24 June

バスに乗ってもインボイスは必要?通勤手当・日当などの交通費にまつわるインボイス制度の特例を解説。

掲載日:2022年06月24日   
税務ニュース

インボイス制度がスタートすると、バスや電車などの交通機関を利用した場合でも、その都度インボイスの交付を受ける必要があるのでしょうか?また、会社が従業員に対して通勤手当や日当などを支給した場合、従業員はインボイス事業者ではないため、会社はインボイスの交付を受けることはできません。このような場合にはどうしたらよいのでしょうか?

本コラムでは、通勤手当・日当などの交通費にまつわるインボイス制度の特例について、やさしく解説します。

消費税の計算の仕組みのキホン

まず、消費税の計算の仕組みについて、簡単におさらいしましょう。

消費税の仕入税額控除

消費税の納税義務がある課税事業者の場合、消費税の納税額は、売上に含まれる預かった消費税から、仕入や経費に含まれる支払った消費税を差し引いて計算します。この仕組みを「仕入税額控除」といいます。

仕入税額控除が認められる要件

この「仕入税額控除」が認められるためには、法律で定められたルールがあります。消費税法では、帳簿および請求書(インボイス)の両方の保存が要件とされています。つまり、インボイスを受領する側は、インボイスの交付を受け、かつ、それを保存しないと、原則として「仕入税額控除」という消費税の計算の仕組みが認められず、消費税の納税額が大きくなる可能性があるのです。

他方、インボイスを発行する側は、登録申請をしてインボイス登録事業者となり、一定の義務を負うことになります。すなわち、インボイス発行事業者には、取引の相手の求めに応じて、インボイスを交付する義務と交付したインボイスの写しを保存する義務が課されます。

なお、「仕入税額控除」の要件について、消費税の導入当初は「帳簿『又は』請求書等」の保存とされており、いずれか一方の保存で足りていました。しかし、現行法では「帳簿『及び』請求書等」の保存、つまり両方の保存が必要とされているため注意が必要です。

バスなどの公共交通機関には特例が

一部の取引は、その業務の性質上、インボイスを交付することが困難であるため、インボイスの交付義務が免除されるという特例が用意されています。そのうちの一つが、公共交通機関に関する特例です。

3万円未満の公共交通機関(船舶、バスまたは鉄道)による旅客の運送については、インボイスの発行事業者(この場合は公共交通機関)は、インボイスの交付義務が免除されます。この場合、取引の相手(この場合は公共交通機関の利用者)は一定の事項を記載した帳簿の保存のみで「仕入税額控除」が認められます。

 

特例の対象となる公共交通機関とは?

具体的には、船舶、バス、鉄道またはモノレールだけでなく、特急列車に乗車するための特急料金、寝台料金、空港アクセスバスなどの不定期運行、または旅客の予約などによる乗合運行も特例の対象となります。

一方で、駅構内に入場するために支払う入場料金や手回り品料金は、旅客の運送に直接関係があるものではないため、原則は特例の対象となりません(例外があります)。

3万円未満の判定方法は?

3万円未満かどうかの判定は、1回の取引の「税込」の金額で判定します。
切符1枚ごとの金額で判定したり、月間でまとめた金額で判定したりしないので注意しましょう。

国税庁が公表しているQ&A集によれば、例えば、東京~新大阪間の新幹線の大人運賃が1人あたり13,000円である場合、4人分の運送サービスの提供を行うときは、4人分の52,000円で判定すると説明されています。この場合は、3万円未満に該当しないため、帳簿とインボイスの両方の保存が「仕入税額控除」の要件となります。

また、交通費という同じようなカテゴリーであっても、例えば個人タクシーなどを利用する場合には、タクシー事業者がインボイス事業者に該当するか否かというチェックが必要になる可能性があるため、注意しましょう。

 

日当や通勤手当などについては?

