20 November

起業後、何社が生き残る?息の長いビジネスに必要なこと[シリーズ第3回]生き残る経営者に欠かせない能力

掲載日:2023年11月20日   
起業応援・創業ガイド

このシリーズでは「息の長いビジネスに必要なこと」というテーマで、起業の実態と、そこから見える成功要因をお示ししています。前回(第2回)のコラムでは、新しいビジネスに果敢にチャレンジする方に向けて、長く生き残るためには起業準備段階で慎重に石橋をたたく冷静さが求められることをお示ししました。今回のコラムでは、起業後生き残るために欠かせない能力を取り上げます。

社長の仕事は経営全般

起業すると、自分がやりたい仕事に好きなだけ取り組む自由が手に入ります。ですがその自由と引き換えに、お客様に製品・サービスを届けるまでの企業活動すべての責任を負うことになります。企画、製品の製造あるいはサービス提供体制づくり、広告、営業、販売(もしくはサービス提供)、請求事務、購買、経理、資金調達、税務、労務、法務。これら企業活動すべてを経営者である自分がコントロールすることになります。

会社員を経て起業した方の多くが、会社の中でご自身が担っていた仕事の範囲がいかに限定的であったか、起業後に痛感しておられることでしょう。

不得手なことにも向き合う姿勢が、息の長いビジネスをつくる

どんなに優れたエンジニアも、営業ができなければ売上をつくれません。どんなに優れた営業マンも、良い商品・サービスを考える企画力とそれをつくる技術力がなければ売り物を用意できません。不得手なことにも向き合う姿勢がなければ企業活動は不完全なものになり、長続きできません。最悪の場合はビジネスを立ち上げることすらできません。経営者が企業活動全般をコントロールする力は、息の長いビジネスに欠かせないことです。

資金に余裕があれば「不得手なことは人に任せる」という選択肢もありますが、その場合も指示を出すのは経営者です。その業務を自分の管理下に置くことからは逃れられないのです。

(失敗事例)飲食店向けオーダーシステムで起業したAさんの例

これは実際にあった事例です。Aさんは優秀なシステムエンジニアで、会社員時代からあたためていたアイデアで起業しました。飲食店が客席に備え付けたタブレットで注文を受け付ける、ホールスタッフいらずのオーダーシステムです。このようなシステムはコロナ禍をきっかけに一般的になりましたが、Aさんがこれを開発したのは新型コロナウイルスが世界に広まる数年前のことでした。

「ホールスタッフの人件費を削減したい飲食店に喜ばれるはずだ。」
Aさんはそう確信して、日本政策金融公庫からシステムの開発費として600万円を借り入れ、システムを開発しました。開発は順調に進みました。

しかしそこからAさんは前に進めなくなりました。営業活動の苦手意識が極端に大きかったのです。オーダーシステムの説明資料を作ること、営業先のリストを作ること、商談のアポを取ることなど、やるべきことは山積みでした。しかし何度か商談を試みて門前払いされて以来、ほとんど何もできませんでした。途中から営業代行業者に頼みましたが、Aさんと担当者のコミュニケーションがうまくいかず、事態は進展しませんでした。当時、このようなオーダーシステムは日本ではまだ珍しかったので、分かりやすい説明資料が必須でしたが、Aさんは営業代行の担当者に説明資料を提供できず、また、このシステムのことを担当者にきちんと理解してもらうこともできなかったのです。

商談が進まないまま、システムの保守会社への支払いだけが続きました。最終的に資金が底をつき、Aさんのシステムは素晴らしいものであったにも関わらず、残念ながら廃業に至ってしまったのです。

(成功事例)英会話スクールで起業したBさんの例

次は、主婦だったBさんが英語力を活かして英会話スクールを作った事例です。Bさんは町内会やPTAなどの人脈をフルに活用し、地道に生徒を増やしていきました。Bさんは社交性と行動力に長けていましたが、社会人としての長いブランクがありました。特に、事務全般やPR活動については分からないことが多く、不得手でした。

そこで自分の人脈の中から事務能力に長けた人を見つけたり、PR代行のフリーランスを紹介してもらったりして、アルバイトや外注スタッフとして手伝ってもらいました。Bさんは、そのスタッフへの仕事の頼み方が上手かったのです。断片的な仕事ではなく、ある程度自分で創意工夫をしてもらえるよう、大きめの塊で仕事を頼みました。しかし頼みっぱなしという訳でもなく、しっかりチェックもしました。Bさんは、細かいことは分からなくても「大枠として問題がないかどうか」を要所要所で粗く把握する能力に長けていました。Bさん自身は英会話を教える仕事に注力しながら、不得手なことは人に頼り、経営者としてポイントをおさえて全体を管理する体制が出来ていました。まわりの人の力を上手に借りながら少しずつ会社を大きくして、創業10周年を迎えたところです。

生き残る経営者に必要な能力は、営業力、技術力、発想力、社交性、事務処理能力、計数能力など、いろいろ挙げられます。しかし経営者の仕事は経営全般ですから、究極的には「経営全般をコントロールできる力」が欠かせません。企業活動全体の幅広い仕事すべてを上手くこなせなくても、人に頼る、あるいは拙くても自力で乗り越えるバイタリティがあれば、ビジネスを最低限回していくことができます。

 

このシリーズは「起業後、何社が生き残る?息の長いビジネスに必要なこと」というテーマで、次回以降も起業の実態や成功要因をお示ししていきます。次回第4回のコラムでは、生き残るための計画の立て方を取り上げます。

ABOUT執筆者紹介

経営コンサルタント 古市今日子

株式会社 理 代表取締役
経済産業大臣登録 中小企業診断士

外資コンサルティングファームなどで16年間経営支援の経験を積み、2016年独立。
事業再生に携わるほか、自治体の経営相談員や創業支援施設の経営指導員などを務める。
中小事業者・起業希望者の経営相談への対応件数は年間約200件

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