この時期だから押さえたい!「申請」と「届出」の違い
税務ニュース
「申請」と「届出」の違い
「届出」と言うと、行政手続法では、一般的な「申請」とは明確に区別されています。よく、「申請は難しい手続で、届出は簡単な手続」といったことが言われますが、実は手続の難しさがその本質ではありません。そもそも「申請」とは、「法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分(以下「許認可等」という。)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているもの。」です(行政手続法第2条第3号)。
これに対し、「届出」とは、「行政庁に対し、一定の事項の通知をする行為(申請に該当するものを除く。)であって、法令により直接に当該通知が義務付けられているもの(自己の期待する一定の法律上の効果を発生させるためには当該通知をすべきこととされているものを含む。)」をいいます(第2条第7号)。
行政庁に対する行為である点では共通ですが、行政庁の諾否の応答が予定されているか否かという点で大きく異なります。つまり、申請はその内容を審査し、許可・不許可の判断などをしますが、届出の場合は、単に届出の通知をすれば手続としては完結するのであって、不許可といった処分がされるものではありません。
どのような影響があるのでしょうか?
それではこれらの違いが税の世界ではどのような影響があるのでしょうか。
例を一つ上げますと開業時においては
- 届出書…開業届出書、設立届出書等
- 申請書…青色申告承認申請書
というものを提出することになります。届出書は提出をすれば済むのですが申請書は税務署長の「承認」が必要となります。青色申告承認申請書につきましては過去の取り消し履歴などが審査されます。原則は「承認」の通知を書面にて行うこととなっておりますが実務上は「みなし承認」という規定があり、いついつまでに処分の通知がなかったときは、承認されたものとみなすとなっているものがほとんどです。
コロナ禍では要チェック!
最後に、現在のコロナ禍におきましてこの「届出」と「申請」の違いにつき注意を要するものをご案内させていただきます。それは消費税に係る「届出」と「申請」です。
コロナ禍におきまして消費税法上、課税事業者と免税事業者、一般課税と簡易課税といった「届出書」により選択可能なルールに加え、コロナ税特法による特例、災害特例、やむを得ない事情がある場合の届出特例の3種の「申請書」を提出することにより特別ルールが適用されるケースが多くあるのです。これらの「届出書」と「申請書」を正しく提出することによりコロナで被った消費税の取り扱い上の被害を抑えることが可能となる場合がございます。
制度自体はややこしく各企業様の事情によって提出すべき「届出書」「申請書」そして提出すべきタイミングが異なりますので割愛しますが、一点だけぜひご注意いただきたいのは「申請書」です。先ほど「みなし承認」というお話をしましたがみなし承認がないケースがございます。その際は承認の書類を待って初めて適用ができることとなりますのでお気を付けください。
ABOUT執筆者紹介
税理士 小嶋純一
大学卒業後、税理士法人中山会計にて代表社
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