NPO法人が定款の作成や見直しをする際のポイント
税務ニュース
NPO法人においても株式会社などと同様に、定款は組織の基本原則が記載された重要な書類です。定款に必ず記載すべき事項を必要的記載事項といい、目的や名称など14項目が定められています。所轄庁のホームページなどで定款の見本が公開されており、これらを参考に定款を作成する場合は必要的記載事項を漏らすことはないでしょう。
しかし、見本通りに作成すると運営上の不都合が生じる場合もあり、相談の中で定款の見直しを検討するNPO法人もありました。定款変更をする場合は所轄庁への届出や登記などを伴うため、設立の時点で将来的に見直しの可能性が少ない定款を作成しておくことが望ましいです。今回はNPO法人の定款で検討すべきポイントなどを解説します。
事務所の所在地
定款には主たる事務所の所在地を必ず記載する必要があります。ただし、記載が必要となるのは市区町村までです。入居するビルの部屋番号まで定款に記載している例もありますが、これでは近くに移転した場合にも定款変更が必要となり、手続きの手間や費用が発生します。そのため、基本的には市区町村まで記載すれば問題ないでしょう。
目的及び特定非営利活動の種類
定款には事業の目的と、法人が行う特定非営利活動の種類を必ず記載する必要があります。目的が変わるという例は珍しいですが、活動を続ける中で事業領域を広げるNPO法人もあります。そのため、特定非営利活動の種類については設立時に行っていないものであっても今後行う可能性があるものは記載しておくべきでしょう。
社員と会員の種別
定款には社員の資格に関する事項を必ず記載する必要があります。NPO法人の社員は株式会社の株主に近い存在であり、社員総会で議決権を有する者です。正会員を社員とし、議決権のない賛助会員の制度を設けているNPO法人は多くあり、定款に正会員と賛助会員についてそれぞれ定めている例もあります。ただし、複数の会員制度を設ける場合には、定款に社員である正会員に関する事項のみを記載し、「正会員以外の会員制度については別途規約で定める」などと記載することも認められます。複数の会員制度を設けることを検討しているNPO法人は、正会員以外の事項については定款以外に記載する方が制度変更の際に手間を省くことができます。
役員に関する事項
NPO法において、理事の定数は3人以上、監事の定数は1人以上としなければなりません。定款の見本においては〇人と指定して記載されている場合もありますが、その人数を維持しなければならないため、実務上の負担が大きいです。そのため、〇人以上や〇人以上〇人以下のように幅を持たせて記載した方が運用しやすいでしょう。
また、NPO法では、理事は全ての業務について特定非営利活動法人を代表するという規定があり、定款に代表権に関する条項を設けなければ全ての理事が代表権を持つこととなります。ただ、これは実務上非常に手間であるため、「理事のうち1人を理事長とする」などと記載した上で代表権を制限することが望ましいでしょう。
(代表権を制限する場合の記載例)
第〇条
この法人に次の役員を置く。
(1)理事 5人以上
(2)監事 1人以上
2 理事のうち、1人を理事長、2人を副理事長とする。
第〇条
理事長は、この法人を代表し、その業務を総理する。
2 理事長以外の理事は、法人の業務について、この法人を代表しない。
社員総会に関する事項
定款には社員総会に関する事項も必ず記載する必要がありますが、何を社員総会での決議事項として定めるかも重要なポイントです。定款の見本には①事業報告及び決算、②役員の職務及び報酬、③会費の額、④借入金その他新たな義務の負担及び権利の放棄などが記載されていることが多いです。ただし、定款の変更、解散、合併の3点以外は理事会での決議でも問題ありません。社員総会の決議事項が増えれば運営の負担が増加するだけでなく決議に時間が必要となり身動きが遅くなる可能性もあります。
見本通りに作成すると社員総会の決議事項が多くなる傾向があり、特に借入金に関する事項などはその都度社員総会を開催することは大きな負担となります。社員の人数や理事会の開催頻度も考慮して上で社員総会での決議事項を決めるのが良いでしょう。
まとめ
筆者がNPO法人から相談を受ける際に必ず定款には目を通しますが、所轄庁の公開している見本通りに作られていることが非常に多い印象があります。定款に沿った形で運営がなされていれば問題がないのですが、実際にはそうではない例も見受けられます。
特に認定NPO法人を目指す場合には、認定の審査において適切な運営がなされているかチェックされるため、定款を改めて確認し正しく運用されているか見直しておくべきでしょう。
ABOUT執筆者紹介
税理士
1級ファイナンシャルプランニング技能士
金子尚弘
名古屋市内の会計事務所勤務を経て2018年に独立開業。NPOなどの非営利組織やソーシャルビジネスを行う事業者へも積極的に関与している。また、クラウドツールを活用した業務効率化のコンサルティングも行っている。節税よりもキャッシュの安定化を重視し、過度な節税提案ではなく、資金繰りを安定させる目線でのアドバイスに力を入れている。ブログやSNSでの情報発信のほか、中日新聞、日経WOMAN、テレビ朝日(AbemaPrime)などで取材、コメント提供の実績がある。