実践型の生きたスキルが身につく!経理マインドを強化しよう!【後編】
税務ニュース
さらなる経理マインドの強化
前編に引き続き、中小企業の経理のお仕事に欠かせない「経理マインド」のお話をします。前編ではマインドセット、スキルアップ、シンキングスキルについて触れました。後半は残りの3つをご紹介します。
【経理マインド4】経理担当者の立ち回りスキル
どんな仕事にでもあてはまることですが、特に経理は公明正大でなければ務まりません。ミスをしたことを恥じて隠してしまったり、放置することは大きな問題になり、いずれは社内の不正行為に繋がることもあります。心では悪いと思っていても隠したくなるのが人の常。そこで予防策として、あえて目立つような立ち振る舞いをする、というのは効果的なやり方です。存在感のないおとなしい存在になってしまうと、隠してもわからないだろうという甘えが生まれます。だからこそ、あえて目立つくらいでちょうど良いのです。
社内では、さまざまな部署の要望が相対しています。経理が経営者と社内の板挟みになることはよくあります。そんなとき、経理はフラットな立場で社内の秩序を守る役割があります。率先してルールを守り、決断と行動に乱れがない状態を保つことも仕事の一つです。
経理にはコミュ力が必須です。なぜ大事かといえば、経理の視点で社内とコミュニケーションをとることは、他の部署からは気がつきにくいヒントを提供できるからです。お金の動きを見ている、取引の流れを見ている、社員の動きも見ている、経営者がなにを考えているかもキャッチしやすい立場です。その立場を上手に利用した独自の視点を持ち、各部署の問題点に気がつき、ヒアリングした情報と合わせて、解決策を提案するコミュニケーションこそ、本質的な役割です。口うるさいばかりが経理ではありません。
【経理マインド5】経理担当者の伝え方・人間関係力
数字を扱う仕事を任されているわけですから、数字から現状を伝え、理解してもらい、経営に役立ててもらう必要があります。どのように伝えたら、より多くの情報を伝えることができるでしょうか。
同じ情報を受け取っても、その伝え方によって受け止める側の理解度は大きく異なります。理解度が低いことにより、クレームやトラブル、低評価に繋がることもあります。せっかく苦労して作成した会計資料が、理解されないまま、経営に活用されないまま、ただのチラシのように放置されてしまったら残念ですよね。だからこそ、伝え方を本気で考えるべきなのです。
ただし、業績が芳しくないときは注意が必要です。なんでもかんでも明らかにして、細かく追求することがベストではないからです。
話し方を学ぶ、資料作成力を磨く、数字を図解する力をつける、相手が最も知りたいことを重点的に伝える、などを心がけてみると、経理の仕事の枠を超えた仕事力もつき、同時に伝え方が向上することは間違いないです。
【経理マインド6】経理担当者の自己管理
毎月末には支払の処理をする、毎月25日には給与計算をする、毎年7月と1月には源泉所得税の計算をする、など、時期が予め予測できるのが経理の仕事の良いところだと思います。スケジュール管理を徹底すれば、余暇を楽しみやすいというのが最高だと思っています。仕事に追われていると、一年があっという間、今年も気がついたら桜が散っていた、なんてことになりがちですいつごろなにをすべきなのかが予めわかっているのですから、なるべく先々までのスケジュールを管理して、余暇を楽しむ自分との約束もしてしまうのがミソです。
私は、10年日記をツールとして気がついたことを書き留めています。仕事、プライベートにとらわれすぎず、その時々で気がついたことを。すると、昨年の今日、一昨年の今日、一昨昨年の今日、自分が何に感動し、イラつき(笑)、どんな仕事に取り組んでいたのかを振り返ることができます。これは経理の仕事にはぴったりで、つい忘れてしまいそうだった細かい注意事項を思い出すことができたり、会計資料からは読み取れないような出来事の記憶が蘇ってきたりします。さらに、過去と比較して自分の成長を感じ、小さな幸せをじわじわ味わうこともできるのでオススメです。
経理で培ったスキルは、さまざまな可能性を広げてくれます。働き方改革が推奨される時代背景からも、個の能力が求められていることは明らかです。数字を扱う仕事の経験は、その分野を未経験のまま過ごしてきたビジネスパーソンと比べれば、大きな差別化要因です。営業力があり、発信力もあり、継続力もあり、人望もある、という将来有望な人材でも、お金の管理ができずに苦しみ、資金繰りに失敗して道半ばで諦める人が多いのも現実です。どんな事業でも、計画し、実行し、チェックをし、改善していくという繰り返しを経ることが不可欠です。ところが、このチェック、という課程は、事業では数字の分析ができなければ機能しないも同然です。経理で培った力があれば、どれだけ有利かということをあらためて認識していただけたでしょうか。
経理マインドの話を通じ、私が皆様にお伝えしたいことは、経理の知識と経験は、人生を支える力、そして人生を大きく花開かせる力になり得るということです。だからこそ、過去の自分よりも1㎜でも先に進めるような自分になれるよう、経理マインドの強化に自信を持って力を注いでいただきたいと思っています。
ABOUT執筆者紹介
税理士 うばとしこ
税理士。大学卒業後、大手リース会社の営業職、税理士事務所への転職、結婚、出産を経て、2016年4月に税理士登録、2017年11月に独立開業。主に法人税務顧問のほか個人事業主を対象とした経理サポートのオンラインサロン「ゆるふわ経理部」を主宰。YouTube「ゆるふわチャンネル」での発信活動、全国各地の商工会議所や法人会、その他上場企業からの直接オファーで年間約50本のセミナー講師を務める。各種媒体への執筆活動は多数実績あり。2022年6月「経理マインドの強化書」出版/中央経済社、2023年5月「図解と会話でまるわかり!インボイスと消費税がすべてわかる本」出版/ソーテック社
「経理マインドの強化書」出版/2022年6 中央経済社
「図解と会話でまるわかり!インボイスと消費税がすべてわかる本」出版/2023.5 ソーテック社
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