01 July

ココが改正点!農地所有適格法人を徹底解説!

掲載日:2024年07月01日   
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はじめに

この度、農地所有適格法人が改正され話題になっているのでその内容についてポイントを解説する。農業経営者はぜひ本稿を読んで参考にしていただきたい。記事の記載にあたり農林水産省の公表資料をもとにわかりやすく説明している部分は、著者の個人的な見解も含むことをあらかじめお断りしておく。

農業法人等を取り巻く環境

農業法人等(その他団体経営体含む)の経営耕地面積は1/4、農産物販売金額は4割と右肩上がりになっていることが下記のグラフからわかる。

ここがポイント!人口減少や高齢化が進行する中で、人と農地の受け皿として農業法人の役割が今後ますます重要になる。

農地所有適格法人数の推移

法人経営の重要性が増しているが、今回法改正の対象である農地所有適格法人は2022年1月1日時点で20,750法人。2000年の農地法改正(株式会社形態の追加)以降、株式会社形態の法人数が増加しているのが特徴だ。

  2005年 2010年 2014年 2015年 2016年 2017年
株式会社 120 1,696 3,679 4,245 4,851 5,445
特例有限会社 5,961 6,907 6,491 6,427 6,411 6,283
持分会社 41 170 279 323 390 451
農事組合法人 1,782 3,056 3,884 4,111 4,555 4,961
  2018年 2019年 2020年 2021年 2022年
株式会社 6,194 6,862 7,333 8,068 8,667
特例有限会社 6,289 6,277 6,021 5,639 5,573
持分会社 504 585 625 730 800
農事組合法人 5,249 5,489 5,571 5,608 5,710

農地所有適格法人(20,750法人)の営農類型はこのようになる。

米麦9,644法人(46%)、野菜3,637法人(18%)、畜産3,443法人(17%)、果樹1,343法人(6%)、花き756法人(4%)、工芸作物639法人(3%)、その他1,288法人(6%)。

ここがポイント!農地所有適格法人の経営面積は約61万㏊、1法人当たり29.3㏊。その約半数が土地利用型であり、農地の受け皿として特に大きな役割を担っている。

用語解説

農業法人

「農業法人」とは、稲作のような土地利用型農業をはじめ、施設園芸、畜産など、農業を営む法人の総称だ。組織形態としては、会社法に基づく株式会社や持分会社、農業協同組合法に基づく農事組合法人に大別される。   

農地所有適格法人

農業法人が農地を所有するためには、農地法に定める一定の要件を満たす必要があり、その要件を満たした法人を「農地所有適格法人」という。

農地所有適格法人のイメージ

ここがポイント!農地を使用しないで、肉用牛の肥育、養豚、養鶏、非農地での養液栽培等、農業経営を行うことは可能、農地を使用していないので、農地法の制限はない。法人として農業経営を行う場合、必ずしも農地所有適格法人となるわけではない。

40代以下の新規就農者数

40代以下の新規就農者数のうち雇用者の割合は、2022年には親元就農を上回る約46%を占め、新規就農者の受け皿としても法人経営体の役割が増大しているのが下記のグラフからわかる。

農地所有適格法人の出資構成

現行制度では、一定の要件のうち農地所有適格法人への出資に占める農業関係者の割合を1/2超にする必要がある。

ここがポイント!特例により農業関係者の出資割合を1/3超に引き下げる(出資割合の緩和)。定款変更等の重要な意思決定に係る特別決議の拒否権を行使できるよう確保されているのが特徴だ。

法改正のポイント①

農地所有適格法人の中には、現行制度下では、「農業関係者による更なる出資は困難」という声が存在している。増資によって農業関係者の過半を占めるのは負担が大きい。また農業者による借入をして出資しているケースもある。農業法人は、他産業と比べ、売上高減少に対する耐性のほか、財務の安全性を示す自己資本比率が低く、借入金依存度が高い状況にある。借入による農業経営だけでなく、増資による自己資本の充実が重要だ。農業関係者以外による出資割合を高める特例になっている。

ここがポイント!農業は耕種及び畜産いずれも他産業と比べ借入金依存度が高い水準になっているのがわかる。スマート農業や労働環境の整備など更なる投資を進めるためには、経営基盤の強化が必要となる。

法改正のポイント②

農業関係者の出資割合を1/3超に引き下げる。上記グラフにあるように農業関係者と食品事業者・地銀ファンドによる出資割合が1/2超となれば特例の要件を満たすことになる。

他産業の出資を受ける農地所有適格法人は増加しているのが特徴だ。

特例の出資割合は、農業関係者と食品事業者等で1/2超だが、なぜ食品事業者なのか?
その出資者の半数は、食品関係事業者なのが下記のグラフよりわかる。

ここがポイント!取引先の食品事業者と資本面での連携強化により経営発展につなげたいニーズや農産物の取引拡大、6次産業化による商品開発などの理由がある。

おわりに

法人に寄せる期待があるものの東京商工リサーチによると資材価格高騰などで倒産が多くなっているのが下記のデータより明確だから侮れない。

農地を所有できる農地所有適格法人について、経営基盤強化のための出資要件の特例措置を講ずることだけでなく、国による審査(認定を受けた者は認定経営発展法人という)や農地転用の制限等の農業現場の懸念に対応した措置も盛り込まれている。人口の減少、高齢化の進展等、我が国農業を取り巻く環境の厳しい変化に伴い、法改正がなされたわけである。農業法人の経営者は当記事を参考に発展へとつなげていただけたら幸いである。

ABOUT執筆者紹介

佐藤宏章

公認会計士/税理士
公認会計士・税理士 佐藤宏章事務所 代表

秋田県農家出身(酪農・メロン・水稲)。東京農業大学農学部農学科卒業後、農業経営者に的確なアドバイスをと一念発起し、公認会計士資格取得。監査法人勤務を経て、「日本初の農業に特化した専門家」として独立開業。

農業経営者に会計・税務・経営をわかりやすく伝えることをモットーに、全国各地で活動中。企業・自治体・大学・税理士会等向けに講演、「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日)「めざましテレビ」(フジテレビ)その他メディア出演も多数。かつてないスタイルで唯一無二の存在と信頼を集める。

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