26 June

「新型コロナ5類移行」で会社はどのようなことについて考慮すべきか

掲載日:2023年06月26日   
社会保険ワンポイントコラム

令和5年5月8日をもって新型コロナウイルス感染症は感染症法上の位置づけが「新型インフルエンザ等感染症」から「五類感染症」となり、強制的な隔離や入院はできなくなり、受診するかしないかも各人の自由となりました。この状況下で会社はどのようなことについて考慮すべきでしょうか。(この文章は令和5年6月13日時点で手に入る情報をもとに書いています。)

五類になって流行が再燃

感染症法上の一類、二類は危険度の高い感染症で、行政による強制入院措置などがとられます。三類は特定の職業に集団発生する感染症、四類は動物や物などを通してヒトに感染する感染症です。今回指定された五類感染症は、国が発生動向を調査し公開することによって、国民一般の努力で蔓延を防ぐ感染症のことで、HIVや麻疹(はしか)、通常のインフルエンザなどが分類されています。新型コロナウイルス感染症はこの仲間になりました。

さて、五類感染症になってからの一か月に何が起きているでしょうか。まず明らかに流行が再燃しています。しかも検査が有料になったため受けないという人も多く、夏前にはかなりの流行になるのではないかと思われます。ただし、若い人にとってはただの風邪か重い風邪程度にとどまります。一方、基礎疾患のある人や重症で入院が必要な人においてはすでに現段階で受け入れる施設がない県などもでています。つまり、風邪程度の軽症者と、入院難民となる重症者の二極化が始まっているようです。

会社が考慮するべきことー集団感染の予防

こういった状況でまず職場がすべきことは、職場で集団感染の予防です。そのために一番大事なのは、発熱・咽頭痛・咳などといった症状のある社員を出社させない、可能ならば在宅ワークを行わせることです。どうしても出勤しなければいけない場合は、きちんとマスクをして、なるべく他人とは接触せず、できれば公共交通機関を使わずに出退勤するようにしましょう。

もしその方が新型コロナウイルス感染症と判断された場合は、発症翌日から5日間、症状が軽くなってから24時間は自宅待機することが望ましいとされています。またそれを過ぎてからも他人への感染力が完全に消えたわけではないので、7~10日ほどはマスクの着用を義務付けるのが望ましいと思われます。

集団感染予防のカギは換気

3年間のコロナ禍のもと、様々なことがわかってきました。その中の一つは、非常に多くのコロナ感染はエアロゾルを介して移るということです。エアロゾルは微小な飛沫からなり、空気中に1~2時間は漂います。空気がよどんで濃度が濃くなると感染リスクが高くなりますので、換気が非常に大事です。これから暑くなりますが、可能ならば窓を開けるなど、部屋中にくまなく換気が行き渡るようにしましょう。机の周り三方を囲むようにパーテーションを置くとその場所は換気されません。もしもその席の人が感染者だった場合、この場所にはウイルスを含んだエアロゾルが大量に漂っていることになり周りへの感染リスクが高まるので、パーテーションで囲むのはやめましょう。

他の感染ルートは飛沫感染と接触感染です。飛沫感染は口から出た飛沫が直接相手の口や鼻に飛び込んで起きるもので、2mの距離をとっていれば感染のリスクは少なくなります。接触感染はウイルスが机などにくっついて、それを触った人が手を口にやった時などに感染するというルートですが、このルートは少なく、机や階段の手すりなどの消毒にはあまり意味がないと考えられています。

懸念されるlong-COVID

職場で今後問題になってくるのは、long-COVIDと呼ばれる症状でしょう。新型コロナウイルス感染症の後遺症としてあらわれてくるもので様々な症状をとります。作家のブレディみかこ氏は婦人公論での連載で、自身の経験からコロナ後遺症を「プチ認知症」と例えています。記憶の回路が何かによって遮断され、もとに戻らず、締め切りや事務連絡、支払い契約の更新などを忘れる状態が数か月続いたそうです。

これは「ブレインフォグ」と呼ばれる現象です。このほか日本の場合、外出できないほどの非常に強い倦怠感を示す例が多いことがわかってきています。後遺症の予防法や治療法もまだまだ研究途中です。このことを考えると、健康な若者であっても新型コロナウイルス感染症はならないように気を付ける方がいいと言えるでしょう。5類となり治療費は有料となりましたが、ワクチンは現在のところ無料です。現在流行しているXBB系統に対するワクチンの効果は依然流行した株などに比べると弱いと考えられていますが各人の判断で考慮には値すると思われます。

流行状況に合わせて行動しましょう

現在の流行状況を把握し、それに合わせた行動をすることも大切です。例えば宴会を考えます。流行が下火の時に数名の飲み会を行うことはさほど大きなリスクを伴いませんが、流行が極期にあるときに全社を挙げての立食パーティを行うことは大変危険です。

今までは国の方針に半ば盲目的に従っていればそれなりによかったのですが、各人や各会社がその時の状況や会社の形態に合わせて対策を経時的に考えていく必要が出てきました。5類になったことで考えるべきことはかえって増えたとも言えます。

ABOUT執筆者紹介

神田橋 宏治

総合内科医/血液腫瘍内科医/日本医師会認定産業医/労働衛生コンサルタント/合同会社DB-SeeD代表

東京大学医学部医学科卒。東京大学血液内科助教等を経て合同会社DB-SeeD代表。
がんを専門としつつ内科医として訪問診療まで幅広く活動しており、また産業医として幅広く活躍中。

原稿提供元株式会社ブレインコンサルティングオフィス「かいけつ!人事労務」

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