~緊急告知~まだ間に合う!農業版の事業復活支援金を解説
農家おすすめ情報
農業者必見!農業版の事業復活支援金を解説!
確定申告も終わり「事業復活支援金」という言葉を見かける農家は多いのではないか。事業復活支援金は農林漁業者も対象になっており、2022年1月31日から申請が始まった。農家の方は該当しないと思い込んでいる向きもあるので、本稿を読んで今一度確認していただきたい。記事の記載にあたり経済産業省及び中小企業庁の公表資料をもとに農家の方にわかりやすく説明している部分は、著者の個人的な見解も含むことをあらかじめお断りする。
なぜ今、農業者の事業復活支援金が重要か?
新型コロナウイルス感染症による何らかの影響を受けている農業者は少なくない。しかし残念ながら制度を知らずに申請を逃している全国の農家はなんと多いことか。コロナ禍を理由とした供給減少や流通制限を受けた方で対象になるならば今すぐ申請の手続きをお勧めする。
例えば観光農園では本来シーズン中にもかかわらずコロナ感染症の影響により客足がふるわず売上減少、また飲食業者に出荷していたが断られ廃棄に追い込まれる農家の嘆きも聞いている。コロナ禍により売上減少で離農せざるを得ない状況は避けたいものだ。
事業復活支援金の概要
コロナの影響を受けた農業法人・個人農業者の経営継続を支援。
申請期間
2022年1月31日(月)~5月31日(火)です。6月17日(金)まで延長。
ただし申請IDは5月31日(火)事前確認は6月14日(火)まで。
給付対象次の要件を満たす農業法人・個人農業者が給付対象となる。
- 新型コロナウイルス感染症の影響を受けた農業者。
- 2021年11月~2022年3月のいずれかの月(対象月)の売上高が、2018年11月~2021年3月の間の任意の同じ月(基準月)の売上高と比較して50%以上又は30%以上50%未満減少した農業者。
まず給付上限額を確認しよう!
農業法人は上限最大250万円、個人農業者は上限最大50万円が支給される。
新型コロナウイルス感染症の影響とは関係ない場合は給付対象とはならない。
例えば実際に売上が減少したわけではないにも関わらず、通常農業収入を得られない時期(農業経営に季節性があるケースにおける繁忙期や農産物の出荷時期以外など)を対象月とすることにより、算定上の売上が減少している場合。売上計上基準の変更や顧客との取引時期の調整により売上が減少している場合。要請等に基づかない自主的な休業や営業時間の短縮、商材の変更、法人成り又は事業承継の直後などで単に営業日数が少ないことにより売上が減少している場合等。
給付額算定式
ポイント
給付額は、「基準期間の売上高」と「対象月の売上高」に5を掛けた額との差額。
算定式を見てわかるとおり、上限額があるものの基準期間が大きな数字を選択、対象月は小さな数字を選択すれば給付額が最大になるので、落ち着いて以下の申請事例を参考にチャレンジしよう!
用語解説でさらに詳しく
基準期間
2018年11月~2019年3月、2019年11月~2020年3月、2020年11月~2021年3月のいずれかの期間のうち、売上高の比較に用いた月を含む期間。
対象月
2021年11月~2022年3月のいずれかの月。
注意点
新型コロナウイルス感染症対策として国又は地方公共団体により農業者に対して支払われた給付金、補助金、助成金等(持続化給付金や家賃支援給付金、一時支援金、月次支援金等)が含まれる場合には、その額は除く。
ポイント解説:申請は難しくない!
