15 December

週休3日制で仕事への意欲が上がるとの調査結果も。具体的な導入方法と注意点とは。

掲載日:2023年12月15日   
社会保険ワンポイントコラム

働き方改革の一環として、「週休3日制」の用語を目にする機会が増えました。最近では自治体でも試験運用がされ、導入が検討されているほどです。Job総研の「2023年 週休3日制の意識調査」によれば、「週休3日制によって意欲が上がる」と回答した割合が88.5%だったほどに、労働者にとっても関心の大きい話題になりつつあります。

そこで今回は、週休3日制の実現方法や注意点・懸念点などを解説していきます。

週休3日制の実現方法① 1日の所定労働時間を長くする

休みを増やす代わりに、その分の労働時間を他の勤務日に乗せる方法です。この方法を導入するためには、1か月単位の変形労働時間制を導入します。本来、法定労働時間は1日8時間、週40時間と決められていますが、この制度を導入することで、週の「平均」労働時間が40時間になれば、1日の労働時間の上限を8時間超にできます。これを利用することで、週休3日制を実現できるのです。以下に例を挙げます。

週休2日

1日の所定労働時間8時間×週の労働日5日間=週の所定労働時間40時間

週休3日

1日の所定労働時間10時間×週の労働日4日間=週の所定労働時間40時間

また、フレックスタイム制を導入することも方法の1つです。フレックスタイム制は、出退勤時刻を個人が選べる制度です。この制度を導入するときには、「必ず勤務する時間帯(コアタイム)」を設定することができますが、このコアタイムを設定しないことで、個人で勤務日も選べる(=週の勤務日数も選べる)制度にすることが可能です。

両者の大きな違いは、会社が勤務時間や出退勤時間を指定できるかどうかです。

これらの方法のメリットは、元の働き方と総労働時間が変わらないため、基本給も変えない運用ができる点です。一方、先ほどの例では時間外労働をせずとも毎日10時間労働になるため、労働者の健康管理により一層力を入れることが求められます。休日労働や時間外労働の管理の強化、産業医面談の機会増加、勤務間インターバル制度の導入等、健康確保の方法も同時に検討しましょう。

なお、1か月単位の変形労働時間制、フレックスタイム制、いずれも、導入の際には就業規則への必要事項の記載と、労使協定の締結等が求められます。

週休3日制の実現方法② 1日の所定労働時間を変えない

単純に休日を増やし、週の労働時間を減らすことも可能です。この方法をとる場合、さらに、労働時間が減った分基本給を減らすケースと、基本給を変えないケースに分かれます。

週休2日

1日の所定労働時間8時間×週の労働日5日間=週の所定労働時間40時間

週休3日

1日の所定労働時間8時間×週の労働日4日間=週の所定労働時間32時間

単純に休日を増やすだけなので、制度としてイメージしやすく、導入も簡単なように思えるかもしれません。しかし、実は労働者へのマイナスな影響が多く、注意点の多い方法です。

まず、週休3日制にした結果、週の所定動労時間が30時間未満になってしまうと、年次有給休暇は通常付与ではなく比例付与の対象になり、付与日数が少なくなります。社会保険や雇用保険の加入条件も満たさなくなる可能性もあります。特に基本給が減ることは、労働者に与える影響が大きいことは想像に難くありません。実際に、Job総研の「2023年 週休3日制の意識調査」によれば、「週休3日制で1日の労働時間が増える場合の賛否」は賛成派が60.6%・反対派が39.4%に対し、「週休3日制で収入が減る場合の賛否」は賛成派が29.7%・反対派が70.3%と、圧倒的に反対派が多いことがわかります。

これらはいずれも労働条件の不利益変更にあたります。そのため、この方法で週休3日を実現するためには、原則労働者の個別合意が必要です。1日の労働時間を減らさずに週休3日を実現する場合には、影響範囲の確認と丁寧な説明が求められます。

いかがでしたか。週休3日制と一言で言っても、実現方法は様々です。今は大企業を中心に導入が始まっている制度ではありますが、多様な働き方を実現するために、選択肢の1つとして知っておいて損はありません。

休日が増えることでコミュニケーション不足を懸念する企業も多いですので、社内・社外のどちらにも理解を求め、業務が止まらないような仕組み作りも同時に行うと効果的です。週休3日制は全社員ではなく一部のみの導入や、月1回や隔週からの導入も可能ですので、まずは試験導入から始めることを推奨します。

ABOUT執筆者紹介

内川真彩美

いろどり社会保険労務士事務所 代表
特定社会保険労務士 / 両立支援コーディネーター

成蹊大学法学部卒業。大学在学中は、外国人やパートタイマーの労働問題を研究し、卒業以降も、誰もが生き生きと働ける仕組みへの関心を持ち続ける。大学卒業後は約8年半、IT企業にてシステムエンジニアとしてシステム開発に従事。その中で、「自分らしく働くこと」について改めて深く考えさせられ、「働き方」のプロである社会保険労務士を目指し、今に至る。前職での経験を活かし、フレックスタイム制やテレワークといった多様な働き方のための制度設計はもちろん、誰もが個性を発揮できるような組織作りにも積極的に取り組んでいる。

原稿提供元株式会社ブレインコンサルティングオフィス「かいけつ!人事労務」

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