積極的な子育てサポート体制を目指そう!子育て支援企業認定制度「くるみん」「プラチナくるみん」「トライくるみん」について
中小企業おすすめ情報
はじめに
このコラムをご覧頂いている人事担当者の方は、子育て支援企業認定制度「くるみん」「プラチナくるみん」という認定をご存知の方も多くいらっしゃると思います。
しかし、認定制度の存在は知っていても「内容についてはよく分からない」という方が多いかもしれません。というのも、総務省統計局の公表に基づき正直にお伝えすると、現在日本にある企業数(民営事業所数)は639万8912事業所(2019現在)ありますが、くるみん認定(プラチナくるみん認定を含む)を受けている事業所数は、たった3787社(2022年2月末現在)しかありません。
この数値から読み取れるように、これまではかなりマイナーな制度でしたが2021年10月より認定企業向けの助成金制度が始まったことを受け、この認定制度に対する企業の関心が高まっています。
今回は、くるみん助成金の概要の他、2022年4月に改正施行された「くるみん」「プラチナくるみん」の他、新設された「トライくるみん」の認定基準について解説します。
くるみん認定制度とは?
くるみん認定制度は、簡単に言うと、「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣の認定を受けた証です。
次世代育成支援対策推進法により、日本の社会や経済に深刻な問題である少子化に対処する「一般事業主行動計画」を策定し届け出することが義務づけられことに伴って始まった制度です。
その後も時代背景の変化と共に改正され、くるみん認定を既に受けた企業に対し継続的な取組を促進するため、新たに「プラチナくるみん」認定が追加されました。
そして2022年4月に「くるみん」「プラチナくるみん」に加え、新たな認定制度「トライくるみん」が創設されました。
くるみんの名称の由来について
赤ちゃんが大事に包まれる「おくるみ」と、「職場ぐるみ・会社ぐるみ」で子供の育成に取り組もう、という意味に加え、子どもが優しく“くるまれている”というあたたかい印象と、会社“ぐるみ”で、仕事と子育ての両立支援に取り組むこと。これらの考えから、“くるむ”⇒“くるみ”⇒“くるみん”という愛称が付けられました。
認定によるメリットと、くるみんマークを受ける為の具体的な方法とは?
企業がくるみんマークの認定を受けると、商品・広告・求人広告・取引に用いる書類・事業所などにくるみんマークを表示することができるようになります。その為、顧客から取引先、仕事を探している求職者に対して、子育てサポート企業であることを対外的にアピールすることができるようになります。また、税制優遇措置もあり、取得、新築、増改築をした建物やその附属設備の普通償却限度額に対して、32%の割増償却が可能になります。
くるみん認定を受けるためには、次世代育成支援対策推進法の「一般事業主行動計画」の策定・実施等の一定基準を満たした企業が申請できます。この申請に向けてまず行わなければならないのが、子育て支援の取り組みに対する自社の現状把握です。そして、仕事と子育ての両立をしやすい雇用環境の整備の為の行動計画の策定です。
現行の一般事業主行動計画は、常時雇用する労働者が101人以上の企業に対して策定・届出が義務付けられています。(100人以下の企業では努力義務)
その他、認定までの詳しい流れと手順は下記のURLをご覧ください。
2022年4月1日施行「くるみん」「プラチナくるみん」認定基準の改正点と「トライくるみん」の創設
「くるみん」「プラチナくるみん」の新たな認定基準については、上記のURLよりご確認いただけますが、ここでは2022年4月から改正となった主な変更点のみピックアップしておきましょう。(ただし、経過措置として2022年4月1日から2024年3月31日の間の認定申請は、変更前の水準でも認定基準を満たすこととされます。)
くるみん認定基準の変更点
① 男性の育児休業等の取得に関する基準が改正されます。
② 認定基準に「男女の育児休業等取得率等を厚生労働省のウェブサイト「両立支援のひろば」で公表すること」が新たに加わります。
プラチナくるみん認定基準の変更点
① 男性の育児休業等の取得に関する基準が改正されます。
② 女性の継続就業に関する基準が改正されます。
改正前:55% → 2022年4月1日以降:70%以上
これらの改正点から、より積極的な子育てサポート体制の構築をする必要性を知ることができます。そして新たに創設された「トライくるみん」は、改正前の「くるみん」認定基準と同様の内容であり、これから認定に向けてチャレンジする企業にとって、入門編としての制度が創設されました。
