あなたの知らない領収書の世界~「不正の香り」がする領収書編~
税務ニュース
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領収書神話がまかり通っている現状を前回のコラムではご紹介させていただきました。意外(?)と好評のようなので、今回はその続きです。今回は、だれもが気になる“不正の香り”がする領収書編です。領収書の不正といっても様々なものがありますが、世の中には不正とはいかないまでもグレーゾーンというものが存在します。果たして領収書の世界ではどうでしょうか?
白紙の領収書について
最初に登場するのが、白紙の領収書です。白紙の領収書というよりも、“からの領収書”と表現した方が一般的かもしれません。白紙領収書とは説明するまでもなく、宛名、日付、金額が記載されていない領収書のことをいいます。
なぜ店側は、白紙領収書をくれるのか?
お店は白紙領収書の内容を受け取った相手に自ら書いてもらうことによって、自分たちの手間を省くという意図があるのかもしれません。さらには、渡した相手に好きなように書いて会社で精算して、税務署対策としても使ってもらうというかなり余計なサービス精神もいくらかあるように感じます。
例えば、本当に支払った金額が10,000円だとして、これを50,000円と記載して会社で精算すると40,000円その精算者は得をすることになります。これは不正の香りがするというより、完全に不正です。会社に対しては横領ということにもなります。また、会社は40,000円余計に経費を計上できるので、40,000円に税率をかけた税金分だけ税金を低くすることができるのです。もちろんこれは脱税になり、絶対にやってはいけない行為です。また、白紙領収書を使った不正は税務調査では意外と簡単にばれてしまうものです。白紙の領収書をもらえるところは、ある程度限られますので、同じ店が頻繁に出てくることが多いのです。税務調査ではそこを狙われます。
不正をしようとする人は一度に大きな金額を得しようと考えるものですので、その領収金額が大きくなる傾向があります。ただし、印紙代は支払いたくないし、印紙を貼付した領収書の作成は罪悪感が大きいので印紙がかからない範囲の50,000円未満で作成するのがほとんどです。つまり、何度も同じ名前が出てくる領収書で金額が比較的大きいけれども50,000円未満の領収書の精算については、不正の香りがするので、会社の経理担当も要注意です。
領収書を発行する側としては、白紙領収書は絶対に渡さないでください。白紙の領収書を渡すこと自体は脱税行為ではありませんが、税務署からみると売上管理が甘い会社とみられます。さらに、白紙で渡した領収書に実際受け取った金額よりも大きな金額を書かれて使用された場合、相手の会社に税務調査が入ったとしたら、どちらの主張が正しいかでトラブルになるケースもあるのです。余計なトラブルを避けるという意味でも、白紙領収書は渡さないことです。
コピーされた領収書について
次にコピーされた領収書についてです。こちらも不正の香りがする領収書の代表です。特に最近ではカラーコピーの精度が上がっているため、簡単に領収書のコピーを作成することができます。当たり前の話ですが、領収書はお金を支払ったことの証明です。領収書がコピーされて何枚も出回ってしまうことを想像すると、領収書のコピーの証拠力は小さいといえます。つまり、税務署や会社の経理担当者から疑いの目を向けられる可能性が高いということです。現在でも領収書を含む証憑書類の保管は紙による原本保管が原則となっています。原則はあくまで紙による原本保存なので、コピーではなく原本での保存をしなければなりません。やむを得ず領収書のコピーをする場合には、必ず「複写」である旨の記載をしておくことでどれが原本なのかをわかるようにしておく必要があります。そもそも電子帳簿で保存している領収書については、改正税法ではその原本の保管義務はないとされたため原本という存在は以前ほど重要ではなくなっているのも事実です。しかし、それはあくまで例外的な措置でタイムスタンプが必要など厳格に定められた手続きに基づくものです。電子保存が法的に認められているとしても原本はあった方がトラブルは少なくて済みます。会社の経理の対応としては、電子帳簿保存法の適用を受けていたとしても、スペースの余裕があれば期間を決めて領収書を含む原本の保管はしておいた方がよいでしょう。
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ABOUT執筆者紹介
税理士・米国税理士 出口秀樹
BDO税理士法人 札幌事務所
税理士、米国税理士(EA)。BDO税理士法人代表社員、株式会社ドルフィンマネジメント代表取締役。
1967年北海道札幌市生まれ。1991年北海道大学文学部卒。1998年5月出口秀樹税理士事務所開所。より広い専門知識を身につけるため、小樽商科大学商学研究科入学、2005年修了。中小企業の税務、会計、経営のサポートを行うとともに、個人の税務対策などにも積極的に取り組んでおり、その内容は多岐に及ぶ。経営者や幹部、若手リーダー向けのわかりやすい財務分析や財務三表の読み方セミナー、不動産オーナー向けの税務対策セミナーなど講師としても活躍中。2021年7月BDO税理士法人 札幌事務所所長
著書に『知れば知るほど得する税金の本』『知れば知るほど役立つ会計の本』(共に、三笠書房《知的生きかた文庫》)、『会社の整理・清算・再生手続きのすべて』(共著、中央経済社)、『改訂版 会社経営100問100答』(共著、明日香出版社)などがある。
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〇文庫: 384ページ
〇出版社: 三笠書房
〇言語: 日本語
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〇発売日:2021/11/17
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