事前通知のない税務調査にどう対応すべきか?不要な争いを回避する3つのポイント!
税務ニュース
今回は事前通知のない税務調査、いわゆる無予告調査の対応方法を取り上げてみたい。
無予告調査とは?
税務調査には、強制調査と任意調査が存在する。強制調査はいわゆる脱税犯への調査であり、令状が必要だ。一般的に税務調査とは、任意調査のことをいう。任意調査では原則として事前通知することとなっている。事前通知とは、電話などで実地の調査を行う旨、調査を開始する日時、場所や調査の対象となる税目、課税期間、調査の目的などを通知することである。
しかし、一定の要件を満たした場合、事前通知なく税務調査を行うことも認められている。例えば、無予告で調査を行わないと、納税者が調査に必要な資料などを隠してしまう恐れがある場合があげられている。だが納税者からは、それらの要件を満たしているのかを知ることは容易ではない。
つまり、納税者としては、いつ税務署が調査に来ても不思議ではないということだ。
しかし、私の経験上、無予告調査を簡単に受け入れてしまうと、納税者と税務署の間でよくトラブルになる。例えば、調査官が社長のカバンや手帳などを確認しようとして、カバンを社内で広げさせられることがある。こんなとき、社員の目に社長はどう映るだろうか。社長は、まるで脱税を疑われた犯罪者の気分だと感じて、調査官に憤りを感じ、調査官にクレームをつけることになるだろう。こんな不要な争いを回避するためにも、私から3つのポイントをお伝えしたいと思う。このポイントを踏まえて対応するだけで、税務署とのトラブルを防ぐことは出来ると思う。
その1.日程調整させてもらうように交渉する。
納税者が税務調査を受けることを断ることはできない。いくら任意調査とはいえ、納税者には税務調査を受けなければならない義務(受忍義務)があるからだ。
しかし、私からクライアントによく伝えているのは、無予告調査はその日に受ける必要は無いということだ。
調査官が無予告で来た日に調査を受けてしまうと、調査官は勢いづき、手荒な調査になりがちだ。これが納税者とのトラブルを招いてしまう。中にはまるで犯罪捜査かのような調査をする調査官もいるので、注意していただきたい。税務調査は犯罪捜査ではない。税務調査の目的は、あくまでも納税者の申告の内容が正しく行われているかを確認することにある。
日程調整をするのは、納税者に税務調査に対して心構えをしてもらい、しっかりとした対応をするためである。調査官には落ち着いて調査をしてもらうことが大切な目的であり、決して納税者が帳簿など調査に必要な資料を隠すことや調査を困難にすることを容認するものではないことは事前に申し伝えておく。
その2.その日の予定を調査官に伝えない。応接室に通さない。
上記のように別の日にスケジュール調整をしようとすると、必ずと言っていいほど、調査官は、「今日調査をさせてくれ!」というだろう。その時にポイントとなるのは、社長や役員の予定を安易に伝えないことだ。調査官は来社時に最初に社長や責任者の予定を確認する。その時に安易に予定を伝えて、訪問した日の予定が空いていることが分かれば、その日は少なくとも調査が出来ると考えるからだ。
この認識は社長が持つことよりも、会社の受付対応をする事務員にしっかりと持ってもらうことの方が大切かも知れない。なぜなら、どれだけ社長が気をつけていても、受付の事務員がうっかり調査官に予定を伝えてしまいかねないからだ。
私はクライアントに対して、事務員を対象として、調査官が来た時の事前シミュレーションしておくことをお勧めしている。税務署から来たと言われただけで、容易にその日の社長の予定を伝えてしまい、応接室に通してしまうことが良くある。経験上、調査官を応接室にいれてしまえば、日程調整は難しくなるケースが多いため、注意してほしい。
その3.税務調査対応は税理士を入れて対応する。
税務調査の対応は、納税者だけでも可能だ。税理士は必ずしも必要ではない。しかし、過去の申告について税法や会計の観点から指摘を受けても、多くの納税者はその内容を理解できないだろう。調査官から言われるがままの状況となっているのではないかと思う。また、調査官も人間なので、調査官の指摘が必ずしも合っているとは限らない。税理士のアドバイスをもらいながら進めた方が良いことが多い。
さらに、上記➀の日程調整をさせてもらう場合に、税理士との日程調整が必要だと伝えられることも効果的だ。税理士は必ずしもお願いする必要はないが、お願いしたい税理士に対応してもらえないと困ると納税者が言えば、調査官も応じるしかないと思われる。ただし、通常お願いしている税理士がいない場合には、スポットで対応してくれる税理士を事前に探しておく必要があるので、注意が必要だ。
まとめ
以上、無予告調査を受けるときの不要なトラブルを回避する3つのポイントをお伝えさせていただいた。この目的は調査官との不要なトラブルを防ぐということにあり、税務調査を妨害しようとか、税務調査を非難しているものではないことは誤解の無いように再度申し伝えたい。
納税者がしっかりと申告をし、納税することは当然のことであり、税務調査は申告納税制度を担保するために必要な手続きである。しかしながら、納税者は、税務調査の受け方をしっかりと理解しておかないと思わぬトラブルに巻き込まれることもある。トラブルに書き込まれないように、今回お伝えした3つのポイントを参考としていただければ、幸いである。
ABOUT執筆者紹介
税理士 米永大祐
平成17年4月 畠税理士事務所(現:税理士法人 畠経営グループ)に入社
平成26年4月 税理士登録
令和元年10月 社員税理士就任
審理担当として、税務調査の立会、税務署との折衝を得意とし、税理士登録から5年弱で100件以上の税務調査の対応を行っている。国税不服審判所への審査請求事案も対応しており、北陸では審査請求件数はトップクラス。税務調査専門税理士として活躍している。
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