<「くるみん」「プラチナくるみん」認定企業が活用可能!上限50万円の経費助成「くるみん助成金」>
くるみん助成金は、従業員に対する育児休業等の取得促進等の子ども・子育て支援事業を実施する企業に対し、事業実施に要する経費を対象に助成金を交付する制度です。くるみん認定もしくはプラチナくるみん認定を受けていることを要件とし、従業員への両立支援策として以下の取り組みを行う企業が申請できます。
- 労働者の育児休業等の取得を促進するための取組
- 労働者の子育てを支援するための取組
- 労働者の業務負担の軽減や所定外労働の削減などを図るための取組
- その他労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために必要な取組
助成額は上限50万円の経費助成です。(助成対象となる経費の一例)
- 育児休業などを取得する労働者の業務を代替する労働者の確保(くるみん認定に係る行動計画の計画期間中に 確保した労働者を含む)や、代替業務に対応した賃金(業務代替手当、特別業務手当等)の支払いなど
- 育児休業等の制度に関する周知(パンフレット等の作成)や、制度の普及・啓発のための研修・セミナーの実施など
- 育児休業取得者の職場復帰時の支援など
- 所定外労働の制限、短時間勤務制度やフレックスタイム制度等の制度の導入・周知(パンフレット等の作成) や、制度の普及・啓発のための研修・セミナーの実施など
- 労働者のための事業所内保育施設の設置・運営など
- 労働者が利用した子育てサービスの費用の補助など
- 労働者の業務負担の軽減や所定外労働の削減などを図るための労働者の確保(くるみん認定に係る行動計画の 行動計画中に確保した労働者を含む)など
- 「ノー残業デー」や「ノー残業ウィーク」等の制度の導入・周知(パンフレット等の作成)や、所定外労働の 削減に向けた措置、職場内の意識啓発のための研修・セミナーの実施など
- 在宅勤務やテレワーク(ICT を活用した場所にとらわれない働き方)等の制度の導入・維持するための機械及び 器具等の購入やランニングコストの支払いなど
- 業務の効率化・省力化を図るための機械及び器具等の購入やランニングコストの支払いなど
- 年次有給休暇の取得促進のための取組など
- コンサルタントを活用した職場環境の改善のための取組など
- 女性労働者の就業継続やキャリア形成の支援のための取組など
- その他労働者の職業生活と家庭生活との両立を図るための職場環境の改善や労働者の処遇改善に直接的に資する各種の取組
詳細は下記の「くるみん助成金ポータルサイト」よりご確認いただけます。
さいごに
子育てサポートへの取り組みは、今後ますます深刻化する働き手不足への対策として、より重要度が高まってきています。今回紹介した各種くるみん認定の他、くるみん助成金を活用することで、将来的に御社に有能な人材が集まる基盤を作り、それが御社の継続的な事業発展に繋がる礎となるとよいですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ABOUT執筆者紹介
中山卓
社会保険労務士 キャリアコンサルタント 社会福祉士 保育士
社会保険労務士法人オフィスALPACA 代表社員
株式会社エンパワーメント・ジャパン 代表取締役
一般社団法人さくらキャンプ 代表理事
静岡県三島市出身。静岡県東部の会計事務所にて、主に福祉関係の顧問先を数多く担当。2013年より障害福祉事業に特化した社会保険労務士事務所として独立開業し、北は北海道、西は九州まで、オンラインと対面によるサポート体制により、全国の顧問先約200社超。2017年より放課後等デイサービス『さくらキャンプ』を立ち上げ、発達に課題を抱える児童の通所支援事業にも携わる。また、社会保険労務士による日本初の法律系ロックバンドWORKERS!のリーダーとしても活動中。「ロックで伝える社会保険」をテーマに社会保険、労働法をわかりやすく伝えるための活動を行っている。
社労士バンドWORKERS!と弁護士倉重公太朗氏と法政大学キャリアデザイン学部松浦ゼミの学生たちとのコラボ企画により「キャリア自律の歌 制作プロジェクト」が目下進行中。現在、法政大学大学院キャリアデザイン学研究科在学中。
社会保険労務士法人オフィスALPACA
株式会社エンパワーメント・ジャパン
一般社団法人さくらキャンプ
社労士バンドWORKERS! オフィシャルWEBサイト
[democracy id=”211″]