NPO法人が経理業務の負担を軽減する方法
税務ニュース
NPO法人は社会課題解決などのために重要な役割を果たしていますが、人材や資金などリソースをいかに活用するかが事業を継続する上で重要なポイントです。特に経理は、専任の経理スタッフを持たないNPO法人もあり、悩みを抱えている団体も多いでしょう。経理業務を効率化することで団体のリソースをより事業に投下できることにも繋がります。今回は、経理業務を軽減・効率化するための具体策を解説します。
ネットバンキングの活用
銀行口座を開設していても、インターネットバンキングを利用していないNPO法人も多くあります。特に小規模のNPO法人では専任の経理担当者を置いていないことも多いですが、経理の負担を減らす意味でもネットバンキングの開設は必要だと思います。ネットバンキングであれば時間に関わらず振込作業などが可能ですし、振込のために窓口やATMに並ぶ必要もなくなります。
また、ネットバンキングを活用することで経費削減に繋がる場合もあります。窓口やATMでの振り込みに比べてネットバンキングでの手数料の方が安いことが多いですし、ネット専業銀行では振込手数料がかなり安く抑えられています。
部門別の管理を意識する
複数の事業を行っているNPO法人でも銀行口座が一つしかないという場合もあります。NPO法人は事業報告書において実施する事業別の損益を開示する必要があるため、銀行口座が一つしかないと部門別の管理が手間になってしまいます。また、会費や寄付金など管理部門の収入を管理するため、管理部門用の銀行口座も保有しておくことをお勧めします。
そのため、事業部門ごとに銀行口座を作成し、事業ごとの入出金をまとめることで部門別の管理がしやすくなります。可能であればクレジットカードも事業ごとに作成することで、経費管理がより分かりやすくなると思います。
部門別管理を意識したお金の流れは次の図のようなイメージで、各事業の資金が混在しなくなることが理想です。実際には現金での収入や支出もあると思いますが、なるべく銀行口座とクレジットカードに集約することを心掛けて下さい。
個人立替を極力ゼロにする
代表者など役員が経費を立替払いしている例も多く目にします。経費の立替精算自体に問題はないのですが、経理の手間やミスをする可能性を考慮すると減らして行くべきでしょう。
経費精算は①一旦個人が支払う、②経費精算の内容を確認し集計する、③法人が個人へ精算する、といったように経理上の手間も増えてしまいます。また、立替払いをした際の領収証を紛失してしまい精算ができない、精算のタイミングが不定期で決算締めをした後に過去の領収証が提出されるなどの例もあり、結果的に正しい経理処理ができなくなってしまいます。
様々な団体の経理相談を受けて来ましたが、クレジットカードを保有していない団体では立替経費の件数が多くなる傾向があります。クレジットカードを作成し、日常的な経費支払いをクレジットカードに集約することで立替経費をかなり削減することが可能になるでしょう。また、キャッシュカードにデビットカード機能が付帯されている銀行もあるため、そのような場合にはデビットカードを活用しても良いと思います。
会計ソフトの活用
エクセルなどで帳簿を作成しているNPO法人もありますが、基本的には会計ソフトを利用するべきだと思います。NPO法人会計にも対応しているソフトは複数ありますし、データ連携機能で銀行口座やクレジットカードの情報を同期できるソフトも存在します。例えば、ソリマチの会計王はNPO版のソフトがあり、Money Linkの機能を使えば銀行口座のデータなどを同期することができ、業務効率が大きく上がります。このような会計ソフトを活用すれば入力作業の時間が大幅に短縮し、入力ミスも減らすことができます。
また、会計ソフトを活用することで事業別損益の集計も簡単に行うことができます。会計ソフトに各事業部を部門登録することで、注記表に記載する事業別損益をスムーズに作成することが可能になります。
まとめ
経理専任の職員がいない場合には代表者などが日常業務と兼任しながら経理を行うなど、時間の制約がある中で経理を回している団体も多いと思います。また、事業規模が大きくなる中で部門別の管理で労力が増えるという声も聞きます。
日常の経理がスムーズになれば、決算書や事業報告書の作成で苦労することも少なくなるはずです。少しでも労力を減らすために今回ご紹介した方法を取り入れてみてはいかがでしょうか。
ABOUT執筆者紹介
税理士
1級ファイナンシャルプランニング技能士
金子尚弘
名古屋市内の会計事務所勤務を経て2018年に独立開業。NPOなどの非営利組織やソーシャルビジネスを行う事業者へも積極的に関与している。また、クラウドツールを活用した業務効率化のコンサルティングも行っている。節税よりもキャッシュの安定化を重視し、過度な節税提案ではなく、資金繰りを安定させる目線でのアドバイスに力を入れている。ブログやSNSでの情報発信のほか、中日新聞、日経WOMAN、テレビ朝日(AbemaPrime)などで取材、コメント提供の実績がある。
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