- 5か月分の売上高減少額を基準に算定した額を一括給付する算定式になっている。
- 個人の場合は暦年(1月~12月)で確定申告を計算するが基準期間は11月~3月を含むため2期分の確定申告書で計算する。
- 農業以外の青色申告事業者の場合、決算書に月別売上金額の記入欄があるが、農業者の場合は白色申告だけでなく青色申告も月別販売金額の記入欄がないため、年間の販売金額を12で割り(除する)ひと月当たりの金額(月平均)を算出して計算するので注意が必要だ。
申請事例
実際に簡単な事例を用いて解説する(本記事では農業法人は省略。青色申告の事例だが白色申告の方も計算は同じ)。
ソリマチ農園(屋号)、青色申告の農業愛子(個人農業者)さんが実際に給付可能か事例を使って説明する。コロナの影響で飲食店への販売による売上が2022年2月に35,000円となり非常に厳しかった。2018年~2021年の確定申告書を準備して確認した結果、2020年分と2021年分の確定申告書で申請できそうなので試算してみた。
農業者の場合、月別販売金額の記載がないため、上記説明を見て年間売上から月間売上(月平均)を計算。
2020年は840,000円÷12=70,000円、2021年は2,400,000÷12=200,000円。
対象月は2022年2月を選択、2021年の月別売上200,000円で減少率を計算(2021年2月売上は月平均を利用)。
(200,000円-35,000円)÷200,000円×100=82.5%で30%以上売上が減少しているので給付対象であることを確認した。
図にすると以下のようになる。
次にいくら給付額を受けられるのか、上記のように月別売上が分からないので年間の販売金額を12で割りひと月当たりの金額を用いて基準期間の計算をしてみた。
基準期間は2020年11月~2021年3月を選択したので(70,000円×2)+(200,000円×3)=740,000円と算定できた。上記説明にあるように2期分の確定申告書を用いて計算するのがポイントだ。
上記の算定式にあてはめて計算してみた。740,000円-35,000円×5=565,000円となるが個人農業者の上限額は決められている。本事例では売上高減少率が50%以上なので給付額は500,000円となる。
図にすると以下のようになる。
申請に必要な確定申告書B第一表控え
給付額の算定も終わり、次に申請するために必要な確定申告書を揃えよう。
本事例では選択した基準期間は2020年11月~2021年3月なので2019年~2021年分それぞれの確定申告書が必要になる。選択する基準期間により申請する確定申告書が異なるので要注意。
売上台帳
次に対象月の売上台帳を説明する。
対象月の月間販売金額(合計)が確認できる売上台帳も申請には必須。
基本的な事項(対象月、日付、商品名、販売先、取引金額、合計金額等)が漏れなく記載されている書類であれば、フォーマットの指定はない。経理ソフト等から抽出したデータ、エクセルデータ、農家手書きの売上帳などでも構わない。また書類の名称が必ずしも「売上台帳」でなくても構わない。もし対象月の売上額が0円の場合は、[0円]と明確に記載する。
最後に
事業復活支援金の申請は電子申請(インターネットを利用した申請)を行うことを基本としている。農家ご自身で電子申請を行うことが困難な方のために手続きをサポートする会場も設置されている。
昨年、農業者で一時支援金や月次支援金の給付を受けた方は申請が簡略化されている。しかし初めて申請する場合は登録確認機関の事前確認が必要となる。
今回は、核となる給付対象になるか・給付額はいくらになるのかに焦点を絞って解説した。その他新規に農業を開業した方などが給付を受けられるよう特例制度も設けてあるので事業復活支援金事務局で確認していただきたい。
本記事を読み事業復活支援金を申請する農家が1件でも増えることに期待する。締め切り期限だけは要注意!地域によっては田植えも始まり繁忙期に入る農家の方もおられよう。もし制度を知らない農家の方がいたら、ひと声かけていただきたい。要件に該当するならば、あきらめないで申請してほしいと声を大にして伝えたい。農家にとって資金は重要だから…。
ABOUT執筆者紹介
佐藤宏章
公認会計士/税理士
公認会計士・税理士 佐藤宏章事務所 代表
秋田県農家出身(酪農・メロン・水稲)。東京農業大学農学部農学科卒業後、農業経営者に的確なアドバイスをと一念発起し、公認会計士資格取得。監査法人勤務を経て、「日本初の農業に特化した専門家」として独立開業。
農業経営者に会計・税務・経営をわかりやすく伝えることをモットーに、全国各地で活動中。企業・自治体・大学・税理士会等向けに講演、「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日)「めざましテレビ」(フジテレビ)その他メディア出演も多数。かつてないスタイルで唯一無二の存在と信頼を集める。
[democracy id=”199″]