手作り食品を売るのに必要な手続きは?無許可販売のペナルティも解説
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「クッキーやパンを手作りするのが趣味」という主婦はめずらしくありません。中には趣味が高じて、作ったお菓子やパンを売ろうと考える人もいるでしょう。注意したいのが「食品を売るときの免許」です。何も手続せずに販売すると、思わぬ罰金を払うことになるかもしれません。今回は、手作り食品を売るときに必要な手続きと無許可で販売したときのペナルティを解説します。
食品販売には原則「営業許可」が必要…なぜ?
お菓子やパンをはじめ、手作りした食品を売るのなら営業許可が必要です。なぜ必要なのでしょうか。それは、買った人の健康に影響を及ぼす可能性があるからです。
手作りした食べ物には、作る本人の状況や作るときの環境が影響します。もし作った本人が手を洗わずに食品を触っていたり、病気の状態で作っていたり、あるいは、作るときの台所が不衛生だったりすれば、作った食べ物に雑菌が入る可能性があります。食べて食中毒になるかもしれません。
そういったことが生じないよう、手作り食品の販売は許可制度となっています。事前に売りたい本人に「手作り食品を売りたいです。こういう状況で売ります」といった申請をさせ、管轄の保健所が「こういう条件なら衛生上も問題がない」と認めたら、はじめて手作りのお菓子やパンを販売してよいこととなっているのです。
食品販売で営業許可が必要な業種・届出が必要な業種・何もいらない業種
ただ、すべての食品販売に営業許可がいるわけではありません。営業許可が必要な業種とそうでない業種があります。また営業許可は不要でも、届出の必要な業種があります。
営業許可が必要な業種
食品販売にあたり、営業許可が必要なものは様々あります。食品衛生法では、次のように定めています。
手作りしたお菓子やパンの販売は「菓子製造業」に当たります。処理業や販売業など「手作り」とは言えないものもありますが、販売までのプロセスにおける衛生面から「営業許可」という形にせざるを得ないのです。
上記業種については、事前に管轄の保健所に申請書と必要書類を提出します。施設の基準が満たされていることなどが確認された上で許可をもらわないと営業できません。
なお、申請には手数料がかかります。定期的に免許の更新もしなくてはなりません。
営業許可は不要だが届出が必要な業種
上記に当てはまらなければ営業許可は不要です。ただ、それでも事前の届出が必要な業種があります。東京都だと、次の業種が届出の対象となります。
届出は行政機関へのお知らせのようなものです。そのため、管轄の保健所からの返事を待つ必要はありません。手数料もかかりません。
ただ、住所など届出事項に変更があったら、その都度届出が必要です。また、食品衛生管理者の設置などもしなくてはなりません。
営業許可も届出もいらない業種
こういった営業許可も届出も一切せずに食品販売できる業種もあります。次の通りです。
こういった業種は食品に手を加えずに販売できます。また、保管方法に関係なく衛生環境を保つことが可能です。こういった理由から許可も届出もなく販売可能となっています。
食品販売の営業許可の申請から許可が出るまでの流れ
ここで、食品販売の営業許可の申請から許可までの流れを見てみましょう。東京都で手作りお菓子を販売するケースの例を取り上げます。
1.営業が必要な業種かどうかを保健所に確認
先ほどお伝えした通り、食品販売でも必要な手続きが異なります。管轄の保健所に連絡し、「自宅で菓子を作って販売したい」と伝えて必要な手続きについて教えてもらいましょう。写真や製造工程などの資料を用意しておくと親切です。
なお、東京都の場合、管轄の保健所はやや複雑になっています。
【参考】東京都の保健所一覧
2.食品販売に必要な設備について保健所から指導してもらう
手作り菓子の販売で許可を受けるにあたり、たいていは改装が必要になります。一般の住宅のキッチンは、営業許可の基準に適合していないことが多いからです。基準に合わせるための工事について、細かく相談します。
3.営業許可の申請
工事が完了したら、申請書類一式と手数料を用意して申請します。必要書類は「食品関係営業許可申請の手引き(東京都)」を見ながら準備するとよいでしょう。申請内容に不備がなければ受理されます。
4.調理現場の立ち合い検査
食品営業許可には、調理現場の検査が必要です。指定された日に、保健所職員が現場に行って検査します。検査後、職員から確認と指導を受けた後、営業許可の可否がその場で伝えられます。口頭で営業許可が下りた時点で、手作りお菓子の販売は可能です。
営業許可証の交付
検査から数日後、営業許可証が交付されます。許可証は、営業場内の見やすい場所に掲示しましょう。
食品販売の営業許可申請に必要な書類・手数料
営業許可の申請に必要な書類や手数料は次の通りです。ここでは東京都を例にします。
- 営業許可申請書・営業届
- 施設の構造及び設備を示す図面
- 食品衛生責任者の資格を証明する書類等
- 水質検査成績書(集合住宅やビルのテナントで営業し、水道が建物の貯水槽から供給される場合などに必要。戸建てで水道を使っている場合は不要)
- 登記事項証明書(法人の場合)
- 許可申請手数料(東京都の菓子製造業の場合16,800円)
無許可で食品販売したときのペナルティ
営業許可が必要であるにもかかわらず、食品を販売してしまうと、ペナルティが科されます。2年以下の懲役か、200万円以下の罰金です。 このほか、販売した食品を食べた人が食中毒になると、損害賠償を請求されることもあります。思わぬ事態を防ぐためにも、準備はきちんと行いましょう。
ABOUT執筆者紹介
行政書士 鈴木良洋
1974年生まれ。1996年行政書士試験合格、1998年中央大学法学部政治学科卒業。2002年行政書士登録。建設業、司法書士事務所、行政事務所勤務を経て2004年独立開業。20年超、外国人の在留手続を専門に外国人の起業・経営支援を行う。これまでの取扱件数4000件超。元ドリームゲートアドバイザー。