【外国人の雇用②】在留資格の手続きは?手続きの流れや必要書類、注意点を解説
社会保険ワンポイントコラム
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「外国人雇用に必要な在留資格の基礎知識」2回目です。今回は、在留資格の申請手続きの流れや必要書類、注意点を、外国人の在留手続歴22年の行政書士が解説します。
採用したい外国人がいても、すぐに申請はしない
「この外国人を採用したい」と企業が考えたとしても、すぐに申請すればいいわけではありません。また、申請したからといっても必ず通るとは限りません。前回お話ししたように、在留資格によって日本での就労が認められる範囲が異なります。また「日本で仕事する」といっても、その仕事の内容にふさわしい在留資格があるとは限らないのです。
そのため、申請に当たっては、仕事内容に合わせた在留資格を調べて決定し、必要書類をそろえたりする必要があります。
なお、申請するのは原則として外国人本人です。ただし、新たに海外から外国人を呼ぶ「認定」については、申請者本人が日本国内にいません。そのため、雇用主となる会社が「申請代理人」として申請を行うこととなります。
在留資格の申請手続きの流れ
外国人を雇用する場合の在留資格の申請手続きの流れは次のようになります。
1.仕事の内容に合わせて申請する在留資格を決める
最初に、申請する在留資格を検討します。このとき、次の2つを考慮します。
- 在留資格を申請する外国人自身の経歴・学歴
- 日本で従事する予定の仕事の内容
外国人自身の経歴・学歴を検討すべき理由
なぜ外国人自身の経歴・学歴が必要なのでしょうか。これは、出入国在留管理局(以下「入管」)が申請内容を審査する際、従事する仕事の内容に見合った専門性を申請者である外国人自身が持っているかどうかを見極めるためです。
例えば、主婦歴30年の外国人がいて、料理人として働くために「技能」の在留資格を申請したとしましょう。この女性がかなり料理の得意な人であったとしても、料理人というプロとしての実績を持っているわけではありません。この場合「経歴が足りない」と判断されるため、在留資格の許可が下りる可能性は極めて低いです。
逆に貿易会社で貿易事務を10年経験した外国人がいたとしましょう。この人の10年は「専門的な知識を貿易の現場で培ったプロ」として評価されます。そのため「技術・人文知識・国際業務(以下『技人国』)」という在留資格を申請した場合、許可されやすくなります。
従事予定の仕事内容を検討すべき理由
これは、仕事の内容が日本の法令の範囲内であるかを確認するために必要となります。
例えば、英会話学校の講師の仕事は「技人国」の在留資格の対象となります。一方、美容師の仕事は、どんなに専門的であっても、対象となる在留資格が存在しません。そのため、仮に申請したとしても許可はされません。
日本での活動内容に合わせた在留資格は、以下のリンクをご確認ください。
2.申請書を取得
在留資格及び申請の種類に合わせた申請書を取得します。この申請書はオンラインで入手できます。
なお「申請の種類」とは、大きく分けて次の3種類があります。
- 認定…正しくは「在留資格認定証明書交付申請」。新たに外国から招いて日本で働いてほしいときに行う。
- 変更…正しくは「在留資格変更許可申請」。例えば、留学生が新卒採用で入社するにあたり「留学」の在留資格から就労系の在留資格に変更する場合に行う。
- 更新…すでに就労資格を持っている人が在留期限の近い状態で引き続き同じ仕事で就労を継続する場合などに行う。
このほか「取得」という申請がありますが、かなり稀なケースなので割愛します。
なお、申請する在留資格ごとに申請書が異なります。
3.申請する外国人と雇用主についての資料を用意する
申請人(外国人)と外国人を雇用する会社が許可条件に当てはまることを示す資料を用意します。具体的には次のようになります。
【申請人(外国人)】
- 経歴証明書(在職証明書)
- 学歴証明書(学位記など)
- 身分関係の確認書類(パスポートやIDカード)
- 顔写真など
【外国人を雇用する会社】
- 会社の登記事項証明書
- 会社案内
- 会社の決算書
- 雇用契約書など
実際には、申請内容や外国人・会社の状況によっては、さらに資料が必要になることがあります。