従業員が出張する際、その出張のために必要な経費を補填する目的で、会社が日当を支給することがあります。この日当は、従業員と会社双方にとって、主に経費精算の手間を軽減するという意味合いが大きい仕組みですね。

日当を支給された従業員側のトピックとして有名なのが、出張のために通常必要な経費を補填するものであれば、支給された日当に係る所得税は非課税になるというものです。この点、実際にかかった経費を精算した場合、支給された日当は、当然ながら所得税の課税対象となるため注意が必要です。

ここでは、日当を支給した会社側の消費税の取扱いについて考えてみましょう。

従業員に対して日当や通勤手当などを支給した場合、支給額のうち出張や通勤などに通常必要であると認められる部分については、課税仕入れに該当し、「仕入税額控除」が認められます。従業員はインボイス事業者ではないため、会社側はインボイスの交付を受けることはできませんが、出張や通勤などに通常必要であると認められる部分については、一定の事項を記載した帳簿の保存のみで「仕入税額控除」が認められるという特例が用意されています。

ただし、海外出張などのために支給する旅費や日当などは、そもそも課税仕入れに該当せず、原則として「仕入税額控除」が認められないため注意が必要です。

参照:所得税法施行令第20条の2、所得税基本通達9-3
参照:消費税基本通達11-2-1、11-2-2
参照:国税庁タックスアンサーNo.6459「出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当などの取扱い」

 

インボイスの交付義務が免除される取引は限定的

インボイスの交付義務が免除される取引として、他には例えば以下のようなものがあります。これらのケースもインボイスの交付を受けることが困難であるなどの理由により、一定の事項を記載した帳簿の保存のみで「仕入税額控除」が認められます。

  • 3万円未満の自動販売機および自動サービス機により行われる商品の販売等
  • 郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限る)

これらのケースの具体例としては、自動販売機、コインロッカー、コインランドリー、または金融機関のATMなどによる取引が該当します。

しかし、同じようなカテゴリーでも、コインパーキングや自動券売機のようなケースは注意が必要です。

例えば、代金の受領と食券類の発行は自動券売機(機械装置)で行われるが、実際のサービスや商品の提供は別途行われるような飲食サービスのケースは、この特例の対象にはならないと考えられます。

特例の場合の帳簿の記載事項は?

前述のような、帳簿の保存のみで「仕入税額控除」が認められる取引に該当した場合、取引の相手方の氏名・名称、取引年月日、取引内容、および支払対価の額などの「仕入税額控除」が認められるために必要な通常の帳簿の記載事項に加えて、以下の事項の記載も必要になります。

  • 帳簿の保存のみで「仕入税額控除」が認められる取引に該当する旨(例えば「公共交通機関(3万円未満)」などと記載)
  • 取引の相手方の住所または所在地(公共交通機関による旅客の運送の場合はその運送を行った者、郵便役務の提供を行った者、通勤手当・出張旅費等を支払った場合のそれを受領した使用人など、国税庁が指定する一定の者に該当する場合には記載不要)

なお、取引の相手方のインボイス登録番号については、帳簿への記載は不要とされています。

 

税金負担だけでなく業務負担への対策も重要に

このように、インボイスがなくても「仕入税額控除」が認められるケースは限定されており、「仕入税額控除」が認められるためには、原則として、インボイスの交付を受け、かつ、インボイスを保存することが必要です。

そのため、今後は事業者にとって、受領した請求書や領収書のチェックなどの業務負担も大きくなることも想定されるでしょう。

消費税額の負担という面ばかりを注視しがちなインボイス制度ですが、業務の負担という面にも目を配り、経理事務に係る業務フローの見直しも含めた事前の対策も重要なポイントであると考えられます。

ABOUT執筆者紹介

税理士 武田 紀仁

武田紀仁税理士事務所

クリエイターとスモールビジネスを支える税理士。クリエイティブ産業で活動する中小法人や、漫画家・イラストレーター・デザイナー・ものづくり作家などの個人事業主(フリーランス)を対象とした税務・会計・経営アドバイザリーサービスを得意とする。また、自身のもう一つのライフワークとして、文化芸術領域の会計と情報開示についての研究活動も行っている。

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