09 September

サステナブルなエコ名刺&キャンピングレンタカー事業、北海道から世界を見つめる印刷会社の歩みとは

掲載日:2024年09月09日   
みんなの経営応援通信編集部

SDGsという単語が浸透し始めた現在、ビジネスにおいても環境保護や社会貢献という視点が重要性を増しています。消費者は製品の背後にあるストーリーにこそ価値を見出し、「モノからコトヘ」という価値観の転換が起こっています。

今回は、そんなSDGsの先駆けともいえる、サステナブルな事業を手掛ける企業にお話をお伺いしました。バナナの茎で作った紙を利用した「エコ名刺」事業を手掛ける丸吉日新堂印刷株式会社、およびキャンピングカーレンタル事業を営む北海道ノマドレンタカー株式会社の代表取締役・阿部 晋也様に、これまでの歩みを語っていただきました。

バナナの茎から「エコ名刺」ができるまで

丸吉日新堂印刷の歩み

丸吉日新堂印刷株式会社は40年以上の歴史があり、当初は手書きの複写伝票をメインに取り扱っていました。しかし、パソコンが普及して手書き伝票の需要が衰退したので、名刺通販を事業のメインに据えました。

ごく普通の名刺ではなくて付加価値をつけたサービスを提供したい、という想いから、初めはペットボトルの再生名刺を手掛けていました。しかし、再生用ペットボトルの海外流出などでメーカーが撤退し、事業が行き詰まってしまいました。

そんな時、ペオ・エクベリ氏と出会ったのです。彼はサスティナブル先進国のスウェーデン出身で、ザンビアの貧しい人々の雇用創出のためにバナナの茎から紙を作るという画期的なプロジェクトに取り組んでいたのです。

バナナペーパーができるまで

ザンビアではバナナ栽培が盛んですが、茎の部分はこれまで使い道がなく廃棄していました。この茎から紙を作ることができれば、新しいビジネスが生まれて、ザンビアの人たちの収入となり、生活も潤います。それにザンビアのバナナ栽培は農薬を使わないオーガニック農法ですから、その紙は環境にも優しくて一石二鳥というわけです。

私はこの取り組みに深く感銘を受けて、エクベリ氏と一緒にプロジェクトに取り組みました。試行錯誤の繰り返しで苦労しましたが、なんとか形にすることができました。バナナペーパーの製品化にあたっては、日本の「越前和紙」の技術が活かされています。栽培の段階だけではなく、生産工程でも化学薬品を使っていないため、環境に優しいオーガニック製品なのです。

バナナペーパーは現在、日本初のフェアトレード認証繊維を使った紙として、多くの印刷会社で取り扱われています。また、全国30社以上の企業によって、バナナペーパー商品を広めるための『ワンプラネット・ペーパー協議会』を設立しました。現在は、私が会長を務めています。日本でもこの意義ある活動が広がって、嬉しい限りですね。

お客様や各所からのご反響は?

バナナペーパーを使ったエコ名刺は注目され、地元の新聞など、いくつかのメディアから取材を受けました。口コミで徐々に広がっていって、今は評判を聞いて新規で申し込んでいただくお客様も数多くいらっしゃいます。

最近は、若いビジネスパーソンや個人事業主など、エシカルな生活を求めている方からのリピートが多いですね。「エコ活動を始めたいけれど何から始めたらいいのかわからない」という方に、その第一歩としてエコ名刺を導入していただくケースも増えています。

名刺は人との出会いをつなぐものですから、エコを反映した製品を使うことで、話題作りのきっかけにしたり、自らの価値観を話すこともできます。そういったコミュニケーションツールとしての側面も、「エコ名刺」が提供する付加価値だと考えています。

「販売王」とは30年の付き合い!

「販売王」導入のきっかけ

「販売王」を弊社に導入したのは約30年前です。当初は私一人で会社経営をしており、営業・納品・集金・経理などすべて一人でやっていまして、毎月月末は請求書の手書きと郵送準備で2日ほどかかっていました。今考えると、すごい事をやっていましたね……。

Windows95が出た時、これからは間違いなく業務の電子化が必要だと感じ、他社も含めて業務ソフトの資料を取り寄せて比較検討した結果、高額な保守やメンテナンスが必要な他社よりも、費用的な問題もクリアできる「販売王」が良いと判断しました。請求書は毎月100~150枚程度発行していますが、全て「販売王」で対応しています。

「販売王」のメリットは?

「販売王」で一番助かっているのは、納品書の中に売上げ単価と仕入れ単価が入力でき、粗利率がすぐ計算できる点ですね。実は、一時期クラウド対応の製品に惹かれて、同時並行で使用していた時期がありました。けれど、その他社製品は売上げ単価と仕入れ単価の入力ができなかったので、結局は不便さを感じて「販売王」に戻りました。それからはずっと「販売王」を使い続けています。

インボイス対応についても、登録番号記載など、特に問題なく進んでいます。ただし、弊社には法人個人両方のお客様がいて、新規の取引も少なからず発生するので、インボイス対応をどうしているのかを毎回確かめなくてはならず、業務が煩雑になっています。もっと効率化したい、というのは悩みの種ですね。

キャンピングレンタカー事業への新たな挑戦

印刷業から別領域への参入を模索

デジタル化がさらに進めば印刷業は衰退し、紙に印刷する行為が急激に減っていくという危機感を抱いています。そのため、パンフレットなどネット印刷で格安にできるものからは撤退し、これから伸びるであろう観光事業に新しく参入しました。

