確定申告の準備、何をしたらいい?個人事業主が年内にやっておきたい4つのこと
税務ニュース
「確定申告はまだまだ先」。12月、そう考える個人事業主は少なくありません。ですが、年明けから着手すると後が大変です。今回、年内にやっておきたい確定申告の準備についてお伝えします。
「確定申告は年明けから」がNGな理由
確定申告は年内に準備をしておくのが大事です。なぜでしょうか。次の2つの理由があるからです。
確定申告期間は1か月しかない
「年明けからでいい」と考えていても、実際の着手はもっと遅くなりがちです。1月は何かと忙しいため、締め切りが迫っていない確定申告は後回しになります。結果、2月に入ってから始めるパターンになります。
一方、申告できる期間は2月16日から3月15日までの1か月間です。2020年と2021年は4月15日が申告期限でしたが、これは「コロナ禍でやむを得ず」の措置でした。2022年は、原則通り3月15日が期限になると見られます。
たった1、2か月で所得を計算し、申告書をまとめるのは大変です。その間も日常業務はあります。短期間で申告作業を行うのは、かなり負担が大きいのです。
期限間際はトラブルが生じやすい
「取引が少ないから2月になってからでも大丈夫」と思う人もいるかもしれません。しかし、それでも準備しておいた方がいいでしょう。申告期限が近づくにつれ、次のようなトラブルが生じやすくなるからです。
- 控除関連の証明書類が届かない
- 確定申告の相談電話がつながりにくい
- 確定申告会場で待たされてスケジュールが狂う
- e-taxができない、つながらない
- 郵便局の受付に間に合わない
トラブルの結果、申告期限に遅れれば、延滞税などの余計なペナルティを払う破目になります。早めに準備すれば、こういったリスクを抑えられるのです。
年内にやっておきたい確定申告の準備4つ
年明けの確定申告をスムーズに行うなら、次の4つを年内にしておいた方がいいでしょう。
1:請求書や領収書を整理する
箱や袋の中に放置してある書類を出し、月日別に並べて整理しましょう。今年いっぱいは「紙保存が原則」です。オンラインの領収書や請求書も印刷して保管します。
「整理なんて確定申告の準備にならない」
という人もいるかもしれません。しかし、請求書や領収書の整理は税法上、必須です。また、手を動かして整理することで、徐々に確定申告に意識が向くことにもなります。大変かもしれませんが、少しずつ整理していきましょう。
2:会計ソフトに入力する
会計ソフトに少しずつ入力していきましょう。金融機関の口座や電子マネーで決済をしているなら、データの取り込みもしておきます。まとめてやると入力ミスにつながります。時間をかけてコツコツ入力しましょう。
3:控除に必要な証明書関係をまとめる
確定申告では控除も申告します。そして次の控除は、証明書類が必要です。
- 社会保険料控除(国民年金、国民年金基金)
- 小規模企業共済等掛金控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 雑損控除
- 寄附金控除
- 住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)
個人事業主だと、こういった書類の確認はうっかりしがちです。「会計ソフトに入力」に集中するあまり、控除証明に意識が向かなくなってしまうからです。「申告間際に確認したら証明書がなかった」となるかもしれません。
証明書は関連団体に頼めば再発行してもらえますが、手元に届くまでに数日かかります。できれば年内に確認しておきましょう。
4:e-Taxの事前準備をする
コロナ禍をきっかけにe-Tax(電子申告)で確定申告をする人が増えました。「24時間申告できる」「郵送料や交通費がかからない」「自宅でできる」などのメリットがありますが、実際に使うなら事前に手続きをしなくてはなりません。
e-Taxには2つ方法があります。1つはID・パスワード方式、もう1つはマイナンバー方式です。ID・パスワードなら身分証をもって税務署に行き、IDとパスワードを発行してもらわなくてはなりません。マイナンバー方式なら、マイナンバーの通知カードをもって市区町村の窓口に行き、マイナンバーカードを発行してもらう必要があります。e-Taxは思い立ったらすぐできるものではないのです。
e-Taxでの申告を考えているなら、年内に手続した方がいいでしょう。
年内に準備を進める2つのコツ
「年内に準備した方がいい」と頭でわかっていても気が重いのは事実です。「やらねば」と思えば思うほど、やりたくなくなるのが人間というもの。こんなときは次の2つのコツを意識するといいかもしれません。
1:低いハードルを設定する
「1日5分だけ書類を整理する」「1回5行だけ入力する」と思い切り目標を低く設定して、それを毎日繰り返します。気にならないほどの低いハードルなら、続けやすくなります。「1時間の筋トレは気が重いけど、3分の腹筋なら耐えられる」のと同じです。
「一気に全部こなさなくては」と考えると動けなくなりますが、「カンペキは捨てる」と決めると案外行動しやすくなります。
2:楽しみをセットにする
e-Taxのためだけに役所に行くのは面倒なものです。また、短時間の作業でも毎日続くと嫌気がさします。そんなときは、楽しみを組み合わせるといいでしょう。
「役所に行ったら帰りにカフェに行く」
「領収書整理の後は、高級なお茶とケーキを食べる」
といった具合に、楽しみとセットにすると行動を起こしやすくなります。ムチだけでなくアメも自分に用意するわけです。
年末も何かと忙しいものですが、少しだけでも準備をしておくと、年明けの確定申告がぐっとラクになります。「年末の大掃除の一つ」と思って、今から着手しましょう。
ABOUT執筆者紹介
税理士 鈴木まゆ子
税理士・税務ライター|中央大学法学部法律学科卒。ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。ZUU online、マネーの達人、朝日新聞『相続会議』、KaikeiZine、納税通信などで税務・会計の記事を多数執筆。著書に『海外資産の税金のキホン』(税務経理協会、共著)。
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