4.申請書など必要書類を管轄の入管に提出して申請する
2で作成した申請書と3で用意した資料を合わせて、管轄の入管に提出します。どの入管が管轄となるかは、申請内容によって次のように変わります。
- 認定…会社の本店あるいは支店の所在地を管轄する入管
- 変更・更新…申請人である外国人の住所を管轄する入管
なお、管轄の入管は以下のリンクで確認できます。
5.審査終了後、入管から郵便が届く
申請後、しばらくしてから入管から次のような郵便が届きます。
- 認定…在留資格認定証明書が入った封書
- 変更・更新…審査終了についての通知のハガキ
認定の場合
封書で届いた「在留資格認定証明書」を外国人本人に送付します。その後、外国人本人が住む国や地域の大使館や領事館に査証申請を行うよう、指示します。査証を受け取った後、日本に来て就労が可能となる流れです。
変更・更新の場合
通知のハガキを持って申請先の入管に直接行きます。そして許可後の新しい身分証である在留カードを交付してもらいます。在留カードは身分証であるのと同時に、就労資格をもっていることの証でもあります。
申請内容に不備があった場合
申請内容に不備があったり、追加で書類が必要になったりする場合があります。この場合、入管から追加対応についての連絡が来ます。通常、封書で届きますが、急ぎの場合は電話で連絡されます。いずれにしても、その指示に従って追加書類を作成・準備し、あらためて提出しなければなりません。その後、審査が進めば、入管から封書あるいはハガキが再度届くことになります。
不許可・不交付の場合
不許可・不交付の場合、認定ならば認定証明書の不交付通知の入った封書が送られます。変更・更新ならば呼び出しの通知の郵便が届き、これを持参して送り主である入管に赴いて不許可の通知を直接受けることとなります。
仮に、不許可あるいは不交付の処分となった場合は、再申請することも可能です。ただ、その原因をよく検討して対応方法を考えなくてはなりません。
注意点
在留資格申請については、次のような注意点があります。
在留資格の期限は厳守しよう
変更・更新の場合は在留資格の期限に注意しましょう。1日でも期限に遅れると、いわゆる「オーバーステイ(不法滞在)」となるからです。オーバーステイとなると最悪、強制送還となります。
許可がない状態での就労はNG
すでに外国人が何らかの在留資格で日本にいる場合、雇用主が「許可が下りるだろう」という楽観的な見通しで就労させることがあります。例えば次のようなケースです。
- 留学生を新卒採用した会社が「研修」という名目で就労資格がないままに仕事をさせるケース
- 海外から日本に来ている外国人が短期滞在資格の状態で「入社予定だから」を理由に日本の会社で仕事をしてしまうケース
これは非常に危険です。「就労許可がない状態で不法就労させた」とみなされるおそれがあります。最悪の場合、外国人本人は強制送還となり、雇用主などの関係者は不法就労助長罪に問われるかもしれません。
おわりに
現在、入管の手続きの完了までに時間がかかる傾向にあります。内容によっては10か月かかることもありました。
また、在留資格申請は、ほとんどの方にはなじみのない手続きです。思い込みや間違った認識を持ったまま自分で申請して、後日取り返しのつかない状態になることも珍しくありません。少しでも不安がある場合は、在留手続き専門の行政書士などの助言を得たほうがよいでしょう。
次回は、在留資格申請にあたっての条件のチェックポイントを解説します。
ABOUT執筆者紹介
行政書士 鈴木良洋
1974年生まれ。1996年行政書士試験合格、1998年中央大学法学部政治学科卒業。2002年行政書士登録。建設業、司法書士事務所、行政事務所勤務を経て2004年独立開業。20年超、外国人の在留手続を専門に外国人の起業・経営支援を行う。これまでの取扱件数4000件超。元ドリームゲートアドバイザー。
ABOUT文・イラスト
税理士 鈴木まゆ子
税理士・税務ライター|中央大学法学部法律学科卒。ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。ZUU online、マネーの達人、朝日新聞『相続会議』、KaikeiZine、納税通信などで税務・会計の記事を多数執筆。著書に『海外資産の税金のキホン』(税務経理協会、共著)。