07 December

<連載>フリーランスが知っておきたい、「ロジカルで美しい」プレゼン資料作成術 ―【シリーズ第7回】投影資料と配付資料の使い分け

掲載日:2022年12月07日   
IT・ガジェット情報

独立すると、営業活動・ビジネスパートナー探し・資金調達などでご自身のビジネスをプレゼンする場面があります。人によってはセミナーに登壇して人前でプレゼンする機会もあることでしょう。

このシリーズでは、ロジカルで美しいプレゼン資料の作成技術を、全7回にわたって解説します。

前回の第6回では、画面に投影するプレゼン資料におけるアニメーション機能の活用法を取り上げました。最終回の今回は、投影資料と配付資料の使い分けの考え方を取り上げます。

投影資料と同じものを配付するのは、ベストではない

皆さんは、プレゼンで投影資料を使うとき、紙の配付資料も用意しますか?用意する場合、どのような資料を配付しますか?
このことについては「こうするべき」という常識や統一見解はありません。ビジネスの現場では、投影資料と同じ資料が紙媒体でも配付されることが多いですね。慣習としては、このやり方が浸透していると言えるでしょう。しかし、投影資料と配付資料の特性を考えると、このやり方はベストではありません。

投影資料は、離れたところから見ていただくものですから、見やすさを考えると、出来るだけ文字数と情報量を絞り込まなければなりません。その代わり、プレゼンターが口頭で説明を補えるので、多少言葉足らずの資料でも許容されやすいです。

一方、配付資料は、聴き手が持ち帰って後日読み返したり、プレゼンの場にいなかった人(出席者の上司や関係者など)が読んでくれたりすることが想定されます。従って、言葉足らずの資料では良くありません。資料を読むだけで詳細まで意味が分かるように、きちんと作り込む必要があります。その代わり、手元でじっくり読んでいただける紙媒体の資料ですから、情報量が多くても許容されやすいです。

以上のように投影資料と配付資料は特性が違うので、投影に適した資料は、配付資料としては「言葉足らず」な資料になってしまいます。一方、配付に適した資料は、投影資料としては「見にくい」ものになってしまいます。

配付資料の作り方

投影資料を使うプレゼンで紙の配付資料も用意する場合は、投影資料とは別途、聴き手が手元で読むのに適した形式の配付資料を作成すると、プレゼンの評価が上がるでしょう。

配付資料を作るには、完成した投影資料に以下のような手直しを加えると良いでしょう。

  • フォントサイズやフォントの種類を、印刷した時に読みやすいサイズ・種類に変更しましょう。フォントの種類は、投影資料ではゴシック体、配付資料では明朝体が適しています。
  • 表紙と目次を整えて、ページ番号を入れましょう。表紙には、プレゼンのタイトルのほか、実施場所、実施日時、名刺代わりの肩書・氏名も入れましょう。
  • 投影資料に書かなかった言葉や情報(プレゼン時に口頭で補足する言葉や情報)があれば、追記しましょう。プレゼンの場にいなかった方にも、配付資料を読むだけで話の流れ・プレゼンの内容を分かっていただけるように、丁寧に補いましょう。これが、投影資料と配付資料の一番の違いです。
  • 投影資料よりも文章の完成度を上げましょう。例えば、投影資料では文字数を抑えるためにあえて主語・述語を不明確なままにした文章があれば、配付資料では文字数が増えても良いので明確にしましょう。また、「です・ます調」と「だ・である調」の文末表現が混在しているなら、配付資料ではどちらかに統一して整えましょう。
  • 余裕があれば、ページ設定も、手元で読むのに適した形に変えましょう。例えば、投影資料は「横向き」のスライドの場合が多いですが、配付資料はA4サイズで「縦向き」の資料のほうが読みやすいと感じる方が多いです。

投影資料を使うプレゼンと、配付資料を使うプレゼンの違い

投影資料と配付資料は、必ずしも両方使えるとは限りません。プレゼン場所の制約や相手方の希望により、どちらかしか使えない場合もありますね。下図の通り、「配付資料のみ」「投影資料のみ」「投影資料と配付資料」の3パターンがあります。どのパターンのプレゼンでもベストが尽くせるように、それぞれのパターンの良い点・留意点を理解しておきましょう。

パターン① 配付資料のみでプレゼンする場合

このパターンでは何と言っても「聴き手がうつむいてしまう」ことへの対策が、プレゼンの成否を握るポイントです。プレゼンの要所要所で聴き手とコミュニケーションを取る話題を用意しておくなどして、「ただ資料を読み上げるだけ」のプレゼンにならないようにしましょう。

パターン② 投影資料のみでプレゼンする場合

このパターンでは、聴き手が顔を上げてこちらを見てくれますから、コミュニケーションしやすい点が良いですね。また、資料の内容が出席者以外に流出しませんので、「ここだけの話」「今いる方だけにお話しします」という話も盛り込むことができます。その反面、資料を持ち帰ってもらうことができませんので、次の商談に進みにくいです。情報流出を防ぎたい意図がなければ、避けたいパターンではないでしょうか。

パターン③ 投影資料と配付資料の両方を使ってプレゼンする場合

このパターンでは、「プレゼン中、聴き手に投影資料と配付資料のどちらを見てもらうか」が問題です。ビジネスの現場では、この判断は聴き手に委ねられるケースが多いですね。しかしそうすると、せっかくの投影資料を見ずにうつむいてしまう方がどうしてもいらっしゃいます。それを回避するには、話し手が冒頭で「皆さんには、最後まで投影資料のほうを見ながら私の話を聞いてほしい」と明確にお伝えしておくのが良いでしょう。併せて、配付資料の位置づけを明確にお示ししましょう。

例えば「配付資料は、皆様にお持ち帰りいただくお土産としてご用意したものです。今日欠席された方へも是非お渡しください。」「細かい資料を見ていただく時には、お手元の配付資料の該当ページをお示しします。」などとお伝えしておくのが良いでしょう。

 

以上、今回は投影資料と配付資料の使い分けの考え方を取り上げました。

本シリーズは今回で最終回です。これまでの7回のコラムを通して、ロジカルで美しいプレゼンのコツを少しでもつかんでいただき、ご自身のビジネスの成功にお役立ていただくことを願っています。

<今回のポイント>

  • 投影資料と同じものを配付するのは、ベストではない。
  • 投影資料を使うプレゼンで紙の配付資料も用意する場合は、投影資料とは別途、聴き手が手元で読むのに適した形式の配付資料を作成すると、プレゼンの評価が上がるでしょう。
ABOUT執筆者紹介

経営コンサルタント 古市今日子

株式会社 理 代表取締役
経済産業大臣登録 中小企業診断士

外資コンサルティングファームなどで16年間経営支援の経験を積み、2016年独立。
事業再生に携わるほか、自治体の経営相談員や創業支援施設の経営指導員などを務める。
中小事業者・起業希望者の経営相談への対応件数は年間約200件

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