社員の成長を促す研修とは?
社会保険ワンポイントコラム
企業の成長を阻害する要因をアトランダムに挙げていくと、「人口構造の変化」、「メンタル不調に陥りやすい社会構造」、「コンプライアンス重視社会の到来」など枚挙に暇がありません。とりわけ、「あらゆる価値観がシフトしている時代」に立ち至ったことが大きいのではないでしょうか。そこは「答えのない世界」だとも言えます。「答えがある世界」では、経験値の高い人をリーダーにして、答えをみんなで探し出せば事足りました。しかし、「答えのない世界」では、多様な人たちが協調して答えを創り出さなければ生き残れません。
このような時代であるからこそ、社員個々の能力を高める研修は必須です。しかし、多くの企業で行われている社員研修は、「新入社員研修」「階層別研修」「管理職研修」など、極めてルーチン的な枠組の中の研修にとどまっているようです。これで本当に企業という組織を構成する人材が有為に育っているでしょうか。人材の価値はバランスシートに計上されませんが、「負債」とみなさざるを得ない社員が「資産」に転化しているでしょうか。これまでの研修で十分機能している企業は問題ありませんが、そうでない企業は研修を根本から見直す必要があります。併せて、人材育成を「投資」だと捉え直すべきだと思います。
よく見受けられるのは、研修を実施するイシュー(課題)が設定されていないケースです。換言すれば、「イシューが何か」が考えられていないのです。組織人たる社員が抱える本質的な課題が捉えられていないため、おざなりの研修に終始してしまうのです。このような企業では研修の成果が検証されず、「研修ための研修」という負のスパイラルに陥ってしまいがちです。
「答えを創り出す」時代の社員研修は、まず企業が求める社員像を思い描き、また社員が抱える課題を把握し、現状との乖離を埋めるスキルが何なのかを具体化することから始めなければなりません。
例えば、沈滞した組織の活性化を促したいのであれば、「組織の心理的安全性を高めるコミュニケーション研修」、管理職のマネジメント能力を高めたいのであれば、「ソーシャルスタイルを土台としたリーダーシップ研修」、経営者が社員の経営参画を望むのであれば、「社員のあらゆるライフスタイルの場面に自己研鑽を促すオールアラウンド研修」など、その効果を体感・検証できる実効性のある研修を企画すべきでしょう。
そもそも、社員研修は何が物事の本質かを議論し、突き詰めるための組織風土を維持し続け、組織のパフォーマンスを向上させるために行います。企業経営最大のミッションといっても過言ではありません。HR部門はその重責を担っているのです。
現在、新型コロナウイルス感染症の影響で、予定していた社員研修が滞っている企業も多いと思います。場合によっては、Zoom等によるオンラインで実施している企業もあるでしょう。しかし、オンラインによるコミュニケーションには注意が必要です。
日常的な会話や会議の表層部分を捉え、単純に言葉をやり取りするのがコミュニケーションだと思いがちです。しかし、本来コミュニケーションは「誤解」や「迂回」「沈黙」といったアクシデントや面白みによって成り立っています。このような機能があるからこそコミュニケーションが重要視されるのです。
一方、オンラインによるコミュニケーションには、このようなアクシデントや面白みが消え失せることが多くなるようです。オンラインというバーチャルな世界では、コミュニケーションが内包するある種の無駄や遊びが排除されるからかもしれません。従って、オンライン研修はライブ研修には敵わないと理解すべきです。
新型コロナの時代にオンライン研修に期待してしまうのは仕方ありません。しかし、アナログな方法で「自律型社員」を育成するのはいかがでしょう。与えた経営課題についてのソリューションを図解入りでレポートしてもらいます。答えを求めるというより、「自ら考え自ら行動する社員づくり」が目的です。将来にわたり大きな効果が期待できるのではないでしょうか。
大曲 義典 株式会社WiseBrainsConsultant&アソシエイツABOUT執筆者紹介
社会保険労務士・CFP® 大曲義典
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