31 August

誰もが働きやすい職場環境をつくるために!事業主の努力義務とされる、労働関係法令で定める「~推進者」とは?

掲載日:2022年08月31日   
社会保険ワンポイントコラム

確実に法令を遵守するために

労働関係法令には、働きやすい職場環境をつくることなどを目的に「事業主は、~推進者を選任するよう努めなければならない」というような条文が多くあります。「努めなければならない」ですので義務ではなく、努力義務となります。ただでさえ、遵守義務が求められる法律が多い中で、努力義務となるとそこまで手が回らないと感じるかもしれません。

しかし、法律で多くの義務が定められているからこそ、「~推進者」を選任することで、その義務を遵守するための取組を確実に行うことへとつながっていきます。

労働関係法令で定める「~推進者(管理者)」

今回は、各労働関係法令で定める①~⑥の「~推進者(管理者)」の内容をご紹介します。
それぞれの内容で示されている『機能するためのポイント』もぜひご参考ください。

①高年齢者雇用等推進者

【法律】高年齢者雇用安定法(第11条)
【主な役割】高年齢者雇用確保措置等を推進するため、作業施設の改善その他の諸条件の整備の業務

~機能するためのポイント~
「エイジフレンドリーガイドライン」を遵守しよう!

令和2年3月に、厚生労働省が策定した「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」のことです。以下のようなことが明記されていますので、ぜひ確認してみましょう。

(ガイドラインの明記内容)
「安全衛生管理体制の確立」危険源の特定等のリスクアセスメントの実施 など
「職場環境の改善」身体機能の低下を補う設備・装置の導入 など
「高年齢労働者の健康や体力の状況の把握」健康や体力の状況に関する情報の取扱い など
「高年齢労働者の健康や体力の状況に応じた対応」心身両面にわたる健康保持増進措置 など
「安全衛生教育」高年齢労働者・管理監督者に対する教育 など

②障害者雇用推進者

【法律】障害者雇用促進法(第78条2項)
【主な役割】障害者の雇用促進・継続のため、取組体制整備、施設・設備その他諸条件の整備責任者

~機能するためのポイント~
『障害者職業生活相談員』と連携し‘’働きやすい環境“をつくる!

「障害者雇用推進者」の選任は努力義務ですが、5人以上の障害のある労働者を雇用する事業所においては、『障害者職業生活相談員(以下、相談員)』を選任し、職業生活全般における相談・指導を行うよう義務づけられています。『相談員』は、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が実施する認定講習を修了しているなど所定の要件を満たす必要があります。

「障害者雇用推進者」は、『相談員』の指導内容をふまえ、一人ひとりの障害者が働きやすい環境を目指すための職場風土をつくることがその役割です。障害のある人への合理的配慮ができているか、差別がないかなど法令遵守を徹底させることが重要です。

③職業能力開発推進者

【法律】職業能力開発促進法(第12条)
【主な役割】事業内職業能力開発計画の作成・実施、従業員への職業能力開発に関する相談・指導

~機能するためのポイント~
「事業内職業能力開発計画」を作成し、助成金の活用へ!

「事業内職業能力開発計画」は、『人材育成の基本方針』『雇用管理の方針』『各職務に必要な職業能力』『教育訓練体系図』などの内容が明記されたものです。

計画を作成することで、従業員の能力開発へのモチベーションを向上させることだけでなく、その作成が支給要件とされている「人材開発支援助成金(訓練経費や訓練期間中の賃金一部等の助成)」の受給にもつながっていきます。

④男女雇用機会均等推進者

【法律】男女雇用機会均等法(第13条の2)
【主な役割】性差別の禁止、セクハラ防止、母性健康管理などの取組推進

~機能するためのポイント~
女性活躍推進法「一般事業主行動計画」を軸に推進する方法も!

法律は異なりますが、令和4年度に女性活躍推進法が改正され、「一般事業主⾏動計画」の策定や情報公表の義務が『常時雇用する労働者数が301人以上の事業主から101人以上の事業主まで拡大』されました。
女性が活躍するための目標が公表されることは、目標を単に掲げるだけでなく、その取組を遂行するための緊張感が生まれます。そして、目標が達成されることは、女性だけでなくすべての人が働きやすい環境をつくる契機にもなります。

⑤職業家庭両立推進者

【法律】育児・介護休業法(第29条)
【役割】仕事と家庭(育児・介護など)との両立を図るための取組の企画・実施

~機能するためのポイント~
令和4年4月からの「育児・介護休業法における法改正」を着実に遂行!

こちらも法改正された内容を着実に遂行することです、
特に令和4年4月より施行改正された「育児休業を取得しやすい雇用環境の整備」「育児休業制度などの個別の周知、意向確認」の内容を遂行できるかどうかは、両立支援を図りやすい職場風土をつくることの大きな分岐点になります。

⑥短時間・有期雇用管理者

【法律】パートタイム・有期雇用労働法(第17条)
【役割】パートタイム労働者・有期雇用労働者の相談対応、雇用管理改善に関する措置の実施

~機能するためのポイント~
「同一労働・同一賃金」が遵守できているかを確認!

賃金についての待遇差が不合理でないかを解消するだけでなく、休暇・福利厚生・教育訓練などさまざまな視点から待遇差が不合理でないかを確認しましょう。

そして、正職員とパートタイム労働者などの間に差があるものがあれば、なぜ差があるのかを説明できるようにしておきましょう。説明できなければ、その差は不合理なものかもしれません。

以上、6種類の「~推進者(管理者)」をご紹介しました。

いずれの役割にも当てはまることですが、推進者などを選任することで、各取組が遂行できているかどうかをチェックする機能が大幅に強化されます。

誰もが働きやすい職場環境をつくるため、ぜひ選任をご検討ください。

ABOUT執筆者紹介

社会福祉士・社会保険労務士 後藤和之

ごとう人事労務事務所

昭和51年生まれ。日本社会事業大学専門職大学院福祉マネジメント研究科卒業。約20年にわたり社会福祉に関わる相談援助などの様々な業務に携わり、特に福祉専門職への研修・組織内OFF-JTの研修企画などを通じた人材育成業務を数多く経験してきた。現在は厚生労働省委託事業による中小企業の労務管理に関する相談・改善策提案などを中心に活動している。

原稿提供元株式会社ブレインコンサルティングオフィス「かいけつ!人事労務」

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