で、性別欄のない履歴書が使われることが考えられます。

【厚生労働省 履歴書様式例 000769665.pdf (mhlw.go.jp)

LGBTとは?

「LGBT」とは、レズビアン(Lesbian、同性を好きになる女性)、ゲイ(Gay、同性を好きになる男性)、バイセクシュアル(Bisexual、両性を好きになる人)、トランスジェンダー(Transgender、生物学的・身体的な性、出生時の戸籍上の性と性自認が一致しない人)の頭文字をとったものです。「LGBT」は、性的少数者の総称として用いるのが一般的です。

日本において、性的少数者に対する差別は、個人の尊重及び幸福追求権を定めた憲法13条、法の下の平等を定めた14条1項により、禁止されると考えられます。

労働法においては、2017年1月に改正された「セクハラ指針」に、「被害者の性的指向又は性自認にかかわらず、当該者に対する職場におけるセクシュアルハラスメントも、本指針の対象となるものである。」と、LGBT等の性的少数者に対する職場におけるセクハラも、セクハラ指針の対象となる旨が明確化されています。

また、2020年6月に告示された「パワハラ防止指針」においては、性的指向や性自認に関するハラスメントや、本人の性的指向や性自認を本人の同意なく第三者に暴露することもパワハラに含まれることになりました。

企業としてどう取り組むか?

それでは、企業として、どのような取り組みができるでしょうか?
厚生労働省では、「多様な人材が活躍できる職場環境に関する企業の事例集~性的マイノリティに関する取組事例~」を作成しており、参考にできるかと思います。具体的には、以下の取り組みが考えられます。

① 方針の策定・周知や推進体制づくり

ハラスメント対策と同様、企業として「性的指向や性自認にかかわらず、多様な人材が活躍できる職場環境を作る」という方針を明確に打ち出すことは重要といえます。

また、就業規則に、性的志向・性自認に関する差別禁止を明文化することも考えられます。厚生労働省は、モデル就業規則の第3章「服務規律」第15条「その他あらゆるハラスメントの禁止」に、「性的指向・性自認に関する言動によるものなど職場におけるあらゆるハラスメントにより、他の労働者の就業環境を害するようなことをしてはならない。」という規定例を置き、「恋愛感情又は性的感情の対象となる性別についての指向のことを「性的指向」、自己の性別についての認識のことを「性自認」といい、性的指向や性自認への理解を深め、差別的言動や嫌がらせ(ハラスメント)が起こらないようにすることが重要」としています。

② 研修・周知啓発などによる理解の増進

性的少数派の当事者が働きやすい職場環境を作るためには、社員一人一人が性的指向や性自認について基本的な知識を持つことによる理解促進が重要です。研修や周知啓発等の取り組みも必要といえます。

③ 相談体制の整備

性的少数派の当事者は、相談後の影響を考えると誰に相談をすればよいか迷うことがあるかもしれません。相談窓口を設け、対応できるようにしておくと、安心して働くことができるのではないでしょうか。

④ 採用・雇用管理における取組

履歴書やエントリーシートの性別欄をなくす、採用パンフレットに、性的志向・性自認に関する差別がないことや、LGBTの採用も積極的に考えている等の情報を明記する、LGBTの理解・支援・差別禁止についてホームページ等にて明記する、等の取り組みが考えられます。

⑤ 福利厚生における取組

住宅手当の支給、結婚祝い金の支給、慶弔休暇の取得等において、同性婚や事実婚を認める企業もあるようです。

⑥ トランスジェンダーの社員が働きやすい職場環境の整備

トイレの問題は建物の関係もあり、自社だけでの取り組みは難しい場合もあるかもしれませんが、ジェンダーフリートイレを整備したり、多目的トイレを利用して貰う例があるようです。できるだけ、全ての人が心理的な負担のないように配慮が必要です。

また、服装については、自身の性自認の性別での服装を認めている例があります。

⑦ 職場における支援ネットワークづくり

企業内に性的少数者のことを理解し、支援することを表明する人たち(アライ)がいることで、当事者が安心して働きやすい職場づくりに資するために、自発的にアライを表明する従業員を支援する事例があります。

近年の多種多様な課題を解決するためには、性別、国籍、文化等、多様なバックグラウンドを持つ人材がコラボレーションし活躍することは必要だといえます。LGBTに関する対応は、喫緊の課題です。しかし、いくら制度のみを整備しても、当事者が利用等を申し出た後に、職場環境を害され、キャリア形成にも影響し、安心して働けることができなければ意味がありません。まずは、経営層も含めた全従業員の理解が必要不可欠ではないでしょうか。

ABOUT執筆者紹介

松田 法子

社会保険労務士法人SOPHIA 代表

人間尊重の理念に基づき『労使双方が幸せを感じる企業造り』や障害年金請求の支援を行っています。
採用支援、助成金受給のアドバイス、社会保険・労働保険の事務手続き、給与計算のアウトソーシング、就業規則の作成、人事労務相談、障害年金の請求等、サービス内容は多岐にわたっておりますが、長年の経験に基づくきめ細かい対応でお客様との信頼関係を大切にして業務に取り組んでおります 。

原稿提供元株式会社ブレインコンサルティングオフィス「かいけつ!人事労務」
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