それが、北海道ノマドレンタカー株式会社を別途設立して、2016年に始めたキャンピングレンタカー事業です。北海道を訪れたお客様に高級キャンピングカーを貸し出し、自由で快適な旅行を楽しんでいただくサービスです。こちらが大反響をいただいており、夏休みのハイシーズンには4~50台の車が全てレンタルされるほどなんですよ。

ニュージーランドに着想を得た新規事業

なぜ印刷会社がキャンピングカー事業を始めたのか?とよく尋ねられます。実は、私がニュージーランドやアメリカで、キャンピングカーの普及を目にしたのがきっかけでした。日本ではキャンピングカーはまだまだ珍しい存在ですが、それらの国では非常に一般的で、専用のキャンプ場もあるくらいなんです。

実は、ニュージーランドは北海道と景色が似ていて、類似点も多い。それで「ニュージーランドで人気なら、北海道でも人気になるのでは」という着想で、思い切って事業を始めました。

北海道は広々とした土地で移動が大変ですから、快適に移動できて車中泊も可能なキャンピングカーはコスパも良くて便利です。電車やバスなどの移動手段と違って、周りの目を気にしなくてよいので、小さなお子さんがいる方も安心して利用できます。またホテルの予約に日程を縛られることもなく、柔軟に予定を変更できる強みもあって、旅の選択肢として選ぶ方が増えてきています。

インバウンドを軸にさらなる事業拡大を

キャンピングレンタルカーの繁忙期はGWや夏休みですが、冬季もスキーやスノーボードを目的に訪れる方が数多くいらっしゃいます。お客様は20代30代が中心で、ファミリーやカップル、友達同士で訪れる方が大半ですね。弊社でのレンタルがキャンピングカー初体験という方も珍しくありません。

また円安の追い風も手伝って、台湾や香港など全体の7割が海外からのお客様です。弊社では台北のYoutTuberとコラボしてキャンピングカーの動画を上げるなどのPR活動も行っていまして、それを見た方が興味を持って訪れるという好循環が作られています。日本のお客様は、ポータルサイトをご覧になって訪れる方が多いですね。

キャンピングカーが注目を集めるにしたがって、同業者も増えていますので、その中で選び続けていただけるように語学対応を進めています。現在も英語・中国語が話せるスタッフが在籍していますが、海外のお客様に快適にご利用いただけるよう、この点にはもっと注力していきたいですね。

自由な働き方を推奨する職場

「北海道ノマドレンタカー」という社名に遊牧民を意味する「ノマド」という単語を付けたのは、自由な働き方を推奨したいと考えているからです。弊社は基本的に週4~5回の交代勤務制で、子育て中の主婦の方も多く在籍しています。

他にも子供の学校行事やプライベートを優先して、勤務時間を柔軟に変更したり、気軽に休暇を取れるような職場環境を構築しています。それに月一回のランチ会や、弊社で運営しているプライベートサウナ付きコテージでのBBQなど、スタッフ同士の交流も盛んに行っています。

北海道から世界を見据えて

若い頃から海外を訪れる機会が多かったので、様々な面で「日本は遅れている」と感じることが多いですね。たとえば海外では広く使われているUber Taxiが、日本では様々な規制に阻まれて上手くいかなかった点など、その典型例ではないかと思います。

日本ではルールの壁に新規事業が阻まれた時、ルールが優先されてイノベーションが阻害されがちです。もちろんルールは大切ですが、新しいことへ挑戦していかないと、世界から取り残されてしまうのでは、と危機感を抱いています。

弊社は小さな会社ですが、バナナペーパーの開発・普及に携わったり、海外に着想を得てキャンピングレンタカーサービスを取り入れたりと、常に世界へ目を向けています。

世界の人と人をつなぐ事で、皆が幸せになれる社会を作って世界平和の一助になりたい。ちょっと大げさかもしれませんが、それが会社全体で目指している目標であり、原動力でもあります。その目標に向かって、これからも挑戦を続けながら進んでいく所存です。

取材を終えて

「エコ名刺」とキャンピングレンタカー、その一見全く違う事業の根底には、グローバルな視点という共通点がありました。SDGsやサステナビリティが広まる前に、バナナペーパーに目を向けていた先見性も素晴らしいです。阿部さんは終始熱を込めて話されていて、今後も様々な分野で新しい可能性を切り開いていくのだろうと、そう感じさせられるインタビューでした。(インタビュー担当)

ご協力いただいた会社

会社名 丸吉日新堂印刷株式会社・北海道ノマドレンタカー株式会社
設立 丸吉日新堂印刷株式会社/1982年
北海道ノマドレンタカー株式会社/2016年
所在地 北海道札幌市豊平区平岸6条12丁目11−2
ホームページ 丸吉日新堂印刷株式会社 https://www.nissindou.co.jp/
北海道ノマドレンタカー株式会社 https://nomad-r.jp/
電話番号 丸吉日新堂印刷株式会社/0120-389-636
北海道ノマドレンタカー株式会社/0123-21-8572
事業内容 丸吉日新堂印刷株式会社/各種エコ素材名刺製造・販売、印刷業務全般・デザイン・企画・制作
北海道ノマドレンタカー株式会社/キャンピングレンタカー事業
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