14 June

パナソニック創業者が採用面接で聴いた質問とは?

掲載日:2024年06月14日   
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誰もが知っているパナソニックという会社。この会社の創業者が松下幸之助さんです。筆者が就職する40年前は、松下電器産業という社名でした。当時は大阪府の門真市が拠点でした。松下翁は、会社経営にとどまらず、1946年には「Peace and Happiness through Prosperity」のスローガンを掲げてPHP研究所を創設したり、未来のリーダーを育成するため1979年に松下政経塾を設立されたりしました。特に、松下政経塾からは野田佳彦元首相をはじめとする国会議員や県知事など多くの政治家などを輩出しています。

松下翁は1894年(明治27年)和歌山県で生まれ、尋常小学校を4年生で中退して大阪の火鉢店や自転車店で丁稚奉公に出ています。その後、大阪電燈(現在の関西電力)に勤務。1918年(大正7年)23歳のときに松下電器器具製作所を創業されています。その後は、紆余曲折はあったにせよ、日本の経済成長と軌を一にして「天下の松下電器」へと成長させました。その松下翁の口癖は「成功したのは運が良かったから」「3つがなかったお陰」。3つとは「学歴がなかった」「家が貧しかった(落ちぶれた)」「体が弱かった」。学歴がなく知識もなかったから、どんな人の話も謙虚に聴くことができた。家が貧しい経験があったから無理な経営はしなかった。

ただ、松下翁の頭を常に悩ませたのが「人」の問題でした。事業の拡大に合わせて従業員を増やしていかねばなりませんが、創業間もない町工場においそれと高学歴、手に職を持った優れた人材が来てくれるはずもありません。松下翁は、運よく採用できた人が今日も来てくれるだろうかと、毎朝工場の前で出勤者を出迎えていたそうです。それ以来、人材育成に心を砕き、その結果、名だたる大企業に伍して事業を発展させることができたのです。

このように、松下翁といえども、人材育成や人を活かす難しさから解放されることはありませんでした。行き着いた答えは、「従業員の良いところを見つけて育てる」こと、これしか会社が伸びる道はない、ということでした。松下政経塾を設立したのも、そう考えると腑に落ちます。また、人を採用するときは、「運」「愛敬」「勉強」「説得力」のある人を採用するようにしていたそうです。

「説得力」…信念が強ければ説得力がある。志が強ければ説得力が生まれる。自分はこうしたいという強い思いを持っていることが大事である。 

「勉 強」…新しいものにキャッチアップする必要があるので、勉強し続けられることが大事である。

「愛 敬」…誰からも好かれた方が良いから、愛敬があった方が良い。ただ、何かしようとすると、困難、課題、問題が山ほど出てくるから、愛敬というのは、そのときに笑顔でいられるかどうか。

「運」………本当に運が良いか悪いかはわからない。しかし、「自分は運が強い」と自分に言い聞かせていることが最も大事である。

とりわけ、「運」の良し悪しで採用の合否を決めていたのは事実のようです。ただし、誤解しないでいただきたいのは、単なる運不運というより、「運の良さを自認していること」を重視していた点です。少し、「運」について考えてみましょう。

  • 運の良い人は物事をポジティブに捉え、ストレスに強い
  • 運の良い人は失敗を外部環境のせいにせず自らが成長していく
  • 運の良い人は自らの行動によって幸運をつかみ不運を回避する
  • 運の良さは心がけと行動が導く

筆者は、松下翁はこのように考えていたのではないかと思っています。まず、運不運はその捉え方に差異があることが多く、相対的なものです。ある出来事を「運が悪かった」という人もいれば、「運が良かった」という人もいるわけです。後者は出来事をポジティブに解釈しているわけですが、そのように捉える人の方が当然ストレスを感じにくく、困難な状況でも打ち勝つ可能性が高くなると思います。また、仕事がうまくいかなかったとき、その原因を不運だったと考える人は自分以外の外部環境に原因を求めがちです。

やはり、仕事が失敗した現実を直視して、自分の言動による必然的な結果だと受け止めて、改善・成長させていく意志の強い人が運の良い人と言えるでしょう。さらに、運の良い人は様々な場面で幸運を発見して自分のものにし、不幸を回避する能力に長けています。運命は変えられないにしても、出来事へ対処する行動は自ら選択できるのです。最後に、運の良さは相対的なものです。感じ方と行動によって運の良さは作ることができると言ってもよいでしょう。

このように、松下翁は単なる運不運を人に求めたのではなく、運を誘う行動や考え方をしている人材を求めるため、「あんさんは運がよろしいですか?」と採用面接で聴き続けたのではないでしょうか。運不運というのは、誰しもに平等に起こることだと思います。その運不運を活かすも殺すも人それぞれです。主体的にかかわっていくことが肝要なのではないでしょうか。

参考文献

「人事万華鏡」松下幸之助(PHP研究所)
「決断の経営」松下幸之助(PHP研究所)
「運のいい人の法則」リチャード・ワイズマン(角川書店)

ABOUT執筆者紹介

大曲義典

株式会社WiseBrainsConsultant&アソシエイツ 代表取締役
大曲義典 社会保険労務士事務所 所長

関西学院大学卒業後に長崎県庁入庁。文化振興室長を最後に49歳で退職し、起業。人事労務コンサルタントとして、経営のわかる社労士・FPとして活動。ヒトとソシキの資産化、財務の健全化を志向する登録商標「健康デザイン経営®」をコンサル指針とし、「従業員幸福度の向上=従業員ファースト」による企業経営の定着を目指している。最近では、経営学・心理学を駆使し、経営者・従業員に寄り添ったコンサルを心掛けている。得意分野は、経営戦略の立案、人材育成と組織開発、斬新な規程類の運用整備、メンヘル対策の運用、各種研修など。

原稿提供元株式会社ブレインコンサルティングオフィス「かいけつ!人事労務」

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