18 July

お店の営業目標の立て方(後編)-生きた目標を立てて行動に移そう-

掲載日:2023年07月18日   
中小企業おすすめ情報

このコラムでは、前編と後編の2回にわたって営業目標の立て方を解説しています。

前編では、売上目標の立て方を解説しました。売上目標を明確にしたら次にすべきことは、日々の具体的なアクションにつながる集客目標を立てることです。後編の今回は、売上目標を集客目標に換算するやり方を解説します。

売上目標だけでは、具体的なアクションにつながらない

例えば、あなたのお店の売上目標が月300万円だとします。先月の売上は250万円で、目標にあと50万円届かなかったとしましょう。「今月は先月よりも頑張らなくちゃ」ということになりますが、売上をあと50万円増やすために具体的に何をどれくらい頑張ればよいのか、店長であるあなたは、スタッフに説明できますか?

例えば、あと何枚チラシを配ればよいでしょうか。客単価が何円になればよいでしょうか。
「あと50万円」という売上目標だけでは漠然としていて、そのような具体的な行動につながらないのです。

成長するお店は、集客目標を立てている

「あと50万円」の道しるべになるのが、集客目標(客数と客単価の目標)です。お店の日々の努力の成果が直接あらわれるのは、客数と客単価だからです。成長するお店は、売上目標を「客数の目標」と「客単価の目標」に分解して、具体的な行動を起こしています。

経験を積んだ店長には、集客目標がなくても、長年の経験から「売上を50万円増やすのに必要なチラシの量」や「売上を50万円増やすのに必要な客単価」が肌感覚として備わっていることがあります。しかし「店長の肌感覚」はスタッフと共有できませんから、お店のスタッフみんなが一丸となって売上を上げるには、みんなで共有できる客数・客単価の数値目標をつくる必要があるのです。

集客目標の立て方

売上は客数と客単価で決まりますから、「売上目標」は「目標客数」と「目標客単価」に分解できます。

このコラムの前編で、売上目標の立て方を解説しました(下図の表の項目①~④)。その売上目標(月額)を客単価で割ると、目標客数(月あたり)が出ます(下図の表の項目⑤~⑥)。客単価とは、お客様ひとりあたりの平均売上です。客単価は、過去の実績を踏まえて現実的に見込める金額で設定するのがよいでしょう。

1か月あたりの目標客数(上図の表の項目⑥)を計算できたら、さらに細かくしてみましょう。目標客数(月あたり)を1か月の営業日数で割ると、1日あたりの目標客数が出ます(上図の表の項目⑦)。さらにそれを1日の営業時間数で割ると、1時間あたりの目標客数が出ます(上図の表の項目⑧)。

その目標は高いのか低いのか。実感を伴う、生きた目標を立てるということ

前述のように、目標客数を「1日あたり」とか「1時間あたり」といった単位まで細かくすると、店長やスタッフの皆さんが肌感覚として持っている普段の客数と比べやすくなります。「この目標客数は、普段よりだいぶ多いな」なのか、「いつもより少しだけ頑張れば達成できそうな目標だ」なのか。目標のハードルの高さを、実感としてつかむことができます。

例えば「今月の利益目標は20万円」とか「今日の売上目標は12万円」という目標では、スタッフにとって他人事の目標になりがちです。目標を立てても感情が動かないと、ただ掲げるだけの、無味乾燥で形式的な目標になってしまいます。

そのような目標を、例えば「ランチタイム1時間あたりの目標客数12人」といった目標に換算するのです。そうすると、スタッフにも自分事の目標として認識しやすくなります。いつもの客数が1時間あたり10人程度だという感覚があれば、「いつもより数人増やす程度の目標だな」という実感を持てるでしょう。その実感があれば、「オープン前に駅前で少しチラシを配れば達成できるかも」といった行動にもつながるでしょう。「生きた目標」を立てることで、スタッフの取り組み姿勢はグッと良くなるものです。

目標を達成できなかったときの対策の立て方

売上目標を達成できなかったときは、対策を考えるためにまず、客数が足りなかったのか、客単価が落ちているのかを把握しましょう。

客数が足りなかったときは、あと何人足りないのか、どの曜日・時間帯が特に弱いのかを把握すれば、対策を立てやすくなります。たとえばあるカフェの客数目標が1日あたり120人だった場合に実績が110人であれば、1日あたりあと10人です。1日の営業時間が10時間なら、1時間あたり平均あと1人です。近隣の住宅街にポスティングをしたり、固定客に向けたSNSでのPRに注力したりするのもよいでしょう。もし平日昼間の達成度合いが特に低いのなら、平日昼間限定の特別メニューを企画してPRするのもよいでしょう。

客数が足りていても、客単価が落ちていると売上が下がります。何円くらい落ちているのかを把握して、対策を検討しましょう。もし「客単価が100円くらい落ちている」ということなら、主力メニューの値付けを見直すといった対策も必要ですが、その日からすぐにできる対策もあるでしょう。レジ横にちょっとしたお菓子を置いて「ついで買い」を促したり、ドリンクのお客様にスイーツをお勧めしたり、ドリンクのトッピングやランチのサイドメニューを増やしたり、といった対策です。

客数も客単価も、実績をこまめにチェックしながら、対策の見直しを検討しましょう。

 

以上、このコラムでは、前編と後編の2回にわたってお店の営業目標の立て方を解説しました。
営業目標を立てて、実績を把握し対策を講じるという、営業活動のPDCAを回す一連の流れは、成長するお店に欠かせない経営管理の取り組みです。繁盛店の経営の第一歩として、まずは“生きた”売上目標と集客目標を立ててみましょう。

ABOUT執筆者紹介

経営コンサルタント 古市今日子

株式会社 理 代表取締役
経済産業大臣登録 中小企業診断士

外資コンサルティングファームなどで16年間経営支援の経験を積み、2016年独立。
事業再生に携わるほか、自治体の経営相談員や創業支援施設の経営指導員などを務める。
中小事業者・起業希望者の経営相談への対応件数は年間約200件

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