15 June

お店の営業目標の立て方(前編)-根拠のある売上目標の作り方を解説-

掲載日:2023年06月15日   
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飲食店や小売店などのお店を経営しておられる皆様、日々の営業目標は立てていますか?

営業目標として「平日は1日10万円、土日は1日20万円が売上目標だ」といった売上目標を掲げる例がよく見られます。しかしその売上目標に明確な根拠があるケースは、あまり多くないようです。また、売上目標を具体的な集客目標(客数の目標)に落とし込めている方も、多くないようです。

このコラムでは、前編と後編の2回にわたって、お店の営業目標の立て方を解説します。前編の今回は、根拠のある売上目標の作り方を解説します。

 

売上目標を立てるために、まず「儲け(利益)」の目標を立てる

売上がどんなに大きくても、赤字では頑張った甲斐がありませんよね。その商売がうまくいったかどうかは、売上ではなく儲け(利益)で判断するものです。したがって、営業目標を考えるときにはまず「自分はこのお店で毎月どれくらいの儲けを出したいのか?」を考えることが出発点となります。つまり、材料の仕入れや、家賃、人件費、広告費、水道光熱費・・・、といった費用を全部払ったあとに残る利益が、毎月どれくらいあれば最低限良しとするのか。それを考えるのです。

利益については、みなさんそれぞれの事情を踏まえたお考えがあるはずです。「お店のオープンにかけた初期投資を5年で回収したいから、毎月10万円は利益を出したい」という方もいるでしょう。また「金融機関や親族から借りたお金の返済があるから、毎月20万円は利益を出さなければならない」という方、「5年後の大型リニューアルの資金として、毎月30万円は利益を出したい」という方もいるでしょう。それが、最低限の利益目標です。

一方、「採算が取れれば良い(自分とスタッフの給料、家賃やその他の費用がきちんと払えれば、利益は出なくても良い)」という方もいるでしょう。その場合は「利益0円(赤字にしない)」が最低限の利益目標、ということになります。

このように利益目標は、ご自身の事情をそのまま言葉(金額)にしただけのものと言えます。売上目標を立てるにあたっては、まず利益目標を具体的に設定しましょう。

 

利益目標を売上目標に換算する

先に述べたとおり、ご自身の事情をそのまま言葉(金額)にすれば利益目標を設定できます。しかし、日々の営業の成果として容易に把握できる数字は利益ではなく売上ですから、目標金額は利益ではなく売上で掲げたいところです。

あなたが立てた利益目標を達成するには、どれくらいの売上が必要でしょうか?それに答える便利な公式があります。

売上目標(円)=(利益目標(円)+固定費(円))÷粗利率(%)

この売上目標の計算方法は、管理会計上の概念である「損益分岐点売上高」の計算方法を、実務で使いやすいように筆者がアレンジしたものです。この公式にあなたのお店の数字(利益目標、固定費、粗利率)をあてはめれば、売上目標を計算できます。あてはめる数字を月額で揃えれば、計算結果の売上目標も月額となります。

 

売上目標の具体的な計算方法

上述の公式にある「利益目標」「固定費」「粗利率」を解説します。

「利益目標(円)」は、先に述べたとおり、ご自身の事情を踏まえて設定した利益目標の月額です。
「固定費(円)」は、「売上にかかわらず毎月ほぼ固定の金額で発生する費用」の合計金額です。例えば、家賃、消耗品費、水道光熱費、通信費、人件費、広告費、税理士費用、ホームページ維持費用、・・・などが挙げられます。水道光熱費やアルバイトの人件費などは厳密には売上によって多少変動があるかもしれませんが、「だいたいの平均的な月額」をあてはめるくらいの簡便なやり方でかまいません。過去の実績を見ておおまかな月額を設定してください。直近の決算書(損益計算書)が手元にあれば、「販売費及び一般管理費」の1か月分(12分の1)がここでいう固定費にあたります。

「粗利率(%)」は、「(売値-材料や商品の仕入値)÷売値」です。直近の決算書(損益計算書)が手元にあれば、「売上総利益÷売上高」で実際の粗利率を計算できます。
ここまで解説した売上目標の作り方を下図に例示しましたので、参考にしてみてください。

 

意味と根拠のある売上目標を掲げましょう

ここまで解説したように「利益目標」「固定費」「粗利率」の3つを明確に設定すれば、根拠のある売上目標を計算することができます。「売上はなんとなく一日○万円くらいあるといいな」という目標ではなく、「この売上目標を達成していれば、このお店を維持するのに必要な利益を確保できる」という、しっかりした意味と根拠のある売上目標です。ぜひそのような目標を掲げて、それをしっかり達成していきたいものです。

 

売上目標を明確にしたら、次にすべきこと

売上目標が明確になったら次にすべきことは、それを達成するための具体的な行動計画を立てることです。具体的な行動に結びつかなければ、目標を掲げる意味はありません。

では「お店の売上目標を達成するための具体的な行動」とは、どのような行動でしょうか?それは、営業活動や広告活動です。そして、営業活動や広告活動の成果が直接あらわれるのは、客数です。したがって、目標売上金額が明確になったら、それを日々の具体的な集客目標(客数の目標)に落とし込みたいところです。次回の後編では、売上目標を集客目標に換算するやり方を解説します。

ABOUT執筆者紹介

経営コンサルタント 古市今日子

株式会社 理 代表取締役
経済産業大臣登録 中小企業診断士

外資コンサルティングファームなどで16年間経営支援の経験を積み、2016年独立。
事業再生に携わるほか、自治体の経営相談員や創業支援施設の経営指導員などを務める。
中小事業者・起業希望者の経営相談への対応件数は年間約200件

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